この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

アヒルと鴨のコインロッカー。

2007-07-21 22:19:44 | 新作映画
 伊坂幸太郎原作、『アヒルと鴨のコインロッカー』、7/21、KBCシネマにて鑑賞。

 正直観る前は多少の不安があった。
 本作はロケ地である仙台で先行上映が行われ、そこでの評判はすこぶるよかったのだけれど、何といっても原作者の伊坂幸太郎は最も贔屓にしている作家の一人だから不安になるなというのが無理というものだ。
 加えて同じ伊坂幸太郎原作の『陽気なギャングが地球を回す』がそりゃひどい出来だったからなおさらだ。
 原作と映画は別物っていうのは昔からよくいわれることで、それは理屈ではわかっているのだけれど、『陽気な~』の場合、原作を改変した箇所がすべてが改悪だった。中でもキャラクターが原作とはほとんど別人(の性格)っていうのは本当に腹立たしかった。
 結局映画の『陽気な~』からは原作者が今が旬の作家なんだから、とりあえず映画化しとけ、みたいな志の低さしか見て取れなかった。
 ともかく、そんな風に不安と期待が入り混じった状態で自分は映画館に足を運んだ。
 上映終了後、深く余韻に浸る自分がいた。
 本作は紛れもない傑作だった。
 原作物の映画化はかくあるべし、という見本みたいな作品だった。原作と異なる箇所もあるのだけれど、その改変が一々納得できるものばかりだった。
 例えばブータン人のドルジが助けるのが酔っ払いや老人ではなく犬だったり、最後、駅のコインロッカーに神様を閉じ込めるのがドルジではなく椎名だったのもすごく納得できた。何といっても結局『アヒル~』はペット殺しと対決するお話なのだから、そう考えると原作でドルジが助けるのが犬でないことが不思議なぐらいだ。それに神様を閉じ込めることによってドルジは救われるのだから、それを彼自身がするのはやはり変だ。
 本作のよさはそれにとどまらず、何といっても各キャラクターが原作のイメージにぴったりなことといったら!!椎名は椎名だし、ドルジはドルジだし、河崎は河崎だし、琴美は琴美だった。いや、説明になってないこと、申し訳ない。
 そんなわけで原作の愛読者の方にも本作は自信を持って勧められる。
 また原作は未読という方もすこぶる上出来の娯楽作なので、もしお近くの映画館で上映されていたら是非ご覧になって、そして原作をあらためて読んで欲しい。
 きっと贔屓の作家が一人生まれることだろう。
コメント (5)
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