ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 徳田雄洋著 「震災と情報」 岩波新書

2012年10月01日 | 書評
震災で情報はどう伝えられたか、情報空白から身を守るために 第3回

序(3)
 社会的危機の時には必ず為政者は自分達の主催する社会が信用に価するものだという事を守るため、いやな情報は隠蔽し「心配するな大丈夫」という一時的な嘘でもいいから不安を消す言葉と慰めしか言わない。これを「情報官制」といってもいい。原発は安全だという神話をまもるため、政府が言ったことは「直ちに健康への影響は無い」(実は5年後は影響があるかもしれないとも聞こえる)の繰り返しであった。ところが東日本大震災の地震、津波、原子力事故の影響は国外でも観測され公表されている。私は事故直後から福島第1原発のサイトの公表する放射線濃度データを見に行ったが3月11日でデータは切れていたので、茨城県東海原子力発電機構のサイトに公表する濃度データを見るだけであった。福島の現状は知る事が出来なかった。ところが世界中の総括的核実験禁止条約に基づく監視機構は、地震モニターが170箇所、水中音響モニター11箇所、超低周波モニター60箇所、放射線核種モニター80箇所がありデータも一部公開されている。なかでもアメリカEPAのRANDNETは事故後検出物質のデーターを公表している。アメリカエネルギー省は3月下旬より福島の土壌汚染地図を公表している。ところが日本政府はアメリカのデータ公表を差し控えるよう要請したという。何はともあれ先ず隠すことが日本の為政者のやることである。情報を隠して自分達の支配の非合理性を露にしないことを目論む。情報の公開による適切な行動、合理的な考えを犠牲にしても、自分達の支配の安全を図る。そのために国民が犠牲になってもかまわないらしい。それに日本の大手メディアが順応し政府の発言しか伝えない。そこに情報の空白が生まれる。これが日本の民主主義の限界のようだ。
(つづく)

文芸散歩 マルクス・アウレーリウス著 「自省録」 岩波文庫

2012年10月01日 | 書評
ローマの哲人皇帝 ストア哲学の教えに導かれる思索と実践の日々 第11回

第7章
*悪徳とはどこにでも見られるもので、一つとして新しいものはない。
*信条(ドグマ)というものは死ぬことはない。私は物事について自分の持つべき意見を持つことが出来る。人間各々の価値は、その人が熱心に追い求める対象の価値に等しい。
*私の知能は十分か否か、もし十分でないならもっとよく出来る人に場所を譲らなければいけない。人に助けて貰う事を恥じてはいけない。
*未来の事で心を悩ますな。必要なときに現在働いている理性でもって未来の事に立ち向かうだろう。
*指導原理は自分自身を悩まさない。幸福とは善きダイモーン、または善き指導理性のことである。
*遠かラ図君はあらゆる物を忘れ、遠からずあらゆる者は君を忘れるだろう。
*つまづく人をも愛するのが人間の特権である。彼らは同胞であり、彼らのために自分の指導理性は悪化しなかったからだ。(善人なおもて往生す、いわんや悪人をや)
*自分の中に集中せよ、想像力を抹殺せよ、誠実とつつしみを持て、苦痛は耐えられるものは指導理性を損なわない。耐えられなければ死ね。
*何人も自分の運命は避けることは出来ないと考え、もっと善く生きる事を考慮すべきである。
*プラトンの言葉「すべての魂はその意思に反して真理を奪われている」事を常に念頭に置けば、君は全ての人にたいしてもっと優しくなれる。
*完全な人格の特徴は、毎日をあたかもそれが自分の最後の日であるかのように過ごすことである。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「江洲秋容」

2012年10月01日 | 漢詩・自由詩
江洲万里月朦朦     江洲万里 月は朦朦

提畔千風一葉桐     提畔千風 桐は一葉

星漢良宵秋水碧     星漢良宵 秋水碧に
 
疎林夕照晩霞紅     疎林夕照 晩霞紅なり


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(韻:一東 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)