ブログ 「ごまめの歯軋り」

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崩壊に瀕する鳥取大学病院救急センター

2009年03月14日 | 時事問題
朝日新聞 2009年3月14日2時0分
教授ら救急医4人全員が辞職 鳥取大・救命救急センター
 鳥取大医学部付属病院(鳥取県米子市)の救命救急センターに勤務する救急医4人全員が3月末で辞職する。4人には医学部の教授と准教授も含まれ、教授らは「地方の救急医療の現場は体力的にも精神的にも限界」と訴えている。同センターは同県西部で、重篤患者に対応できる唯一の救急施設。
 同センターは04年10月に開設。06年前半には専任の救急医7人と付属病院の他科からの応援医師2人の9人態勢だったが、退職が相次いで昨年4月から専任救急医師が4人、応援医師が3人の7人態勢に減り、年間900人の患者を受け入れてきた。 当初1人月5~6回だった当直勤務は月8~10回まで増え、1人当たりの夜間・休日の緊急呼び出しも急増。若手2人の辞職理由は「体がもたない」だった。
 救急医不足の背景には、04年度に始まった「新医師研修制度」もある。

この医療崩壊をもたらしたのは、厚生省の医療費削減と医師数削減政策である

環境問題 モード・バーロウ、トニー・クラーク著 「水戦争の世紀」

2009年03月14日 | 書評
水資源は共有財産であって商品ではない 第14回

第2部:グローバル水企業の策略 (5)

 開発途上国支援と称する援助には日本もODAの最大供給国であった。開発途上国支援とは結局のところ名を変えた「新植民地主義政策」であり、援助国を経済的に従属させるものであり、将来にわたって利益を吸い上げる呼び水である。必然的に融資という飴には法の縛りというムチがついていた。世界貿易機関WTOも多国籍企業が市場開発をする上で重要な役割を果たし、財やサービスの輸出および民営化を推進してきた。WTO加盟国には関税および非関税貿易障壁を一つ残らず排除するよいう権限を持っている。関税貿易一般協定GATTがそれにあたる。GATTでは水は貿易財とされる。GATT11条は輸出規制を禁止し、輸出入の量的制限撤廃を原則とする。環境への影響という正当な理由による水の輸出入禁止はGATTでは条約違反として提訴される。例外はないわけではないが、GATT20条では紛争処理小委員会の脅迫のほうが大きいという主客転倒の状況で実質例外措置はないようだ。サービスに関しては「サービスの貿易に関する一般協定」GATSがあり、水事業はこのサービス協定の制約を受け、政府が歯止めをかけにくくしている。これほど政府の立法・規制権を脅かす国際協定はほかにはない。まさに資本は国家を超えた言われるのはこのことである。GATS2000 では、公共サービスの規制や措置の必要性を政府が証明する責任を負うのである。是を「必要性テスト」といい、申し立て国は無理難題を吹っかけてくるので、「透明性ある」説明をすることはかなり難しい。紛争処理委員会に申したてられると、経済制裁の可能性も出てくる。地域ブロックの自由貿易体制「北米自由貿易協定」NAFTAでは、「投資家対国家訴訟」もあり、提訴された国の国内法や司法制度も無視して、投資家が政府を直接提訴できるという前例のない権利を多国籍企業に与えた。企業に「最恵国待遇」、「内国民待遇」を与えたのである。NAFTAでは水輸出業社が勝訴した例も出ており、カナダ政府は敗れ、カルフォニアの企業がカナダ政府の政策を左右できるようになったといわれた。いまや政治力は政府から企業に移り、企業は収益性を求めて自由に進退をできるが、政府はそれを阻止できない状況である。WTOのルールには、貿易の自由化を妨げる「環境法」のような「非関税障壁」を国が使えなくする内容が含まる。WTO協定に環境サービスの自由貿易が組み込まれると、水を保護する国内の環境基準は存続できない。
(続く)

医療問題 「現場からの医療改革レポート」 Japan Mail Media

2009年03月14日 | 書評
絶望の中の希望ー医師は「医療崩壊」の現状をネットに訴える 第39回

特別配信号(2008年10月3日) 「医療事故調 対立の概要と展望」 虎ノ門病院泌尿器科 小松秀樹 

 人は間違うものだと云うことを前提に医療の安全対策と責任追及は切り離すべきと云う趣旨が国際的に主流になっているにもかかわらず、厚生労働省は医療事故調を医師の責任追及の場にしようとする。この「対立の概要と展望」をまとめた。現在医療事故調の厚生労働省案(第2次、第3次試案)を巡って議論が続いている。現実と乖離した「正義」の規範ほど厄介なものはない。「正義」は怒りと攻撃性に満ちている。社会に有害な結果しかもたらさない「正義」の規範から頭の切り替え(パラダイムシフト)が必要だ。

 医療事故調の目的が医療の安全向上なのか過去の責任追及なのかが曖昧なまま、2007年4月より「医療関連死究明の検討会」が前田座長(刑法学者)で開催された。そこで事務局(厚生労働省)の議論は「法的責任追及に活用」で展開され、07年10月第2次試案が出された。「反省、謝罪、責任追及、再発防止」のために原因究明が行われるという。「医師は人命救助のためがんばって結果犯罪者になるのでは医療は崩壊する」という反対意見が多く、修正案の第3次試案となった。医療安全の確保を目的とすると明記しているが、同時に責任追及も行うと云う矛盾した事が書かれている。第3次試案の大きな問題は院内事故調査報告書が個人の処罰に使われるということだ。航空機事故などのように免罪の上事故調査をすることであらゆるヒューマンエラーをあぶりだすと云う趣旨から程遠い。処罰を前提とした調査では真実は隠れるのである。事故調が全てお見通しの神でなければ裁けるものではない。利害関係者は罰を恐れて利害に応じた発言しかしない。舛添厚生労働大臣は第3次案に対して不十分ならさらに検討するといっているが、医政局と不協和音が聞こえる。病院と関係ない開業医の日本医師会は医療報酬改定と絡んで当局と妥協をし第3次案に賛成した。学会、病院の団体は反対である。
(続く)