ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

環境問題 モード・バーロウ、トニー・クラーク著 「水戦争の世紀」

2009年03月15日 | 書評
水資源は共有財産であって商品ではない 第15回

第3部:水資源(共有財産)を守るため (1)

 水の権利の強奪に対して、世界の人々は各地で抵抗を始めた。インド政府が世界銀行から融資を得て計画したナルマダ渓谷のダム建設に対して、地元民は「ナルマダを救う会」NBAを作って抵抗し、融資した世銀にたいして第三者による環境調査のやり直しを求めた。出てきた「モース報告書」は環境影響の恐れを指摘し、インド政府と世銀を非難した。世銀は融資撤回をして逃げたが、インド政府の強引なダム建設の動きもNBAが阻止した。そのほかにも住民の反撃としては、ボリビアのコチャバンバの水道民営化反対闘争、2000年水道民営事業のお膝元フランスグルノーブルでは市民が民営化を阻止した。南アフリカ・ヨハネスブルグの黒人街では官民パートナーシップによる移管を阻止した。世銀とIMFが条件とした水道民営化をガーナ全国の反対運動で阻止し、代替案を検討している。ウルグアイ、カナダバンクーバ、アメリカイリノイ州、コロンビア州でも民営化を阻止した。アメリカウイスコン州で地下水をペリエグループがミネラルウォーターとして取水する計画に対して、ミシガン市民連合が抗議運動を展開した。化学物質や養豚排水や農業肥料から水源を守る戦いも世界中で展開されている。水源地の環境を守る戦いも盛んだ。日本では水神山系のぶな原生林をスーパー林道から守る戦いが有名である。脱ダムの戦いも長野県だけでなく、世界中で展開されている。発展途上国では原住民の生活圏の確保という差し迫った問題であり、政府の暴虐に対して悲惨な命がけの闘争である。フィリッピン、グアテマラ、タイ、ハンガリーなどで脱ダム闘争が戦われた。
(続く)


医療問題  「現場からの医療改革レポート」 Japan Mail Media

2009年03月15日 | 書評
絶望の中の希望ー医師は「医療崩壊」の現状をネットに訴える 第40回

第15回(2008年10月9日) 「高度成長型から急速な高齢化社会での医療専門職養成システムへ」 東京大学医科学研究所 上昌広 

 9月末銚子市立病院が医師不足のため閉院した。今後多くの地方病院が閉院してゆくであろう。なぜ医師が足りなくなったのかは、医学部定員の削減によるところが大であるが、経済成長と歩調を合わせた医師のキャリアパスの変化と云う側面もある事を取り上げた。山崎豊子著「白い巨塔」で描かれた旧帝大医局の教授を頂点とするピラミッドシステムが有効に機能していた時代が変わったのだ。昭和50年ごろ(1975年)より医学部が倍増し、病院の新設ラッシュが続いた。新設大学や新設病院のスタッフを送り込んだのは旧帝大の医局である。そこで働く医師のキャリアーは医局が采配し最後まで面倒を見たので、医師は安心して技術の習得に励めたのである。ところが今や新設ラッシュから35年も経つと、新設大学の卒業生が母校の教授になる時代となり、旧帝大の支配力はなくなった。地方において必要なのは安い労働力の若手医師であり、旧帝大が供給したいのは管理職ポストの中堅医師である。ここに齟齬が生じた。2004年度から実施されたアメリカ流の「臨床研修制度」が地方の医師不足を決定つけたし、医局の権威も崩壊した。大学医局から派遣される新人医師の労働力に依存していた地方の中核病院は突然医師不足に陥った。この制度では新人医師は自分で研修病院を探す必要があり、かつキャリアをつけるためどうしても有名な研修指定病院に流れた。いままで新人医師のエージェント(手配師)であった医局のマネージメントはなくなった。
(続く)


自作漢詩 「春曙」

2009年03月15日 | 漢詩・自由詩
江畔紅萠陽上     江畔紅に萠え 陽は岑に上る

柳叢微動噪寒     柳叢微に動き 寒禽噪く

春畦日暖立清暁     春畦日暖かに 清暁に立ち 

花下風和生薄     花下風和かに 薄陰を生ず

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(赤い字は韻:十二侵 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)