ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

文藝散歩 戦国時代の戦記文学 第1回

2009年03月17日 | 書評


 大衆文学の話題を提供してきた戦国時代の英雄譚はじつは経営者にも人気があって、雑誌「プレジデント」は歴史書かと間違うばかりである。昔は講談を聞けば血湧き肉踊る娯楽の王様と云う単純な庶民の楽しみであった。戦術論とか妙に教訓臭くした帝王学が経営者に人気があったようだ。庶民は戦記物「太閤記」に足軽風情が成り上がる上昇志向に拍手喝采をし、経営者は自分が戦国の王候貴族になったような錯覚を楽しんだようだ。国民に絶大な人気を持つ戦国時代の戦記物語には「信長公記」、「太閤記」、「甲陽軍鑑」、「北条五大記」、「徳川実記」、「陰徳記」、「元親記」などが挙げられるが、「徳川実記」を除いてこれらはいずれも戦争がなくなった徳川時代の敗者のノスタルジアである。したがって歴史・史実であるよりは、むしろ良かった昔を回顧するものであり、敗れた者を英雄化して惜しむものである事は否めない。史実は細部で歪曲され、偽造されている。要する戦記ものは歴史ではなく文学である。その典型が鎌倉時代に著された名著「平家物語」である。誰もここに書かれた事柄を100%事実だとは見ていない。その文章とストーリーに涙を誘われるのである。日本人の好きな「無常」と「あわれ」が見事に表現されているから不滅の文学と見なされているのである。

 今回戦記文学として取り上げたのは、「信長公記」である。あの奇人変人で酷薄な革命者「信長公」の全戦争記録である。あまりに完璧な記録であるため、信長公に関する歴史譚や脚本・映画のもとはこの「信長公記」によらざるを得ない。いわば信長公の起点・原点の書である。信長公を書いて飯を食った山岡荘八ら文筆家はこの書に印税を払うべきである。最初に「甲陽軍鑑」の解説書である大和田哲夫著 「甲陽軍鑑入門」を取り上げた。実は私は「甲陽軍鑑」は読んでいないが、甲斐の武田信玄の事蹟を記した書である。
(続く)


医療問題  「現場からの医療改革レポート」 Japan Mail Media

2009年03月17日 | 書評
絶望の中の希望ー医師は「医療崩壊」の現状をネットに訴える 第42回

特別配信号(2008年10月26日) 「結果回避義務についてー医療事故と交通事故の違いー福島大野事件判決解説1」 医療・法律研究者 大岩睦美

 一般的な業務上過失犯の場合は、結果予見義務と結果回避義務があると云う前提である。しかし医療手術には必然的に身体への侵襲があるため、事故リスクゼロが前提では手術そのものが不可能になる。数%のリスクが起きたら医者は罪に問われるということになれば医者は手術をしない。福島県立大野病院での「胎盤剥離による出血」は当然予見できるものだが、止血できる可能性とそれに替わり得る術法を立証しない限り、医師には結界回避義務(医療行為を中止する義務)は認められないと云うものであった。すなわち1)治療を続行した場合の具体的危険性、2)より適切な他の方法があること の二つの要件が満たされなければ罪には問えない。今後医療界と法曹界はその要件の具体的内容の検討が必要となるだろう。
(続く)



自作漢詩 「江上春望」

2009年03月17日 | 漢詩・自由詩
風廻雲断水煙     風廻り雲断ち 水煙微なり

棹影江邊対晩     棹影江邊 晩暉に対す

返照山隈青靄散     返照山隈 青靄散じ

魚肥掠面白鴎     魚肥え面を掠めて 白鴎飛ぶ

○○○●●○◎
●●○○●●◎
●●○○○●●
○○●●●○◎
(赤い字は韻:五微 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 バッハ 「教会カンタータ全集 第9巻 CD-52」

2009年03月17日 | 時事問題
バッハ 「教会カンタータ全集 第9巻 CD-52」
グスタフ・レオンハルト指揮 レオンハルト・コンソート
ハノーバー合唱団 アルト:レネ・ヤーコブス テノール:クルト・エクイルーズ
バス:ハンス・フリードリッヒ・クンツ
DDD 1988 TELDEC

「我心より 至高の神を愛す」 BWV174
「彼は羊の名を呼び給う」 BWV175
「頑なにして怯むものなり」 BWV176