ブログ 「ごまめの歯軋り」

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パレスチナ問題はシリア抜きには語れない アラブの問題である

2009年03月11日 | 時事問題
朝日新聞 2009年3月10日23時59分
シリア大統領、米オバマ政権と協調姿勢 本社単独会見
 【ダマスカス=平田篤央】シリアのバシャール・アサド大統領は10日、ダマスカスの大統領府で朝日新聞記者と単独会見し、イスラエルとの和平交渉について「現在の間接交渉から直接交渉に移る際には、同国に影響力のある米国が裁定人として必要だ」と述べ、米オバマ政権の関与を求めた。反米強硬派とされてきたシリアだが、対話路線を打ち出した米新政権と協調する姿勢を強調、停滞する中東和平の打開に意欲を見せた。
 シリアは対イスラエル闘争を続けるパレスチナのイスラム過激派ハマス、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラを支援し、欧米から「テロ支援国家」と名指しされている。また、国際社会の圧力に抗して核開発をすすめるイランとは友好関係にある。

アラブの歴史

イスラエルとパレスチナの抗争の全ての根源はイギリス植民地主義が生んだ「中東の火薬庫」戦略に起因する。それを引き継いだのがアメリカの石油戦略である。 9.11同時多発テロとアフガン戦争とそれに続くイラン戦争以来、中東諸国は現在イスラム原理主義が支配する反米で一枚岩に様に見える。イスラム教対キリスト教国という所謂「文明の衝突」という見方も存在する。しかし歴史的に中東地域を見て行くとそんな単純な構図ではないことが分る。中東は大きく分類すると、トルコ民族、イラン民族、多民族からなるアラブという三大勢力が興亡を繰り返したところである。その三大勢力もイスラム教という共通の宗教(中に多数の派があるが)でくくられる。アラブナショナリズムとは「アラビア語とイスラムの文化的・歴史的遺産を共有する人間をアラブ人と呼びこれを統一する運動」を意味する。欧州によるアラブの分割が起きたのは、1920年イラク、ヨルダン、パレスチナはイギリスの、シリアとレバノンはフランスの委託統治領になることが国際連盟で決定された。そこに現在の紛争の根源がある。イラクとトルコは独立を維持した。


環境問題 モード・バーロウ、トニー・クラーク著 「水戦争の世紀」 集英社新書

2009年03月11日 | 書評
水資源は共有財産であって商品ではない 第11回

第2部:グローバル水企業の策略 (2)

 多くの国の自治体政府が管轄する水道事業の公共事業が営利目的の外資系企業に乗っ取られている。水道事業の民営化は日本ではまだ聞かないが、将来のため手口は知っておかないといけない。水道事業の民営化には三つのモデルがある。第1は自治体が上下水道処理システムを企業にそっくり売却する。第2はフランスの官民パートナーシップPPPにおいて、自治体が水道企業に事業権を売却・リースする。企業は水道料金を徴収しシステムの整備運営費を引いて利益とする。第3は企業は管理費をもらうだけで料金の徴収はできない、管理請負業のようなものである。自治体は漏水などインフラ整備費用に困り、財政問題の解決策として水道事業の民営化を急いでいるようだ。企業にはさまざまな特典が与えられている。税金控除期間、経営補助金、融資保証、そして利潤保証まである。そしていまやグローバル資本の力は一国の政府を圧倒しているのである。国際競争力の前には環境規制などなきに等しい扱いを受け、規制は「不公正な貿易障壁」だとして脅かされるのである。 (続く)


医療問題 「現場からの医療改革レポート」 Japan Mail Media

2009年03月11日 | 書評
絶望の中の希望ー医師は「医療崩壊」の現状をネットに訴える 第36回

第14回(2008年9月24日) 「医師による遺族への募金活動」 東京大学医科学研究所 上昌広 


 9月22日から「周産期医療の崩壊をくい止める会」(代表:佐藤章 福島県立医大産婦人科教授)はインターネットで、お産でお母さんをなくした遺族の方への募金活動を始めた。日本の妊産婦死亡率は世界屈指の低さを誇っているが、それでも毎年50名ほどの妊産婦が亡くなるのが現状です。来年から一脳性まひを対象とした無過失補償制度が始まるが、救済から漏れる人が多い。福島県立大野病院事件を教訓に、医師を中心にインターネットにより広く募金をおこなう事になった。患者救済を官でやると、利害関係者の集まるところ所となり紛糾せざるを無い。迅速にボランティアの参加で医療救済の一助とすることが目的である。と云う趣旨の呼びかけを読むと、医師が官僚や県の役所の「責任回避」、「事なかれ」、「隠蔽」体質をいかに忌避しているかがわかる。