アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

朝鮮の「ミサイル実験」をどうみるか

2022年02月07日 | 日米軍事同盟と朝鮮・韓国

 朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)の相次ぐ「ミサイル実験」に対し、米バイデン政権は「我々の関心を引くためだ」(ブリンケン米国務長官)とし、日本のメディアは、「北朝鮮の挑発」(1月22日付朝日新聞社説)、「危険な挑発行為」(2月4日付毎日新聞社説)などと、相変わらず朝鮮を一方的に非難しています。

 こうした「論評」は、朝鮮憎悪に基づくきわめて歪んだ言説と言わねばなりません。
 まともな論調が乏しい日本のメディア・「識者」に比べ、朝鮮と国境を接する韓国のメディアには注目される論説があります。
 その1つ、 ハンギョレ平和研究所長・チョン・ウクシク氏の寄稿「北朝鮮はなぜ次々とミサイルを発射するのか」(1月31日付ハンギョレ新聞日本語電子版)の要点を抜粋します(太字・改行は私)。

< 北朝鮮の意図は何だろうか。北朝鮮が昨年から強調してきた二つの表現から、その答えを見つけることができる。「軍事力のバランス」「戦争抑止力」がそれだ。すなわち、軍事的敵対関係にある韓米日を相手に最大限の軍事力バランスを取って戦争を抑制するのが北朝鮮の根本的な意図であり、目標であるという意味だ。

 これは「知彼知己(彼を知り己れを知る)」を通して優に推測できる。韓米日は北朝鮮の核とミサイル能力だけに注目するが、韓米同盟と米日同盟の軍事力は北朝鮮を圧倒する
 ここのところ韓国と日本の軍事力も飛躍的な成長を遂げている。2017年に世界12位と評価された韓国の軍事力は、最近世界6位に跳ね上がった。特に「キルチェーン-韓国型ミサイル防御体制-大量報復」で構成された3軸システムが強化された。
 専守防衛の原則を掲げ攻撃用兵器の導入を控えてきた日本も、「敵基地攻撃論」を既成事実化するなど、変化を見せている。

 これに対抗して、北朝鮮は核とミサイルに「選択と集中」をしながら、新型ミサイルを保有することで軍事力のバランスと戦争抑止力を維持しようとしている。
 北朝鮮が最近発射しているミサイルの特性からも、これを確認することができる。極超音速ミサイルは韓米日のミサイル防衛体制(MD)を無力化しようという意図を、潜水艦や列車から発射するミサイルは発射プラットフォームを多様化し、2次攻撃能力を確保するという目的を持っている。

 では、北朝鮮の暴走を止める方法は何だろうか。対北朝鮮制裁の強化や先制攻撃論では阻止できない。何が必要だろうか。北朝鮮の武器庫に劣らず、自分たちの武器庫に積まれていく先端兵器も顧みる知恵が、韓米日に求められている。>

 「戦争抑止力」論は肯定できませんし、最後の「暴走」「知恵」という表現にも違和感があります。しかし、全体の論旨は明快で、共感します。要は、朝鮮を批判する前に、日本、アメリカ、韓国は軍事同盟による自らの軍備増強、軍事的挑発を顧みる必要があるということです。

 日本についていえば、史上最大の軍事費による自衛隊(日本軍)増強、米軍との一体化、「敵基地攻撃論」あるいは「戦争法(安保法制)」による「集団的自衛権」容認という憲法違反を直ちに改め、日米安保条約(軍事同盟)の見直しへ向かわねばならないということです。

 日本のメディア・「識者」がチョン・ウクシク氏のような冷静で公正な視点が持てず、「北朝鮮の挑発」という錆びついた決まり文句で朝鮮への一方的非難を繰り返すことは、日米政府の「北朝鮮敵視」政策に加担すると同時に、日本の軍拡・戦争国家化・憲法違反を容認することだと銘記すべきです。


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