アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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韓国・正義連めぐる問題―謝罪すべきは誰か

2020年05月16日 | 日本軍「慰安婦」・性奴隷・性暴力問題

    
 いま韓国で、「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)をめぐって、保守系メディアの報道が過熱しています。この状況を私たち日本人は決して対岸視することはできません。ことの経過はこうです。(ハンギョレ新聞日本語電子版などより)

 5月7 日本軍性奴隷(「慰安婦」)の被害者だった李容洙(イ・ヨンス)ハルモニ(92)が記者会見で、「水曜集会をなくさなければならない。参加した人たちが出した寄付がどこに使われたのか知らない」(9日付ハンギョレ新聞)などと、尹美香(ユン・ミヒャン)正義連前代表を名指しで批判。
 これに対し、正義連は同日、李さんに渡した1億㌆の口座振込証などを公開し、募金の使途などについて説明。(写真左は今年1月の水曜集会での李さんと尹前代表=9日付ハンギョレ新聞より。写真中、右は水曜集会=2015年12月撮影)

 8 正義連は、「30年間、『慰安婦』被害者の人権と名誉回復を願い正義連の運動を支持して連帯してきた方々の心に、予想もしない驚きを与え意図せず傷つけてしまった点に対して謝罪します」との声明文を発表。

 11 正義連の李娜榮(イ・ナヨン)理事長が記者会見し、「(性奴隷問題が)解決されていないことへの(李さんの)怒りを謙虚に受け止め、不本意ながらも傷つけてしまったことに対し心からお詫びいたします」と表明。

 この間(7日以降) 韓国の保守系新聞「朝鮮日報」「中央日報」「東亜日報」などが、連日、尹前代表のプライバシーも含め正義連に対する批判的報道を展開。

 12 韓国の過去問題関連の21の市民団体が、「正義連は、被害者支援だけでなく運動団体として法的責任を問うための国際連帯活動や記念行事、教育、追悼事業を忠実に遂行した」とし、メディアの「歪曲」を批判する声明を発表。

 13 李さんがフェイスブックで、正義連と歩んできた経過を「再確認」するとともに、「既成メディア」を「根拠のない憶測と非難、対立助長」だと批判(14日付ハンギョレ新聞)。

 13 日本の「日本軍「慰安婦」問題解決全国行動」(梁澄子・柴洋子共同代表)が、「日本政府、日本社会こそが責任を問われている」と題した声明を発表。

 以上がこれまでの主な経過です。政治的背景の指摘もあり、問題はさらに継続しそうですが、この時点で明確に確認しておかねばならないことがあります。それは、李さんのいら立ち、怒りの根源は、性奴隷問題になんら責任をとらず、うやむやにしようとしている日本の安倍晋三政権にあるということです。

 発端となった7日の李さんの会見には、「『顔も見たくない』という安倍首相への非難が含まれていた」(徐台教「ニュースタンス」編集長、14日のサイト)のです。

 李さんの尹前代表に対する誤解の原因の1つは、安倍政権が朴槿恵(パク・クネ)政権(当時)との間で、性奴隷問題の棚上げを図った「日韓合意」(2015年12月27日)をめぐる経過です。

 13日のFBでも李さんは、「冒頭で加害国である日本に対し、犯罪の認定と謝罪、真相究明と法的賠償、再発防止のための制度的装置づくりなどを求めると共に、『これを通じて被害者の名誉と人権回復が実現しなければならない』と強調」(14日付ハンギョレ新聞)しています。

 上記・全国行動の声明(13日)はこう強調しています。

 「30年間、被害事実の認定と心からの謝罪、それに基づく賠償、たゆまぬ真相究明と教育等の再発防止策が求められてきたにもかかわらず、未だその声に応えることが出来ていない日本政府にこそ、被害者をこのような状況にまで追い詰めた責任がある。そして、日本政府に責任を取らせることが出来ていない私たちは、日本の市民として、その責任の重さを痛切に感じ深く恥じ入る他ない

 李さんはじめ性奴隷被害者のみなさん(亡くなられた方を含め)に、ほんとうに謝罪すべきは、安倍政権・日本政府であり、その政府をつくり許している、そしてこの問題に無関心な、「日本市民」です。


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