アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

徳仁天皇は「ビデオメッセージ」を発してはならない

2020年04月09日 | 天皇制と政権

    
 安倍晋三首相は7日、ついに緊急事態宣言を発しました(写真右)。その問題点については今後改めて追及していきますが、その前に危惧されることがあります。それは、「宣言」を受けて、徳仁天皇が「ビデオメッセージ」をテレビで流す可能性(恐れ)があることです。天皇は「メッセージ」を発するべきではありません。発してはいけません。

 昨今の情勢で、もし代替わりしていなければ、明仁天皇はまた「ビデオメッセージ」を出すのではないだろうか、と思っていた矢先、イギリスのエリザベス女王が5日(現地時間)、「私たちが団結すれば(コロナウイルスに)打ち勝つことができる」とするテレビ演説を行いました(写真左)。女王がクリスマス以外にテレビでメッセージを発するのはきわめて異例です。
 徳仁天皇や明仁上皇がこれに刺激を受け(日本の皇室とイギリス王室は深い関係)、日本でも、と考えることは十分予想されます。

 なぜなら、9年前、東日本大震災のさい、衝撃が収まらない2011年3月16日にテレビで「ビデオメッセージ」を流したのが明仁天皇(当時)にほかならないからです(写真中)。天皇がテレビを通して直接メッセージを出すのは初めてのことでした。

 いろいろな意味で「3・11」と比較される現在の新型コロナ感染状況下で、徳仁天皇あるいは明仁上皇がふたたび「ビデオメッセージを」と考えても不思議ではありません。

 明仁天皇のメッセージに対しても書きましたが(2016年3月17日のブログ参照https://blog.goo.ne.jp/satoru-kihara/d/20160317)、天皇の「ビデオメッセージ」はきわめて重大で、けっして容認できるものではありません。主な理由は4点あります。

 第1に、憲法第4条は、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しない」と厳格に規定しています。天皇の「ビデオメッセージ」(あるいはそれに類する行為)は憲法(第6条、第7条)が規定する国事行為には含まれていません。天皇が直接「国民」にメッセージを発すること憲法上許されない違憲行為です。

 第2に、憲法第3条は、「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負う」としています。しかし明仁天皇のビデオメッセージは「内閣の助言と承認」を得ず、天皇自身の発案で天皇が書いた内容で行われました。その意味で、天皇のビデオメッセージは2重の憲法違反です。

 第3に、明仁天皇のメッセージは「深い悲しみの中で、日本人が取り乱すことなく助け合い、秩序ある対応を示している」として、ことさら「日本人」を強調し、ナショナリズムを煽りました。そして「秩序ある対応」を評価する形でそれを要求しました。これは政府(国)に対する被災者・住民・国民の当然の怒り・批判を抑え込む役割を果たしました。

 もし今回徳仁天皇が「メッセージ」を出すとしても、「日本人」「秩序」「助け合い」「絆」を強調するのは必至でしょう。それは安倍首相の緊急事態宣言の危険性を隠ぺいし、安倍政権を側面援助するきわめて重大な政治的役割を果たすことになります。

 第4に、「国難」(小池百合子都知事)といわれる現在の状況下で天皇がメッセージで「国民」に結束を求めることは、天皇が「国民」を束ねるものであるかのように描くことになります。それは自民党の改憲草案が第1条で掲げる「天皇元首化」に道を開くものです。

 以上のような重大な問題をもつ「天皇ビデオメッセージ」が、安倍首相の緊急事態宣言で民主主義が危機に瀕しているいま、「3・11」に続いて出されることがないよう厳しく注視する必要があります。


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