アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「日本の諜報」(DFS)の驚くべき対米従属

2018年05月21日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会

     

 19日夜のNHKスペシャルは、「日本の諜報-スクープ・最高機密ファイル」と題して、アメリカや日本の機密文書から、知られざる日本のスパイ活動の実態を報じました。

 それは、日本が情報の収集・提供の面でも、資金提供の面でも、完全にアメリカ(NSA=国家安全保障局)に従属し、憲法を無視したスパイ活動が続けられている実態でした。要点を紹介します(要約)。

 ●日本にはDFSという秘密の諜報機関がある。正式名称(部署)は、防衛省情報本部電波部。内閣情報調査室(内調)が統括する。

 ●DFSはアメリカが日本を「反共の防波堤」にするため、「政府の統制下にある諜報機関の設置が鍵」として設置させた。米機密文書は「DFSはNSAの日本における重要なパートナーで、その関係は50年以上にわたる」と明記。

 ●DFSの元担当官は、「アメリカは多くの情報の中から選んだものだけを日本に渡すが、日本は持っているものは全部アメリカに渡している。けっして対等ではない」と証言する。

 ●例えば1983年の大韓航空機撃墜事件で、日本(DFS)は傍受したソ連の通信テープをアメリカに渡し、アメリカ(レーガン政権)はそれを国連に提出して公にした。実はアメリカは独自に通信傍受した情報を持っていたがそれは表に出さず、日本を矢面に立たせた。

 ●アメリカを頂点とする情報システムのピラミッドができている。アメリカの下に「勝戦国」の4カ国(イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)が「セカンドパーティー」を形成し、アメリカとともに「ファイブアイズ」として情報を共有する。日本などはその下の「サードパーティ」で、「ファイブアイズ」に情報を提供(写真中。写真はすべて同番組から)。

 ●米機密文書は、「約3000平方㍍の最新鋭の(通信傍受)施設の建設費660万㌦のほとんどは日本政府が払った」「年間37万5000㌦の人件費も全て日本政府が支払った」と明記(「思いやり予算」)。

 ●イラク戦争(2003年~2011年)で、日本(DFS)はアメリカ(NSA)に情報を提供する役割を担った。

 ●内調・DFSが現在取り組んでいるのは、「通信傍受のサイバー化」。NSAが支援している。民間の通信衛星を使った「ネット諜報」で、それによって「日米諜報の一体化」はさらにすすむ。日米政府は「一般市民」の私的情報(プライバシー)まで詳細に把握できる。もちろん憲法に抵触するので、公式には否定している。

 ●NSA元分析官のエドワード・スノーデン氏は「NSAは日本に対し新たな方法でより多くの情報を集めるよう求めてきた」と証言し(写真右)、日本の機密文書を発掘した作家の吉原公一郎氏は「日本はアメリカに代わって情報を収集する属国のようなもの」と断言。内調の発足に携わった元主幹・志垣民郎氏も「米CIAが内調の見本だった」と振り返った。

  以上をひとことで言えば、「日本の諜報」は生まれも育ちもアメリカ仕込みで一体化し、アメリカは口を出し(支配)、日本は金を出す(従属)。すでにイラク戦争ではアメリカへの情報提供で日本は実質参戦国となった。「ネット諜報」で市民の情報はすべて米日諜報機関に把握されている、ということです。

  恐るべき事態です。NHKは「問われているのは国であり、私たちだ」という意味不明のコメントで終わりました。「私たち」に何が問われているのか、それを言わないのがNHK。

  「日本の諜報」の対米従属、憲法蹂躙がなぜ進行しているのか。その根源は言うまでもなく、日米軍事同盟(安保条約体制)です。「私たち」に「問われている」のは、ほんとうに独立した国として平和・民主の社会を目指すために、日米軍事同盟に対する思考停止を打ち破ってそれを廃棄することではないでしょうか。


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