アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

沖縄を狙い撃ちする自民改憲草案・・・在沖米学者の視点

2013年09月18日 | 日記・エッセイ・コラム

PhotoPhoto_2 那覇市在住(13年)の米政治学者、C・ダグラス・ラミス氏が新たに『増補 憲法は、政府に対する命令である。』(平凡社ライブラリー)を著わしました。それを記念した特別講演会が15日那覇市内でありました。書店ロビーで行われた講演会は、始まりはわずかな聴衆でしたが次第に人が増え、最後は質問が続出しました。
 ラミス氏の話は今回加筆した「自民党憲法改正草案」の批判を中心に展開。現憲法が、政府(国家権力)に対する「国民の命令」(人権・平和)であるのに対し、自民草案は逆に政府(国家)が「国民に命令」するものだと指摘。天皇・国家主権の明治憲法に逆戻りさせるもので、たんなる「改正」ではなく、まったく別の国家をつくろうとするものだと述べました。
 
とくに注目されたのは、「自民草案は沖縄を狙い撃ちしている」という指摘です。ラミス氏はそれが「地方自治」の2つの条項の改変に表れているといいます。1つは92条の「地方自治の本旨」に、「住民に身近な行政」という文言を新たに挿入すること。国政との「役割分担」です。もう1つは、現在の95条が「一つの地方公共団体のみに適用される特別法」の制定に厳しい条件を付けているのに対し、自民草案はその対象を「特定の地方自治体の住民にのみ義務を課し権利を制限する特別法」と具体化していること。これによって逆に、「義務を課し権利を制限する」ものではないと強弁すれば「特定の地方自治体にのみ適用される特別法」が制定しやすくなります。
 つまり、防衛・軍事問題は「国政問題」であり地方自治体が口出しする権限はないとする一方、特別法をつくって特定の県の住民を縛ることがやりやすくなるわけです。ラミス氏は、「そのターゲットは、自民党政府が最もうるさがっている地方自治体・沖縄にほかならない。沖縄の人はこの地方自治条項の改悪にもっと敏感になるべきだ」と警告します。
 
講演のあと新刊を買って読み直しました。確かに自民改憲草案批判にはあらためて教えられる視点が多々あります。しかし同時に、賛同しかねる個所もあります。それは「付録」として巻末に記された「憲法・安保・沖縄」の項です。ラミス氏は、「現実政治としては、憲法第九条は米軍基地を可能としつつ、米軍基地が憲法第九条を可能としている」とし、「沖縄の民意は、現在『県外移設』、具体的には、米海兵隊の普天間飛行場は日本本土へ移すべきだ、という路線にまとまっている」。だから、「本土の平和・護憲運動が(分裂を避けて)意図的に安保問題を棚上げしている以上」、「本土移設」論に異を唱えるべきではない、といいます。そうでしょうか。沖縄は「本土移設」論でまとまっているのでしょうか。9条と米軍基地は「補完」関係にあるのでしょうか。「安保廃棄」は棚上げされているのでしょうか。自民党改憲草案批判やオスプレイ反対では一致するのに、「憲法・安保・沖縄」がからむと意見が分かれる。沖縄の反基地・平和運動の難しさを改めて痛感します。が、今は一致点を大切にして、広げていきたい。

 <今日の注目記事>(18日付沖縄タイムス1面トップ)

 ☆<しまくとぅば指導4割 県教育庁調査 県立高校国語で>
「県立高校の国語の授業で、全高校の4割以上にあたる32校が『しまくとぅば』を取り入れていることが17日、県教育庁のアンケートで分かった。学校が独自に『しまくとぅば』を1年間学べる科目に採用しているのは県内に6校あり、来年さらに1校増える。県教育庁の担当者は、『教師も身近に聞いて育った人も、話せる人も少なくない。悩みつつ、授業で取り入れている』と話す」
 ※「教師の指導の課題」では「沖縄の言葉の指導が困難」(49%)、「沖縄の言葉が分からない」(14%)など、教師の戸惑い、苦悩がうかがわれます。那覇市が小・中学生向けの読本を作製した話をきのう書きましたが、全県レベルで高校生向けの教材・読本を作製することも必要ではないでしょうか。きょう18日は「しまくとぅばの日」です。


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