アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「琉球共和社会憲法試案」から学ぶもの

2013年07月03日 | 日記・エッセイ・コラム

PhotoPhoto_2 「九死に一生を得て廃墟に立ったとき、われわれは戦争が国内の民を殺りくするからくりであることを知らされた。だが、米軍はその廃墟にまたしても巨大な軍事基地をつくった。われわれは非武装の抵抗を続け、そして、ひとしく国民的反省に立って『戦争放棄』『非戦、非軍備』を冒頭に掲げた『日本国憲法』と、それを遵守する国民に連帯を求め、最後の期待をかけた。結果は無残な裏切りとなって返ってきた。日本国民の反省はあまりにも底浅く、淡雪となって消えた。われわれはもう、ホトホトに愛想がつきた。好戦国日本よ、好戦的日本国民と権力者共よ、好むところの道を行くがよい。もはやわれわれは人類廃絶への無理心中の道行きをこれ以上共にはできない」
 この痛烈な「前文」で始まる「憲法」試案があります。「琉球共和社会憲法試案」です。「共和国」ではありません。「共和社会」です。起草されたのは1981年5月15日。「復帰」からちょうど9年目です。掲載されたのは「新沖縄文学」(沖縄タイムス社発行、93年廃刊)。起草者は当時同誌の編集長だった川満信一氏(写真右)です。その存在を教えてくれたのは新城郁夫さん(琉球大学=写真左)。30日のシンポ(「連動する東アジア)です。新城さんは「日本の崩壊が急速に進み、多くの人が『難民』化していく」中で、この憲法試案は「極めて重要な指標となる」と強調しました。
 同憲法試案(全56条)は、「貧困と災害を克服し、共生のため力を合らさなければならない。ただし貧しさを怖れず、不平等のつくりだすこころの貧賤のみを怖れ忌避しなければならない」(7条)、「武力その他の手段をもって侵略行為がなされた場合でも、武力をもって対抗し、解決をはかってはならない」(13条)、「核物資および核エネルギーの移入、使用、実験および核廃棄物の貯蔵、廃棄はこんご最低限五十年間は一切禁止する」(15条)、「人種、民族、身分、門中、出身地などで絶対に差別をしてはならない」(18条)、「基本的生産手段は共有とする」(19条)、「各々に適した労働の機会を保障されなければならない。労働は自発的、主体的でなければならない」(23条)などなど。その先見性、先取性、ヒューマニズムは目を見張るばかりです。
 でも最も注目されるのは、第1条で、「ここに国家を廃絶することを高らかに宣言する」としていることです。だから「琉球共和社会の人民」は今の沖縄県に住んでいる人には限られません。「この憲法の基本理念に賛同し、遵守する意志のあるものは人種、民族、性別、国籍のいかんを問わず、その所在地において資格を認められる」のです。「復帰」に失望し、沖縄は日本から離別し独自の道を進むと宣言しながら、目指すのは「独立国」ではなく「共和社会」なのです。川満さん自身がシンポに参加されており、ちょうど私の席の後ろに座っておられました。私は川満さんに今沖縄で進んでいる「独立学会」などの動きについて意見をうかがいました。川満さんは、「”国民国家”を解体して社会をリフォームするのでなければ、漂流するだけ」だと言われました。
 「琉球共和社会」構想を幻想、空想と決めつけるか、それともその理念、精神を活かす道を探り、実現を目指すか。これからの沖縄にとって、大きな分かれ目です。
 それにしても起草されて32年。このかんこの憲法試案はどう受け止められ、どう検討・研究されてきたのでしょうか。
 

 <今日の注目記事>(3日付から)

 ☆<ドラム缶新たに7本 枯れ葉剤入りか調査へ>(沖縄タイムス社会面)
   (琉球新報第2社会面にも同様記事)
 「沖縄市のサッカー場からドラム缶が見つかった問題で2日、沖縄市と沖縄防衛局が現場調査を始めたところ、新たに7本のドラム缶が発見された。うち1本は周囲には帯状に白く線が塗られているが、枯れ葉剤入りの缶かどうかは不明。これでサッカー場から見つかったドラム缶は合計26本となった。・・・枯葉剤に詳しいフォトジャーナリストの中村梧郎さんはドラム缶の写真を確認し、『枯れ葉剤の可能性は低いのではないか』とみる。・・・沖縄・生物多様性市民ネットワークの河村雅美ディレクターは『徹底的で透明性のある調査が求められる。作業員の安全のためにも、土地の使用履歴を米軍に提出させる必要がある』と強調した」

 ☆<米アカデミー賞2度受賞 オリバー・ストーン監督 基地の島 OKINAWAを語る 8月 14日沖縄コンベンション劇場>(琉球新報1面社告)
 講演者・パネリストは、ストーン監督のほか、ピーター・カズニック氏(米アメリカン大学教授)、大田昌秀氏(元沖縄県知事)、乗松聡子氏(ピースフィロソフィーセンター代表)。
 乗松さんがコーディネートした企画です。楽しみです。


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