初夏になると小さいながら鮮やかな色で咲くハニーサックルは甘い香りがただよい、
この名前も花の蜜を蜂が好むことから由来する。
つる性なので自在に枝分かれしながら伸びるのでイギリスなどでは生垣によく見られるという。
光と水をたっぷり吸い込んで多くの花をたわわに咲かせるハニーサックルは
女性を飾るアクセサリーのようだ。
柔らかい紫のしとねに眠るのは誰ですか
それは青の胎児・青空の色にひらく夢を見ながら
静かなほほえみを浮かべている
眠れ神秘な青の子供・充分な眠りの後に
もし誰かが優しく扉を叩き声をかけたら
そうその時にだけ開きなさい青の翼を 中井英夫「薔薇幻視」より
「シャルル・ドゴール」は1955年(昭和30年)フランスのメイアンによって発表された。
紫の濃淡があでやかな薔薇だが、その当時は「青いバラ」として登場した。
薔薇生育家が憧れた青という色彩の薔薇の実現は、失敗を繰り返し、
それでもなお青に近づこうと果てのない色素研究の積み重ねであった。
現在は某企業が青い薔薇をついに作りだしたが、薔薇が地面からどんな色でもたやすく咲くとしたら
それはとてもさびしいことである。
シャルル・ドゴールの誕生は、絶賛されながらも青になり得なかった宿命を持った薔薇だったが、
このかぐわしい香りと豊かさ、気品ある姿は一級品であり、見る者を夢想へと誘う。
幻を求めてやまなかった人々の憧れを秘めて。
サラセニアを手にしたら赤い花びらが散ってしまった。
だが花びらを失ったサラセニアは、まるでひとでかパラソルのような奇怪な形を現した。
(写真の右中央)
すでに生ける気持ちはサラセニアに合わせて。
バラバラと落ちた雄しべからは粘着液が石につく。
かまわず花と葉を足していった。
メキシコに咲く食虫植物は時に人を狼狽させる。
このサラセニアの正式名称は
「サラセニア プルプレア ベノサ バーキー 」
右の写真が本来の花のすがた。生徒さんから借りて撮影した。
明るくなると「きれいな花」になってしまう気がするが、
大胆な形にやはり野性的な魔の魅力で迫ってくる。
熱くて暗い花、太古の化石のような。
他に使用した花◆クレマチス、クリスマスローズ、ギボウシ、利久草
茎も白く葉が銀白色のダスティミラー。
葉はその形と陰影の美しさにあり、ビロードのような手触りは
グリーンの葉とは別のあたたかさを感じる。
それなのにどこかクール。
色彩を忘れたように生けてみる。
花言葉◆薄れゆく愛、あなたを支える
他に使用した花◆シルバーレース、クレマチス、アンスリューム、ぜんまい
4月8日の今日はお釈迦様が生まれた日として、お寺では花御堂に誕生仏を安置し、甘茶をかけてこの日を祝う。
釈迦が誕生した時、飛来した竜が甘茶を注ぎ
体を清めると釈迦は立ち上がり、七歩進んで右手で天を指し、左手で地を指して
「天上天下唯我独尊」
と言った姿がこの誕生仏である。
甘茶は無病息災の効果があるとされている。この日は参拝者にも甘茶が振舞われる。
「天上天下唯我独尊」
(てんじょうてんげゆいがどくそん)は、この世に自分ほど尊い者はない。
ひとつの命をいただいた人間ひとりひとりの命は尊い、という意味を持つ。
そして誰もが息災であること。
この年、痛感するように味わった釈迦の言葉、甘茶の味、2011年の花祭り。