クリスマスブッシュは密集した赤い小さな花。ところがこれは花ではなく、
萼が成長して赤くなって花のようになったもの。
花は初夏あたりに白い花をつけ、花が落ちたあとの萼がこのように赤く色づいて見事な枝になる。
赤いばらの実を手にして次々と花を入れる。
無心に花と向き合う時間なのになぜか気持ちは他へいく。
このばらの実は今ここにあるけれど、どこでばらを咲かせていたのだろう。
クリスマスブッシュもどこから切られてきたのだろうなどと考え、ふと手が止まる。
都会にいると、野生の枝が山から吹いてきた風にふるえているのを見ることができない。
自然への渇望をおぼえ、ふりはらうように止めた手で一気に生けた。
使用した花◆モカラ(蘭)、ばらの実、クリスマスブッシュ、ユーカリ、スキミア
天平の時代、当間の里(奈良県)で右大臣・藤原豊成の娘、中将姫が蓮の糸を五色に染め、
曼荼羅の文様を織った。悲運の身ながら仏道に精進するけなげな中将姫。
そんなある日、光明がさし、如来と菩薩は心きよらな中将姫を西方浄土へ迎えた。
伝説の姫は当間寺(たいまでら)の蓮池にたたずみ、訪れる人に平安の微笑みで迎える。
蓮の茎から出るいくすじもの糸。
あしらっていた花を忘れて浮遊する糸に見入ってしまった。蓮の茎には植物の神秘が宿る。
使用した花材◆蓮の実、あじさい、タニワタリ、木いちごの葉、スキミア
小田急電鉄・小田急線に「向ヶ丘遊園地」駅があるが、遊園地は数年前に廃園になり、園内にあったばら苑は市民の要望によって残されることになった。
ばら苑は2002年に川崎市に引き継がれ、市民のボランティアの手によって今も見事な薔薇が咲き続ける。
(左から)
グリーノールズグロー、アンクルウォーター、アイスバーグ、スペクトラ、アプリコーラ
(左から)
ノスタルジー、リバプールエコー、不明(大輪咲き)、ピエールロンサール、シャンドスビューティ
左は見頃を過ぎたために切られてバケツに入れられていた薔薇。
次に美しい花を咲かせるための未来への剪定だ。
薔薇は「愛と美の象徴」「花の中の花」といわれるが、こうした
手厚い管理によっておよそ530種の薔薇は春をいろどり青空の下で咲き乱れる。
湊川神社は楠木正成が祀られていることでも有名な由緒ある神社で、
地元では親しみをこめて「楠公さん」と呼ばれている。
表神門から入ってすぐ左に日本最古といわれるオリーブの樹が現存する。
明治政府は、明治11年(1878年)のパリ万国博覧会で
日本館長だった前田正名(1850年~1921年)に殖産興業のひとつとして農業振興を要請した。
フランスから輸入したオリーブの樹は約2000本。
前田正名は現在の山本通りで旧国営「神戸オリーブ園」で栽培をはじめた。
のちに「神戸オリーブ園」は廃園になったが、そこから移植された一本が湊川神社のオリーブで、明治からなお生き続ける姿を目にすることができる。
オリーブは「ノアの箱舟」に鳩がオリーブの葉をくわえて戻ってきたことにより、
洪水が引き、人間が地上に住めることの証を示したとされることから「平和」のシンボルとされた。
葉のない枝に紫紅色の小さな花が集まって咲く花蘇芳は
色が華やかでありながら地味な印象がある。ピンク系の花と混ぜてみた。
春の陽射しはあたたかい。
惜しみなくそそぐ春の光にどんな花もやわらかな金色を帯び、
花蘇芳も溶けるような色になった。
他に使用した花◆シンビジウム、カーネーション、ガーベラ、アルストロメリア、スカビオーサ