バイオの故里から

バイオ塾主宰・Dr.Kawanoの日々、収集している情報(DB原稿)をバイオ塾メンバー向けて公開しています。

森林総研がキノコの仲間(担子菌)の進化の目印(megB1)を発見

2007年12月29日 | BioTech生物工学 遺伝子工学
 森林総合研究所は、キノコの仲間である担子菌類全体のゲノムに共通して存在するDNA配列(megB1)を発見しました。担子菌類と他の生物とを区別できるDNA配列を発見したのは世界で初めてです。
 今回発見されたmegB1の分布が担子菌類のゲノムだけに限られていることから、菌類の祖先から担子菌類が分かれて進化した時点でmegB1が生じたと考えられます。さらに担子菌類のなかでmegB1は、ゲノム内のリボゾームRNAという遺伝子の領域内にあるIGS1という領域内に存在する種としない種の2つのグループに分かれていました。このような分布の違いの原因など解明すべき点は残っていますが、megB1の発見は、今後、担子菌類の系統分類や進化機構の解明に多大な貢献をすると考えられます。森林総合研究所プレスリリース2007-12-14

ボルデテラ属細菌のタイプIII分泌機構より分泌される蛋白質の機能解析

2007年12月29日 | 感染症 ワクチン 抗生物質 食中毒
桑江 朝臣(北里大学北里生命科学研究所細菌感染制御学研究室)
日本細菌学雑誌 Vol. 62 (2007) , No. 2 pp.241-246

百日咳菌に代表されるボルデテラ属細菌は多くの病原細菌と同様にタイプIII分泌機構とよばれる病原因子分泌機構をもっている。本研究ではボルデテラ属細菌のタイプIII分泌機構から分泌される蛋白質を同定し, それらの蛋白質の機能の解明を試みた。百日咳菌の類縁菌である気管支敗血症をモデル菌種として用い, 野生株とタイプIII分泌能欠損株の培養上清中に分泌される蛋白質を調べた結果, BopBとBopCの二つの蛋白質をボルデテラ属細菌の新たな分泌蛋白質として同定した。BopB欠損株は野生株に認められる溶血活性を保持していなかったことから, BopBはエフェクターとよばれる蛋白質群を宿主細胞に注入するために宿主細胞膜上に形成される小孔の構成因子であることが明らかになった。BopC欠損株は野生株に認められる哺乳類細胞に対する細胞傷害性をもっていないこと, さらにbopC 遺伝子を哺乳類細胞内で発現させた場合に宿主細胞膜の破壊が認められることから, BopCはボルデテラ属細菌の感染過程で宿主細胞内に移行し, 細胞傷害活性を発揮するエフェクターであることが明らかになった。 J-Stagr >> JOI JST.JSTAGE/jsb/62.241

腸管出血性大腸菌O157:H7の人腸管上皮細胞への付着に関する研究

2007年12月29日 | 感染症 ワクチン 抗生物質 食中毒
立野 一郎(名古屋市立大学医学部細菌学教室)
日本細菌学雑誌 Vol. 62 (2007) , No. 2 pp.247-253

腸管上皮細胞への付着は, O157:H7による感染の初期段階において必須である。本研究では付着に関与する細菌側因子の同定を試み, その結果O157:H7による大腸上皮への付着機構について以下のようなことを明らかにした。(1) O157:H7による上皮細胞への付着は遺伝学的に少なくとも2つの段階に分けることが出来る。O157:H7は付着因子であるIII型分泌機構依存的に上皮細胞へ付着したのち, intimin依存的にその場所で増殖しクラスターを形成する。(2) 第一段階の付着に関して, 菌体側から宿主細胞に差し込まれる (EspA, EspB, EspDの3種類のタンパク質からなる) 管が付着因子としても機能している可能性が顕微鏡像を基に指摘されていた。この仮説が, 実際espA, espB espD 遺伝子の変異株を解析することにより遺伝学的に証明された。(3) 第一段階の付着の効率のみを上昇させるような何らかの未知の因子が存在することが示唆された。(4) 93kDaプラスミド (pO157) 上のtoxB 遺伝子がEspA, EspB, EspDの産生及び分泌能に影響を与えることにより第一段階の付着に関与している可能性がある。(5) yhiF, yhiE 遺伝子は, LEEの発現を介さずに第一段階の付着を制御していることが示唆された。 J-Stage >> JOI JST.JSTAGE/jsb/62.247

ヒト腸内フローラ構成菌の定量的PCR検出法の確立および菌属・菌種分布の解析

2007年12月29日 | 医療 医薬 健康
松木 隆広(ヤクルト中央研究所基礎研究II部)
日本細菌学雑誌 Vol. 62 (2007) , No. 2 pp.255-261

ヒトの腸管内には多種多様な細菌が在住し, 複雑な微生物生態系 (腸内フローラ) が形成されている。この腸内フローラの構成菌の解析は, 主に培養法により行われてきたが, すべての菌株を培養できないこと, 従来の分類・同定法は正確性に欠けること, 多大な労力と時間・熟練を要すること, などの問題点があった。そこで本研究では, 腸内フローラ構成菌の同定・検出のために, 16S rRNA遺伝子を標的とした菌属・菌種特異的プライマーを作製した。さらにReal-time PCR法と組み合わせることによって, 標的菌の分布を健常成人について調べた。その結果, 菌属レベルの解析ではClostridium coccoides groupやClostridium leptum subgroupがヒト腸内フローラの最優勢菌であることが明らかとなった。また, Bifidobacterium に注目した菌種レベルの解析では, 最優勢の菌種がこれまで培養法で報告されていたものとは異なることや, 乳児に特徴的な菌種が成人にも分布していることなどが明らかとなった。 J-Stage >>JOI JST.JSTAGE/jsb/62.255 



微生物由来リポタンパク質・リポペプチドの免疫生物学的活性と自然免疫系による認識

2007年12月29日 | 抗体 免疫 抗原 
柴田 健一郎 北海道大学大学院歯学研究科
日本細菌学雑誌 Vol. 62 (2007) , No. 3 pp.363-374

微生物の有するリポタンパク質 (LP) がグラム陰性菌のリポ多糖体 (LPS) と同様な種々の免疫生物学的活性を有し, その活性部位はN-末端リポペプチド (LPT) 部分であることは古くから知られていたが, Toll-like receptor (TLR) が発見されるまでその受容体は明らかにされていなかった。TLR発見以来, LPならびにLPSの認識機構が研究され, それぞれの認識にTLR2ならびにTLR4が重要な役割を果たしていることが明らかにされた。また, LPの有する新たな免疫生物学的活性ならびにLPによるマクロファージ, 樹状細胞等の活性化のメカニズムも分子レベルで明らかにされている。さらに, MHC分子に結合する抗原ペプチドをLPT化することにより, 免疫原性が顕著に増加することも明らかにされ, 新規ワクチンとしての研究もなされている。本稿では, 微生物由来LP・LPTの生物活性ならびに自然免疫系による認識機構について最近の知見をもとに概説している。 J-Stage>> JOI JST.JSTAGE/jsb/62.363

プロテインメモリーを利用した低温高機能酵素のデザイン

2007年12月29日 | BioTech生物工学 遺伝子工学
研究者 田村 厚夫
 所属: 神戸大学大学院自然科学研究科

報告概要 タンパク質は20種類のアミノ酸が特定の配列で結合したヒモ状物質であり、このヒモは自動的に折り畳まれ、特定の立体構造を形成した後、初めて機能する。つまり、配列と構造機能には1対1の相関がある。そこで、アミノ酸配列を人工設計して、「望みの構造機能を持ったタンパク質を、自由自在にデザインする」ことを最終目標として研究を行った。「望みの構造」として、タンパク質の基本構造単位である二次構造およびナノメートルスケールとなる集合体構造を、「望みの機能」として、タンパク質分解酵素の低温(0℃程度)での高機能化を取り上げた。反応を低温で効率良く行うことは、エネルギーを付加することなく反応が進行するため省エネルギーにつながり、また水溶媒系で副産物を生じないなど環境にもやさしい。 J-Store >>研究報告コード R040000074

蛋白質フラスコを用いた高効率酵素型触媒

2007年12月29日 | BioTech生物工学 遺伝子工学
研究者 林 高史
 所属: 九州大学大学院工学研究院応用化学部門
研究実施機関 九州大学

報告概要 ミオグロビンは、天然に広く存在するヘム蛋白質の一つであり、酸素の貯蔵がその生理学的役割である。一方、ミオグロビンの補欠分子であるヘム(ポルフィリン鉄錯体)は、酸素分子を結合するだけでなく、酸化反応の触媒としての能力を秘めている。本研究者はこの点に着目し、ミオグロビンに化学的修飾を施すことにより、環境負荷軽減型の新しい生体材料・触媒を開発することを目的とした。具体的には、ミオグロビンへの基質結合部位の構築、活性中心の変換、ヘムポケット(反応場)の改良を試みた。特に、天然ヘムをミオグロビンから除去したアポ蛋白質に対して、修飾した機能化ヘムを挿入することにより、大胆なミオグロビンの機能化を狙った。 J-Store 研究報告コード R040000080

自然現象・社会動向の予兆発見と利用

2007年12月29日 | 医療 医薬 健康
研究者 大澤 幸生 (筑波大学社会工学系)
研究実施機関 筑波大学

報告概要 本研究で大澤らは意思決定のために重要となる事象・状況・または情報を「チャンス」と称し、チャンスを発見する手法を研究してきた。その目標は、ダイナミックかつ複雑に変化する実社会の中で個人および組織がリスクに負けず、むしろ変化の中から生まれ出るチャンスの価値を正しく捉えて行動する方法を確立しようというものであった。その成果は書籍や論文の他、ビジネス等に役立つ実学としての成果を生んできた。次に、これらの研究の概要について概説する。人間の意思決定にこれまでにない影響を及ぼすようなチャンスには未知因子が関与しており、人がチャンスに働きかけた反応から初めてその未知因子を感覚的に知ることが多い。例えば、ファッションデザイナーがある青年の服装に関心を持ったら、その青年に話しかけてみることが新しい流行実現への有効なステップとなる。このため、大澤らが確立してきたチャンス発見手法の基礎は(1)チャンスの価値を理解して行動するまでに人が環境と相互作用を行ってゆく過程の理解(2)(1)のプロセスを促進するため、環境についてのデータを解析し可視化する手法という2点である。J-Store 研究報告コード R040000091

L-カルニチン合成系酵素遺伝子の転写促進用組成物

2007年12月29日 | 生薬・植物成分と薬効 漢方

【発明者】青木 史樹ほか 【出願人】 株式会社カネカ

【要約】 【課題】本発明は、L-カルニチンが関連する肥満改善や運動時の持久力向上などの生体機能を回復または増強することを目的とした、L-カルニチン合成系酵素遺伝子の転写を促進する組成物を提供することを課題とする。

【解決手段】本発明は、食習慣があり安全であるウコン抽出物を有効成分とするL-カルニチン合成系酵素遺伝子転写促進用組成物、すなわち、生体内でのL-カルニチン合成を亢進する効果が期待できる組成物を提供する。本発明の上記の組成物は、安全であり、生体内でのL-カルニチンが関連する生体機能を回復、増強に有効である。詳細>> J-tokkyo 特開2007-131603

胎児および成体からの、中枢神経系由来の神経幹細胞の単離および濃縮

2007年12月29日 | 細胞と再生医療
【発明者】 岡野 栄之 スティーブン ゴールドマン
【出願人】 科学技術振興事業団 コーネル リサーチ ファンデイション インク.
 Cornell Research Foundation Inc.
【出願日】 平成12年1月5日
【公開番号】 特開2001-292768【公開日】 平成13年10月23日

【要約】 【課題】中枢神経系における細胞型の混合集団から多能性神経系前駆細胞を分離する方法の提供。

【解決手段】神経系前駆細胞でのみ機能し、他の細胞型では機能しないプロモーターを選択し;細胞型混合集団の全ての細胞型に、上記プロモーターの支配下で蛍光タンパク質をコードする核酸分子を導入し;混合集団内の神経系前駆細胞のみに上記蛍光タンパク質を発現させ、他の細胞型には発現させず;混合集団の細胞の中より蛍光を発する細胞として神経系前駆細胞を同定し;そして、細胞型の混合集団から蛍光を発する細胞を分離し、その際、分離した細胞が神経系前駆細胞に限定される;ことを含む方法。 詳細>>J-tokkyo 特開2001-292768