パピとママ映画のblog

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皇帝と公爵 ★★★

2014年02月13日 | アクション映画ーカ行
『クリムト』などで知られる鬼才、故ラウル・ルイスが抱えていた生前最後の企画を実写化した歴史ドラマ。ナポレオンが率いるフランス軍とウェリントン将軍が指揮を執るイギリス・ポルトガル連合軍の激突と、その裏で繰り広げられるさまざまな人間模様を映し出す。ベテランのジョン・マルコヴィッチをはじめ、『さすらいの女神(ディーバ)たち』などのマチュー・アマルリック、フランスの名女優カトリーヌ・ドヌーヴら、きらびやかなキャスト陣が結集。彼らが繰り出す重厚で濃密なストーリーが、ドラマに一層の奥行きと深みを与えている。
あらすじ:1810年、ナポレオンの命令でポルトガル侵攻を目指すフランス軍だったが、集中砲火による制圧に失敗して撤退を余儀なくされる。さらに略奪や破壊を尽くしたために市民から物資補給の協力を得られず、マッセナ元帥(メルヴィル・プポー)は体制の立て直しを図りながら砂漠を敗走する。一方、ウェリントン将軍(ジョン・マルコヴィッチ)が率いるイギリス軍は、1年前からフランス軍撃退のために80キロメートルに及ぶ要塞「トレス線」を建設していた。

<感想>2011年に他界した欧州ではファンの多い鬼才、ラウル・ルイス最後の企画を、妻であるバレリア・サルミエントが監督をした歴史ドラマである。19世紀のナポレオン戦争を背景に、戦地となったポルトガルの民衆の姿を描いている。
皇帝ナポレオンにとっての最大の敵、それはロシアの冬将軍ではなかった。ナポレオンにとっては、海を越えた隣の大英帝国にあってことごとくナポレオンを破り続けたイギリスの将軍ウェリントン、つまり初代ウェリントン公爵こそ最大の宿敵だったのである。

この歴史ドラマは、皇帝ナポレオンの裏をかいて勝利し続けた大英帝国の知将ウェリントンが、ポルトガルの地に仕掛けたナポレオン包囲網ともいうべきウェリントン・ラインをめぐる歴史物語でもある。農民たちを招集して広大な広陵地帯に防護壁を作り、フランス軍を撤退させるべく作戦にでた。

夜明けに、大群を率いたフランス軍のマルボ男爵マチュー・アマルリックは、恐れをなして撤退し、陣地にカカシに軍服を着せていかにもこれから戦うとばかりにする作戦も面白い。立派な歴史絵巻であり、配慮も行き届いているが、何せ大味で、中盤はダレるしそれに画面は暗いときてるし、締まりのない映像につい居眠りをしてしまった。

戦争による惨禍を、考えられる限りすべてぶちこんだといった作品である。しかし、戦争映画というより、戦場でのフランス軍とイギリス軍の戦いの様子はあまり見せない。悲惨な目に遭うのは兵士ばかりではない。銃後の女たちであり子供であり、農民であるというメッセージはよく伝わってると感じた。
女性監督が、この大作を撮りあげたことだけでも凄いことだと思います。キャストの豪華さは半端じゃない。制作パウロ・ブロンコの力も大きいのだろうが、尊敬するルイスのため、彼の作品の常連だったメルヴィル・プポーを始め、マチュー・アマルリック、フランスの名女優カトリーヌ・ドヌーヴ、イザベル・ユベール、キアラ・マストロヤンニら豪華俳優陣が集結。

ミッシェル・ピコリが演じたスイス人の商人がいますが、現在でもそうであるように、スイスはヨーロッパであると同時にそうではない。大邸宅での豪華な晩餐に、この戦争に巻き込まれないのに不思議なきがした。監督は特別にシーンを追加したそうです。
物語は、攻め込んだフランス、迎え撃つイギリス、ポルトガル連合軍の両方の立場を描き分ける。特定の主人公がいない群集劇の難しさを、うまく処理したものである。

特に、戦争映画のなかでも、戦場に行った女性に目をむけたものは、圧倒的に少ないと思う。その意味で、行軍シーンがメインの本作で従軍しながら、婚活にいそしむ英国人の令嬢クラリッサの、キャラクターは印象的ですよね。彼女がさらっとカミングアウトする内容がまた衝撃です。
それに、夫を探して戦場へきたアイルランド人妻のモーリン、夫が戦死したことを聞き埋葬を願い、そこで歌を歌う気丈さ。彼女に惚れるフランス軍の兵隊もいる。しかし、モーリンのお腹には死んだ夫の子が宿っており、せっかくのプロポーズも断ってしまう。
もう一人、夫とはぐれた妻が、自分を探し回る彼をよそに、新しいフランス軍人を見つけてしまう。さらには、戦渦の街で一人傷ついた兵士を匿う気丈な未亡人フィリッパなどなど、それぞれが戦争という望みなどしなかった厄災のなかで、自らの生をまっとうさせる。その強さこそがこの映画の隠された魅力となっているのでしょう。
でも、この映画の中心にあるのは、戦争によって侵略された土地の悲劇と悲惨なんですよね。
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