パピとママ映画のblog

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ほとりの朔子 ★★★

2014年02月14日 | は行の映画
『ヒミズ』などの二階堂ふみを主演に迎え、『歓待』などの深田晃司監督が放つ青春ドラマ。海辺の町を舞台に、受験に失敗したヒロインが過ごす2週間をみずみずしいタッチで描き出す。魅力的な叔母を鶴田真由が演じ、主人公が淡い恋心を抱く相手を『人狼ゲーム』などの太賀が好演。第35回ナント三大陸映画祭グランプリと若い審査員賞をW受賞した味わい深い物語が胸にしみる。
あらすじ:浪人生の朔子(二階堂ふみ)は叔母の海希江(鶴田真由)の提案で、旅に出た伯母(渡辺真起子)の家で2週間過ごすことに。彼女は海希江の幼なじみの兎吉(古舘寛治)やその娘の辰子(杉野希妃)、福島から避難してきたおいの孝史(太賀)らと出会う。のどかな場所で、朔子は仕事に集中する叔母をよそに短い夏休みを満喫していた。

<感想>「ヒミズ」「地獄でなぜ悪い」で悪女的な役を演じている二階堂ふみの、子供から大人への女として目覚めるというか、こうした抑えた演技を見ると、彼女の上手さがよくわかる。それに、叔母の海希江を演じた鶴田真由も、知的で余裕のある大人の女として、新たな魅力を引き出されていると思う。
等身大であろう18歳のヒロインを自然体で演じている、19歳の二階堂ふみがこれまた素晴らしく、水着姿や夏服の肌が露出している色っぽさとか、役どころ的にも非常にレアなのではと感じた。
海辺の田舎町を訪れた朔子の日記形式になっているので、最初はスローテンポがじれったく感じて面白くない。
だが、画面を包み込む柔らかな光がまた美しい。大学受験に失敗した朔子の宙ぶらりんな気持ちや、原発事故の福島から疎開して居場所のない孝司とのやり切れなさに共感した。大人の複雑な人間関係と恋愛模様が、分かってくるにつれてドラマが動き始めるところもいい。

喜劇かと思うような、古舘寛治が演じている兎吉が支配人をしているリゾートホテル。そこが、大震災や原発事故のあおりをくらって寂びれてしまい、ラブホテルになっているところ。そこへホテルのオーナーとおぼしき中年のハゲ男が、高校生や中学生を連れ込んで援交よろしく励む姿に、BGMの曲が毎回決まった曲をかけないと励みにならないというバカバカしさ。そこでバイトしている孝史が、中学生を連れ込んだ時に、「こんにちは赤ちゃん」の曲を流して笑いを取るシーン。
それに、叔母の鶴田真由演じている海希江が、東京の大学の教授と不倫をしており、夏休みということで自分が来ているところへ呼び出す。それが、鶴田真由が忙しくて相手にしないので、地元の女子大学生の兎吉の娘の辰子(杉野希妃)と関係を持つハプニングもある。
映画の中で、辰子はもしかして海希江が若き頃に、兎吉と関係を持ち妊娠をして産んだ子供のような口喧嘩のシーンがある。そうすると、大学教授と不倫している海希江は、母親として心穏やかではないだろう。

のどかで美しい風景の中の坂道を切り取り、朔子の人生が平坦でないことを推測させている。地味に静かに、結構なことが起きてゆく。親の田舎へ遊びに行って、身内の秘め事をのアレコレを知ってしまった8月後半のお盆過ぎの夏。そうした郷愁感や、孝史とカケオチごっこみたいな真似をして、大人たちに心配をかける場面もある。
そんな微妙な空気感の醸し方に加えて、田舎と田舎者のいいところと、嫌なところを絶妙な配分でサラッと、べったりと描いていく監督の、心地よくてザワつかせる手腕が見事です。
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