パピとママ映画のblog

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THE GUILTY/ギルティ★★★★

2019年04月13日 | アクション映画ーカ行

緊急通報指令室という限られた空間を舞台に、電話から聞こえてくる声と音だけを頼りに誘拐事件の解決に当たるオペレーターの奮闘を、極限の緊迫感と予測不能の展開で描き、サンダンス映画祭観客賞をはじめ各方面から高い評価を受けたデンマーク製クライム・サスペンス。主演は「光のほうへ」のヤコブ・セーダーグレン。監督は本作が長編デビューとなる新鋭、グスタフ・モーラー。

あらすじ:捜査中のトラブルにより現場を外された警察官のアスガー。今は緊急通報指令室のオペレーター勤務で、元の職場への復帰を目前にしていた。そんな彼がある夜受けた通報は、今まさに誘拐されているという女性からのものだった。彼女の名はイーベン。走行中の車の中から、携帯電話で掛けていた。その電話から聞こえる声と音だけを手掛かりに、犯人の特定とイーベンの救出に全力を尽くすアスガーだったが…。

<感想>事件解決のカギは電話の声だけ。88分、試されるのはあなたの<想像力>なにせ登場人物はほぼ一人、室内での電話からの声と音だけを頼りに誘拐事件の解決に挑む男の姿を、ほぼリアルタイムで描く新感覚のワンシチュエーション・サスペンス。

2018年のサンダンス映画祭で「search/サーチ」と並んでワールドシネマ・ドラマ部門の観客賞を受賞するなど世界中の映画祭で高い評価を受け、すでにハリウッド・リメイクも決定している。

物語の大部分は緊急指令室にかかってきた電話の通話のみを通して展開し、ほとんど唯一の登場人物となる主人公の警官アスガーを、スウェーデンのベテラン俳優ヤコブ・セーダーグレンが演じている。声の出演では、イェシカ・ディナウエ、ヨハン・オルセンらが参加。監督・脚本を手掛けたのは、本作が長編デビューとなる新鋭グスタフ・モーラー。

物語はほぼリアルタイムで進行し、劇中で交わされる会話は電話でのやり取りのみ。観客は視覚情報の中で、電話口の微妙な音から、事件について想像力を働かせることになる。人間が聴覚から得られる情報は、全体のわずか11%。その限界の中で“見えない事件”を解決できるのか?・・・このスリリングな状況が緊張と興奮を生み出すことになるとは。

「誘拐されている、助けて」という女性からの通報。今まさに進行中の事件でありながら、その場所も詳しい状況も分からない。唯一の手段である関係部署との連絡を取り、救出に尽力するアスガーだったが、・・・。

設定だけでも充分に魅力的だが、映画を観て驚くのは、緊急通報指令室から一歩も外へ出ることなく、電話のやりとりだけで物語が進むことだ。被害者の女性も誘拐犯も、声だけで一切姿を見せない。

普通の映画であれば、警察と被害者を交互に映して緊迫感を高めるところなのだが、本作では、相手が見えないことでリアリティを増しきて、きめ細かな演出によって手に汗を握るサスペンスへと昇りつめるのだ。

助けを求める女性の声、その背後から聞こえる音。音声のみで電話の向こうの状況を想像させ、観る者を巧みに誘導していく。

そして、物語の進行に大きく関わってくるのが、主人公アスガーが抱えている“ある事情”なのだ。物語の進行と共に明らかになるその詳細は、というのは誘拐事件の犯人だと信じ込んでいた彼女の夫、犯人ミケルは、元妻イーベンに執着心を抱くストーカーではなかったのだ。

電話の主の被害者という彼女は、イーベンという名前で精神に異常をきたしていて、赤ん坊をナイフで切り刻んでしまったのだ。それを知った元夫ミケルがイーベンを精神病院へと連れて行こうとしていたというのが真相なのだった。だから、アスガーと観ている観客は、このどんでん返しのような情報に驚いてしまう。

ちょっと前に観た『ジュリアン』のモンスターのような父親の姿だったのだが、ここでは誘拐されたというイーベンの病に、憔悴しきった哀れな男が犯人の夫ミケルなのだから。電話の話す声と状況音だけの情報で、事件のあらましを勝手に想像していたアスガー。

家にいる子供、女の子へ電話を掛けて、怯えている娘に2階にいる赤ん坊の様子を尋ねるアスガー。すると赤ん坊はナイフで切り刻まれているといって泣きじゃくる。まさか、元夫が赤ん坊を刺し殺したのか?・・・いいえ違うのだ。落ち着きを取り戻したイーベンが言うには、赤ん坊の身体に蛇が棲みついており、泣き止まないという。それで、赤ん坊の身体を切り裂き中から蛇を取り出したという母親のイーベン。この供述によりイーベンはどうやら精神を病んでいるのが分かる。

それに、オペレーターのアスガーも、実は罪のない人を銃殺してしまい、その罪で明日裁判所へ行くと言うのだ。アイデアを生かした巧妙な語り口と濃密なドラマ、緊迫感を盛り上げる演出も絶妙。

同じ音声を聞いているのに、無線の向こう側の情景が観る者の頭に、しっかりと浮かび上がってくるのはたいしたものである。というわけであわてふためくものたちの会話に聞き入ってしまうわけだが、聞く人によって思い浮かべるものが異なるという点に惹かれた。楽しませてくれて、サスペンスがあって、でも人生というものにも触れ、観客に深いことを考えさせる作品であることも。

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