パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

夜明けの祈り★★★★

2017年10月27日 | アクション映画ーヤ行

 42回セザール賞で、作品賞、監督賞などにノミネートされた、実話をベースにしたドラマ。第2次世界大戦終結後のポーランドで、ソ連兵からの陵辱が原因で妊娠してしまったシスターたちの苦悩と向き合ったフランス人女性医師の姿を追う。監督は『ボヴァリー夫人とパン屋』などのアンヌ・フォンテーヌ。『待つ女たち』などのルー・ドゥ・ラージュ、『ハミングバード』などのアガタ・ブゼク、『イーダ』などのアガタ・クレシャらが出演する。

あらすじ:第2次世界大戦の傷痕残る、194512月のポーランド。赤十字の医療活動で慌ただしい毎日を送っていたフランス人女性医師マチルド(ルー・ドゥ・ラージュ)は、一人のシスターから助けを求められてある修道院に向かう。そこで彼女が目にしたのは、ソ連兵によって妊娠させられた7人のシスターだった。信仰と現実の間で板挟みになっている彼女たちと、宿している命を救おうと決意するマチルド。何とか時間を作ってシスターたちと向き合うマチルドだったが……。

<感想>実在の女性医師をモデルにした重厚なドラマであり、6月に開催されたフランス映画祭で観客賞を受賞した話題作である。1945年、終戦直後のポーランドの修道院。ソ連に占領されたポーランドの村で、ソ連兵に襲われ身ごもった修道女たちの命を救う赤十字の医師の姿を、じっくりと描き、その高潔な姿を浮き彫りにしていく。

彼女たちを救おうと奮闘する女医。その障害物が修道院長であり、カトリックの戒律であるというところが興味深いですよね。戦時中より戦後、暴力により信仰の方がより過酷だったという皮肉。そこにキリスト教批判、というよりも、神に仕える者、その中にある偏狭さへの抗議が嗅ぎ取れる。

いくつかある修道院映画の如く、この作品も静謐なたたずまい。そこに人間の血の温もりをさらりと通わした演出ですが、少し型にハマリ過ぎな物足りなさを感じます。

ですが、被占領国の女性であり、なおかつ神に仕える修道女という立場から、すべてを耐え忍び闇に葬らざるをえなかった彼女たちの姿を通して、この映画はヒューマニティについて、見る者に大きな問いかけを投げかけるのであります。

何故なら、残念ながらここに描かれている問題は、普遍的なものであり、今も世界のどこかで起こり得る悲劇と言えるのだから。この時代では、宗教的な戒律もあり中絶は出来なかったのでしょう。それにしても、修道院長が生まれた子供を自分の手で殺して、闇に葬るということが衝撃でしたね。

女医のヒロインに扮したルー・ドゥ・ラージュは、フランスではただいま上昇中の若手の女優さん。どこか純真さと気品さを感じさせる横顔が若きころのイングリッド・バーグマンを彷彿とさせる面影である。

そんな彼女の瑞々しい魅力や、修道女たちの凛とした姿、寒々しいポーランドの風景を見事にとらえているのが、フランス映画界を代表する撮影監督カロリーヌ・シャンブティエのカメラ。翻案・台詞パスカル・ポニゼール。

J・L・ゴダールやレオス・カラックス作品で知られる彼女が紡ぐ映像は、戦後の混乱期ポーランドの、雪に覆われた修道院にカメラを向ける。修道女たちを襲った悲劇は、筆舌に尽くしがたいほどに、本作に一層の清廉さを付け加えていると思います。

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