パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

焼肉ドラゴン★★★・8

2018年06月27日 | アクション映画ーヤ行

「愛を乞うひと」「血と骨」などの映画脚本でも知られる人気劇作家・演出家の鄭義信が、数々の賞に輝いた自身のヒット舞台を、自ら初監督を務めて映画化した感動の人情コメディ。大阪万博前後の関西の下町を舞台に、小さな焼肉店を営む在日コリアン一家が、時代の波に翻弄されながらも逞しく生きていく姿を笑いと涙で綴る。出演は真木よう子、井上真央、桜庭ななみ、大泉洋らに加え、両親役には韓国の名優キム・サンホ、イ・ジョンウン。

あらすじ:大阪万博が目前に迫り活気溢れるとある地方都市の路地の一角。第二次世界大戦で左腕を失った龍吉は、故郷の済州島を追われて来日した英順と再婚し、ここで小さな焼肉店“焼肉ドラゴン”を開業し、4人の子どもたちを育てるために身を粉にして働いてきた。そんな中、中学生になった末っ子の時生は学校でイジメに遭い心を閉ざしてしまう。一方、次女の梨花は、夫・哲男が幼なじみでもある長女・静花への恋心を今も捨てきれずにいることに苛立ちを募らせていくのだったが…。

<感想>舞台演出家としての鄭義信には、“鄭三部作”と呼ばれる在日コリアンの歴史をたどった家族劇がある。「焼肉ドラゴン」「たとえば野に咲く花のように」「パーマ屋スミレ」と、上記の作品では、戦争、政治、経済の荒波に否応なく巻き込まれる市井の人々の逞しさを描いて来た。戯曲版「焼肉ドラゴン」は日本の新国立劇場の10周年、韓国の芸術の殿堂20周年の記念に共同制作され、その後も再再演されたもの。映画の舞台は、大阪万博開催中の関西のとある町。モデルは伊丹空港近隣の国有地にあった集落ですが、姫路城の外堀の石垣のある場所に、戦後、土地を持たない人たちが勝手にバラック小屋を建てた特殊な町。

映画では“焼肉店ドラゴン”を営む父親、龍吉のセリフの「この土地は醤油屋の佐藤さんから買ったんだ」が父親の口癖でした。少年時代の末っ子の時夫は、バラック小屋の屋根に上がり、夕焼けを見上げては、そこで暮らす大人たちを「どうしようもない人だ」と見ていた。しかし、大人になって事情が理解できるようになり、自分だってだらしない人間だと自覚することで、あの町の人たちの愛すべきところや、それぞれの人生や生活の形が分かるようになってきたのだ。

この焼肉ドラゴンでは、三姉妹が主人公であり、長女が足に障害持つ設定や、一人の男性をめぐる長女と次女の関係など、重なり合うエピソードが面白い。

長女・静花には真木よう子が、美人で勝気な性格で店を切り盛りしている。店に来ている客にプロポーズをされ、前から好きだった哲男と、その相手の男ハン・ドンギュと、やかんに入った酒(マッコリ)を「ご返杯!」と言いながら次々と飲み干すシーンでは、本物の酒を呑んでいるわけないと思いつつも、何倍もお代わりをして飲むのに、最後には吹き出してしまう哲男。

次女の梨花・井上真央が、熱いテンションで大声で喚き散らすシーンとか、哲男と結婚するという日に、二人で大げんかするシーンもある。

そんな哲男を演じた大泉洋は、短気で喧嘩っ早くて、非常に直情的。その裏には1970年という高度経済成長期に浮かれる日本で、在日韓国人として生きる厳しい現実と、そして次女の梨花と結婚しながらも、その姉・静花への想いを断ち切れないという複雑な内面も抱えている。

哲男は小さい頃からの幼馴染である長女の静花に想いを寄せているのだ。そのことで、ひと悶着があり、どうして、静花が足に障害を負ったのかが明かされ、二人は相思相愛の仲なのに、はっきりと言い出せない哲男の男としてのずるさがある。まぁ、最後には二人が一緒になるのだけれど。

三女の美花は、キャバレーに働いていて、店のバーテンダーと恋仲になるも、その男には、歌手の年増の女がいるのだ。この女同士の口喧嘩も、あの時代ならではのもの。それでも、妊娠をして結婚をする三女夫婦。

まず、「焼肉ドラゴン」が国有地の上に建つゆえ、常に立ち退きの問題が付き纏う。店にはいろんな国籍の人間が足を運び、同じように食べて笑い、酒を飲んでは喧嘩しながらも仲良く暮らしている。

近くに川が流れており、トタンの廃材で建てたバラック小屋が一列に並んでいる。自転車にリアカーが荷物を運ぶのに便利で、店主の龍吉・キム・サンホは戦争で故郷(朝鮮)と左腕を奪われながらも、常に明るく前向きに生きており、妻の英順・イ・ジョンウンが、下働きをしながら一家を支えている。

後半部分で、龍吉・キム・サンホが済州島四・三事件について語るシーンがあり、かなりの長セリフなれど、日本語をよくマスターして上手かったです。

悲しい話ですが、冒頭でナレーションをしていた末っ子の時生は、有名私立校に通っていたが、韓国人であるが故のいじめに耐えられずに自殺してしまう。過去も現在も、子供たちのイジメによる自殺があることは、大人たちがもっとしっかりと子供たちに目を向けて助けてあげないといけないのではないかと思います。

やがて万博も終わり、立ち退きを迫られていたこの家族にも、それぞれに旅立つ日がやってきました。哲男と静花は北朝鮮へ、梨花たちは韓国へ、美花は妊娠し日本に残ることになる。どこへ行くわけもなく、リアカーに荷物を乗せた父は、母をリヤカーに乗せこの地を旅立って映画が終わる。

多くの韓国人たちは在日韓国人のことを知らなくて、在日のイメージも大金持ちか貧乏人の二極しかない。同じ在日コリアンの家族の話でも、「血と骨」は強い人たちの話であり、ギラギラとしているが、こちらの「焼肉ドラゴン」は和やかで柔らかい。どんな人生であろうと受け止めて、どっこい生きている、そんなたおやかな人たちの物語。

龍吉が言う、“たとえ昨日がどんなでも、明日はきっとえぇ日になる”というセリフに尽きる映画だと思いますね。どんなに辛い過去があっても、明日を信じてもがき戦い続ける家族のお話。観た方が“明日もがんばろう”って思える作品です。

018年劇場鑑賞作品・・・122アクション・アドベンチャーランキング

 

 映画に夢中

 トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ

 トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/29899810