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パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

夢売るふたり      評価★★★

2012年09月14日 | や行の映画
『ゆれる』や『ディア・ドクター』など、人間の深層心理に肉薄し、人間の心の闇をえぐり出すような作品で定評のある西川美和監督作。ある夫婦が火事で全てを失った事から始めた結婚詐欺を繰り返すうちに、本人ですら自覚していなかった己の深層心理と、お互いが知らなかった相手の本性に気づいていくさまが、可笑しくて恐ろしい。物語の軸となる夫婦を演じるのは松たか子と阿部サダヲ。松演じる気立てのよい妻が、心の奥に眠っていた悪意に目覚める瞬間の背筋が凍るような恐ろしさは、彼女の演技力の賜物だ。田中麗奈や鈴木砂羽、木村多江らが結婚詐欺の“対象”となる女たちを演じるという、キャストの豪華さも本作のウリのひとつ。

あらすじ:東京の片隅で小料理屋を営む貫也と妻の里子。店は小さいながらも繁盛していたが、調理場からの失火が原因の火事で全てを失ってしまう。絶望して酒びたりの日々を送っていた貫也はある日、常連客だった玲子と再会、酔った勢いで一夜を共にしてしまう。その事を知った里子は、結婚詐欺で金をだまし取る事を思いつく。店を再開するための資金を稼ぐために貫也は、出版社OL、重量挙げ選手、デリヘル嬢などに言葉巧みに次々と接近する。(作品資料より)

<感想>松たか子と阿部サダヲが結婚詐欺を働く夫婦を演じた異色ラブ・ストーリー。西川美和監督のオリジナル脚本で、女性を騙すうちに人生を狂わせていく夫婦と、だまされる女たちの心の闇を浮かび上がらせる物語。
こんな夫婦なんて現実にはいないだろう。だが、この作品の甘い言葉に翻弄され、結婚詐欺にだまされる女たちの弱さ、その夫を操る妻の本音も嘘も全て受け入れて、愛憎ともとれる感情を無表情に凛としたたたずまいで表す松たか子の演技が上手い。

夫役の阿部サダヲの演じる結婚詐欺師も、言葉巧みに女を騙し金を奪い取る。それもこれも、妻の手の平で転がされているような感じがしてならない。この世で一番強くて怖いものんは、やっぱり女なのかもしれない。
最後に夫がスカイツリーのタワーの見える場所に、小料理屋を開く予定だったのが、最後の女、木村多江の家族に自分の未来の家族が見えのめり込んで行く。妻の里子には、その女の亡くなった夫の保険金目当てにといっていたけれど。

そこへ探偵の鶴瓶が訪ねてきてもめて、そこに女の息子が包丁で後ろから鶴瓶を刺してしまう。警察がくるが、男の子を庇って自分が刺したと罪を全面的に認めて捕まってしまい、結婚詐欺が明るみになる。
やはりこういうことって、いつかはバレてしまうのに。それに、このシーンの前に、妻が夫に嫉妬をして相手の女か、夫を殺そうと包丁を持って階段を下りる時、雨で滑って包丁を落としてしまう。その階段の下にあった包丁が、夫婦のこれまでの関係を終わらせるけじめとなったのかもしれない。
上手い具合に結婚詐欺を繰り返してきた夫婦だが、二人の関係はすでに壊れていたような、冷たい溝が出来ていた気がする。夫は刑務所の厨房で働き、カモメの鳴き声が聞こえ、妻は地方の漁港で働きながらカモメを見る。何かこの二人、また寄りを戻して夫婦関係を繋げることが出来そうな予感で終わるのだが。
監督の以前の作品で出演していた「ディア・ドクター」の笑福亭鶴瓶が、背中に刺青してヤクザまがいの私立探偵役で、「ゆれる」の香川照之は、最初に不倫していた上司の役で死んでしまい、その弟の役と2役で出演。
騙される女に木村多江、田中麗奈、鈴木砂羽など豪華な脇役陣が良かった。その中でも、ソープ嬢の元彼の男で、いきなりドアを蹴り破って部屋へ入って来る暴力男。もしかして伊勢谷くんでは、とやっぱり的中。彼の大ファンだけにちょっと勿体ない役だと、出なくてもよかったのに、やはり監督の作品に出たかったのよね。
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