パピとママ映画のblog

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武士の献立 ★★★.5

2013年12月16日 | は行の映画
君主とその家族の食事をまかなう役割を担うことから「包丁侍」と呼ばれた武士の料理人の家に嫁いだ娘が、夫や家族と絆を深めていく姿を描くヒューマンドラマ。
御算用者(経理係)として藩に仕えた「そろばん侍」の家族生活を描いた「武士の家計簿」(2010)に続き、江戸時代の加賀藩を舞台に描くシリーズ第2弾。優れた味覚と料理の腕をもつが、気が強いために1年で離縁されてしまった春は、加賀藩の料理方である舟木伝内に才能を見込まれ、舟木家の跡取り息子・安信と再婚する。安信は料理が大の苦手で、春は姑の満の助けも借りながら、夫の料理指南を始めるが……。春役は約8年ぶり映画主演となる上戸彩、夫の安信に高良健吾。監督は「釣りバカ日誌」シリーズの朝原雄三。
<感想>本作で、お嫁さんにしたい№1の座を揺るぎないものになった上戸彩。テレビドラマ「半沢直樹」での可愛い妻役が好評だっただけに、本作でも彼女が演じた春という江戸の女性は、私たち現代の女性にも好感がもてるはず。「本当はこんなふうになれたならいいな」と心から思うから。まさに女の鏡とは、春さんのことを言うのでしょう。

江戸の出戻り女性が、ひょんなことから、その類まれなる味覚と料理の腕を、加賀藩の由緒ある料理方に惚れこまれ、息子の安信の嫁にと懇願される。出戻りだからと断るも、根負けして承諾してしまう。
だが、安信は四つも年下なうえに、由緒ある包丁侍の跡取りにもかかわらず、からきし料理が下手だった。春にとって夫・安信を一人前にすることが、自分の妻としての務めだと考えている。料理下手な夫を決して見下すのではなく、自ら料理指南をしながら育てていく。安信の失敗をさりげなくフォローしたり、わざと料理勝負を仕掛けて、仕事への意欲を煽るなど、安信の性格を分かったうえでの機転の利かせ方や気遣いも心得ているようですね。

侍のくせに料理なんかとふてくされた年下夫を、やんわりと受け止めて「お勤めをそんなふうに言うものではない」と、たしなめる春の夫操縦法が見事です。
ここぞの一言だけに、安信はぐうの音もでません。そんな夫に「古だぬき」と呼ばれる春さん。心で泣いて笑い飛ばす健気さに胸をが熱くなります。
そうして、陰で行われた春の猛特訓により、安信の料理の腕はメキメキと上達し、昇進も決まり、これで一家安泰と胸をなでおろした矢先に、史実でも有名な「加賀騒動」が勃発。侍として刀の道に未練を残した夫に春は、・・・。

幼いころに両親を失い、一度は離縁を経験している春は、嫁ぎ先の舟木家を本当の家族だと思い、誠心誠意尽くすようになる。自分を見初めた養父の伝内や養母の満とも、心を通わせ、嫁として完璧な存在に。養父の舟木伝内には西田敏行さんが扮しており、養母には余貴美子が演じていて、お二方ベテランの粋で演じて上手いです。息子の安信には、高良健吾さんが扮しており、ちょんまげ姿に着物が似合うし、上戸彩ちゃんの鬘に着物姿も綺麗で夫婦役にぴったりでした。

一家のために自分ができることを優先的に考える春は、加賀騒動に巻き込まれた舟木家のピンチに、身を呈して家族を守ろうとする。台所で刀を研ぐ夫を見て、妻として愛する舟木家の両親、そして安信にも死んでもらいたくない思いが、春を奮い立たせ刀を持ち夜の金沢を彷徨い歩く姿に胸が痛みます。
そこへ、舅の伝内が心臓発作で倒れ、お城の饗宴料理を任された舟木家として、父親に代わって無事役目を果たすことができたのです。
一時の激情にかられた行動かと思いきや、舟木一族の行く末を案じた春の真意に頭が上がらない。安信がついに包丁侍の大役を務めることになります。夫安信の、勇壮華麗なる、式包丁の作法。

さらには、夫・安信が心に秘めた想い人、親友と結婚した幼なじみの女性に想いを残していることを知りながら、黙って自分らしさを貫こうとする姿が健気です。舟木家を去り、能登半島の漁師小屋で飯炊き女として働く春。まさか、夫の安信が迎えに来るとは、嬉しくて抱きつく春に幸せが訪れます。
つらいことや困難があっても、くじけずに立ち向かおうとする春のタフさに拍手!ちなみに、夫の初恋相手には成海璃子が演じていますが、存在感がやけに薄くどうしたのって感じです。確かに、この時代の女性の立場は、親が決めた男と結婚しなければならず、嫁ぎ先で夫に仕えて家を盛り立てるのが女の務めなのでしょう。
武士の家とは言え、包丁侍とて立派な職業。引くところは引くが、武士の妻として出る所は出る。そんな春の行動に真の女の強さと美しさを感じずにはいられません。


加賀のお家騒動:劇中で安信が参加を試みる、大槻伝蔵の一派による前田士佐守直躬の暗殺計画事件。その背景にあったのが、加賀藩で起きたお家騒動の“加賀騒動”だ。6代藩主・吉徳の側近だった伝蔵が、密かに関係していた藩主の側室・真如院と組み、8代藩主毒殺を企てたと言われるもの。のちに、伝蔵を妬んだ前田士佐守直躬が捏造したものとされた。
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