パピとママ映画のblog

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はじまりのうた ★★★★

2015年04月11日 | は行の映画
第80回アカデミー賞歌曲賞を受賞した『ONCE ダブリンの街角で』のジョン・カーニー監督が、同作に続いて音楽をテーマにして放つヒューマンドラマ。恋人に裏切られた失意を抱えながらバーで歌っていた女性が、音楽プロデューサーを名乗る男との出会いを通して思わぬ運命をたどる。主演は『つぐない』、『プライドと偏見』などのキーラ・ナイトレイと『キッズ・オールライト』などのマーク・ラファロ。キーラが披露する歌声や舞台となるニューヨークの街並みや、人気バンド・Maroon 5のアダム・レヴィーンの出演も見どころ。

<感想>超低予算映画の「ONCE ダブリンの街角で」(07)で世界的ヒットを記録した監督ジョン・カーニーによる、期待の新作である。ここでは、ニューヨークを舞台に音楽と恋愛をテーマにしている。

あらすじ:ミュージシャンの恋人デイヴ(アダム・レヴィーン)と共作した曲が映画の主題歌に採用されたのを機に、彼とニューヨークで暮らすことにしたグレタ(キーラ・ナイトレイ)。瞬く間にデイヴはスターとなり、二人の関係の歯車に狂いが生じ始め、さらにデイヴの浮気が発覚。部屋を飛び出したグレタは旧友の売れないミュージシャンの家に居候し、彼の勧めでこぢんまりとしたバーで歌うことに。歌い終わると、音楽プロデューサーを名乗るダン(マーク・ラファロ)にアルバムを作ろうと持ち掛けられるが……。
音楽プロデューサーを名乗るダンだが、かつては成功したが、今では妻と子供にも、自分の設立したレーベルにも見捨てられたのだ。ところが、ある日のことバーで歌う彼女の歌を聴いて、その才能に惚れこみ、一緒にアルバムを作ろうと、話を持ちかける。

ここまで聞くと、なるほど失職中の往年のプロデューサーが新人シンガーを見つけ、その才能に賭けるという業界ものの定番を、壊れた同士が意気投合してアルバムは成功し、二人も恋に落ちて愛でたしめでたしなんだろうなぁと、予想してしまうかもしれない。ですが、そう簡単には進まないんですね。
キーラが本作で初めて挑戦したという歌の素晴らしさ、さすがのアダム・レヴィーンの演技のうまさに、音楽の発表の仕方など、物語の結末まですべてが少しずつ、我々の予想をいい意味で軽やかに裏切っていくのですから。

ニューヨークの各所で次々に繰り広げる無許可ライヴ・レコーディングは臨場感たっぷりで、まさに「世界中がステージ」という感じで最高。街角で商業レヴェルの録音をやってしまおうという発想が、デジタル化が進行した映画撮影と二重写しになるのが面白い。近所の子供たちの騒音を止める苦労や、逆に深夜の屋上で近隣住民の苦情などが活写される。

主軸の三人を始め、キャスティングがよいが、とりわけキーラの自然体が見事に生かされているのだ。それでいて、これ見よがしに奇をてらっているわけでもなければ、ストーリーが重すぎるわけでもない。キーラの演じるグレタも前向きでモダンな感じがした。非常にチャーミングで、何とも愛すべき作品に仕上がっていると思います。楽曲もポップで切ないキラーチューン揃いで、路上レコーディングのライブ感が生き生きと再現されているのだ。それに、全身音楽人間をマーク・ラファロが好演していていい。

これが映画初出演となる人気バンド・Maroon 5のアダム・レヴィーンだが、ステージに立った時のオーラはやはり圧巻で、弾き語りは鳥肌が立つほどだった。
こんなにも幸福な後味を味わえる作品も珍しい。それは単純なハッピーエンドということではなく、そこにともなう痛みも含めて、サントラが欲しくなってしまう。
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