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ばしゃ馬さんとビッグマウス ★★★

2013年11月14日 | は行の映画
『純喫茶磯辺』『さんかく』などの吉田恵輔による青春ラブコメディ。一心不乱にシナリオ執筆に励むものの芽が出ない女と、あまりシナリオを書いたことがないのに他者の批評ばかりする男が、シナリオスクールで出会ったことから巻き起こる騒動と恋の行方を、笑いと涙を交えながら映し出す。取りつかれたように脚本家を目指すヒロインのみち代を『インスタント沼』の麻生久美子が、大口をたたいてばかりの青年・天童を関ジャニ∞の安田章大が演じ、イタい者同士の掛け合いを繰り出し続ける。
あらすじ:次々と脚本コンクールに応募するものの、一次審査すらも通らない34歳の馬淵みち代(麻生久美子)。そんな彼女と同じシナリオスクールに通う26歳の天童義美(安田章大)は、自分の作品をほとんど書いたことがない割には、常軌を逸した毒舌で他人のシナリオを酷評する。そんな彼らが出会ってしまい、何と天童がみち代にほれてしまう。嫌味な自信過剰男だと自分を嫌うみち代に認めてもらおうと、ついにシナリオを書くことを決意する天童。意外な彼の真摯(しんし)な姿に、みち代も心を開き始めるが……。

<感想>こちらは、日本版のシナリオライターを目指して、夢を諦めない麻生久美子演じる“必死すぎるばしゃ馬”さんこと、馬淵と、安田章大演じる、“脚本を書かないビッグマウス”天童の苦悩と葛藤を描いたもの。アメリカの「オン・ザ・ロード」の作家ジャック・ケルアックが自身や友人をモデルにした自伝的小説を観た後なので、いかがなものかと思ったのだが、・・・。
『純喫茶磯辺』の吉田恵輔監督3年ぶりの新作となる本作だが、実は馬淵のモデルは監督自身だそうで、さまざまな映画賞に応募しながらも落選しまくり、行き詰っていた吉田監督の分身でもある。長年、夢を追い続ける人間の苦悩を、誰よりもしっているからこそのリアル感。
もちろん天童のモデルは、監督の旧知の仲である脚本家の仁志原了である。共同脚本のクレジットは「机のなかみ」以来、6年ぶり。

麻生久美子が演じる馬淵みち代が、シナリオを書きながらカップラーメンを用意したり、郵便を簡易書留にする冒頭のシーンから始まり、生活感があって引き込まれた。
馬淵と天童が通うシナリオスクールが舞台で、かつ本編中にも脚本うんぬんの話題が絶えずでてくるので、「じゃぁ、この映画自体の脚本はどうなの?」っていう意地悪な目線を持ちながら見てしまった。
課題で書いてきた互いの脚本の感想を語り合う馬淵や天童を含む、十数人の生徒たち。いい役者ばかり揃っているが、講師役の広岡由里子にはかなわない。「天童くん書いてきた」、と聞くやいなや「ああ、いや」と軽くかわす天童。他人の作品は厳しく評価するものの、自分はまったく脚本を書かない。愛すべきいい加減キャラは、まさに脚本家の仁志原了そのものらしい。

馬淵の友人で山田真歩が、プロデュ-サーとの打ち合わせを理由に遅刻して入ってくるのだが、どうやら彼女はそのプロデュ-サーと身体の関係があるようで、その後彼女の脚本がボツになってしまう。しかし、そんなことにもへこたれずに再度脚本の懸賞に応募して、最後には勝ち組の名乗りを上げる。
馬淵は構想を切り替えて、元彼が老人ホームで働いているのを利用して、ボランティアで介護師として働く。老人ホームでの出来事にラブストーリーを混ぜてって、そんなことは起きるわけもなく、徹夜の脚本書きに疲れ果て、老人ホームで寝てしまう。そんな時に起きてしまうアクシデント。元彼には怒られるし、中途半端な気持ちじゃ介護福祉なんてできるわけがない。困った子ちゃんである。元彼だって、俳優になる夢を諦めて現実的に介護福祉の仕事をしているのに。酔った勢いで復縁しようなんて甘いぞ。

故郷で同級生の結婚式に出て拍車をかけられ、自分は結婚なんて縁がないと諦めかけても、いつも傍にいるビッグマウスの存在に気が付かないのだ。実家は旅館をしており、父親には井上順が酸素マスクをしながら仕事をしている。
夢を叶えるのも相当難しいが、諦め時を決めるのもこれまた難しいのだ。夢を抱くことの素晴らしさだけを謳い、さらに見る者に夢を抱かせたまま現実を教えない、無責任な作品は無数に存在するが、こうした視線のものは中々見当たらなかっただけに、ヤラレてしまった。
それに、夢を降りることが惨めではなくて、それなりに得られるものがあることを伝える姿勢もいい。
戦後の高度成長期と違って、現在はいろんな分野で夢の実現が困難になっているようで、いくら頑張っても結果を出せないと負け犬のようになってしまう。だから、最後に書いて出した脚本がダメだった時、結果を出せないヒロインが愛おしく、夢をあきらめる勇気に共感してしまった。
だから、ばしゃ馬さんも、ビッグマウスもキャラクターとは裏腹に、分かりやすい困難や成功ではなく、よりありふれた夢と現実の奇跡を生きているように見え、じんわりと沁みてくるものがあっていい。まるで夫婦漫才のように激しい掛け合いを演じる麻生久美子と、駄目チャラ男を演じた関ジャニ∞の安田章大は、これまた上手い演技に今年最大の収穫であった。
それに、麻生久美子演じるヒロインの、大人へのシフトチェンジに失敗した女子っぷりを、際立たせる衣装がまた素晴らしくて、上品でした。
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