T医院で定期の検診を受けた後、石見津田駅で、益田行きの列車を待った。
無人駅となった構内の天上には、燕の巣がある。
その一つの巣に、親鳥が巣穴を覗き込むようにして止まっていた。(写真①)
巣の中は静かであった。
子燕のいる気配は、全く感じられない。
一体、親燕は何をしているのだろう?
巣の中に、何が起こっているのだろう?
親鳥は、巣の左端に止まって動かない。
卵を抱いている様子でもない。
私は駅舎のベンチに腰を掛け、巣を見上げて、ひとり眺め続けた。私の目には異様と感じられる光景に見とれて。
しばらくして、もう一羽が飛んできた。
と、一瞬、声を交わして、巣の右端に止まった。(写真②)
と同時に、それまでいた一羽は、入り口から外に飛び立った。
交代した一羽も、ただ巣を覗き込んでいるだけのように見える。
私の目からは、何をしているのか分からないし、目的も理解できない。
巣のなかでは、やがて雛となる卵が、刻々と変化を続けているのだろうか、と考えて見る。それを親燕のつがいが、交互に見守っているのか?
顔全体を嘴にして、親鳥の運ぶ餌を待つはずの子燕のいない巣は、空虚な静けさをたたえていた。
それだけに、親鳥の飛来するという行為が、妙に寂しくも感じられた。
私が乗る予定の列車は10分遅れで到着すると、無人の駅に放送が流れた。
乗客は私ひとり。
5、6回、同じ放送が、無機的に繰り返された。
結局、私は、20分以上、燕の巣を眺め続けることになった。
その間、左右に止まり場所を定めている二羽の燕は、数度交代を繰り返した。その都度、合図の鳴き声を交わして……。
厳粛な意味があるのかどうか?
二羽の燕の、行動の意味を解せぬままに、私は時間を計って、列車の到着するホームに出た。
雛のいない巣に、親鳥が交互に飛来する様を見たのは初めてだった。
雛鳥誕生のプロセスには、私の知らない世界が存在するのであろうか?
とにかく、私にとっては、不思議で不可解な出来事との遭遇であった。
①
②
無人駅となった構内の天上には、燕の巣がある。
その一つの巣に、親鳥が巣穴を覗き込むようにして止まっていた。(写真①)
巣の中は静かであった。
子燕のいる気配は、全く感じられない。
一体、親燕は何をしているのだろう?
巣の中に、何が起こっているのだろう?
親鳥は、巣の左端に止まって動かない。
卵を抱いている様子でもない。
私は駅舎のベンチに腰を掛け、巣を見上げて、ひとり眺め続けた。私の目には異様と感じられる光景に見とれて。
しばらくして、もう一羽が飛んできた。
と、一瞬、声を交わして、巣の右端に止まった。(写真②)
と同時に、それまでいた一羽は、入り口から外に飛び立った。
交代した一羽も、ただ巣を覗き込んでいるだけのように見える。
私の目からは、何をしているのか分からないし、目的も理解できない。
巣のなかでは、やがて雛となる卵が、刻々と変化を続けているのだろうか、と考えて見る。それを親燕のつがいが、交互に見守っているのか?
顔全体を嘴にして、親鳥の運ぶ餌を待つはずの子燕のいない巣は、空虚な静けさをたたえていた。
それだけに、親鳥の飛来するという行為が、妙に寂しくも感じられた。
私が乗る予定の列車は10分遅れで到着すると、無人の駅に放送が流れた。
乗客は私ひとり。
5、6回、同じ放送が、無機的に繰り返された。
結局、私は、20分以上、燕の巣を眺め続けることになった。
その間、左右に止まり場所を定めている二羽の燕は、数度交代を繰り返した。その都度、合図の鳴き声を交わして……。
厳粛な意味があるのかどうか?
二羽の燕の、行動の意味を解せぬままに、私は時間を計って、列車の到着するホームに出た。
雛のいない巣に、親鳥が交互に飛来する様を見たのは初めてだった。
雛鳥誕生のプロセスには、私の知らない世界が存在するのであろうか?
とにかく、私にとっては、不思議で不可解な出来事との遭遇であった。
①
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