ぶらぶら人生

心の呟き

海辺にいた若者、そして三毛猫

2007-09-03 | 散歩道

 9月を迎え、人々から見放されて寂しくなったはずの海辺に、昨日の朝、人の姿があった。海水浴客のために設けられた施設の前で、一人の若者が、腰掛けて海を眺めていたのだ。私は、ちょっと躊躇ったが、いつものコースを変えることなく、若者の前を通り、海岸の向こう端に向かって歩くことにした。
 海をみつめる若者の前にさしかかった時、若者はなんの衒いもなく、「おはようございます」と言いつつ頭を下げた。私もまた、挨拶を返し、「キャンプですか」と、言葉を足し、若者が肯くのをみながら通り過ぎた。

 浜辺の端から引き返したときには、さらに若者の数が増えていた。先刻の若者は、依然として、腰掛けたまま海を見ていた。私は咄嗟に、この若者が、再びこの日本海の、土田の海を眺めることはないのかもしれない、一期一会となるのかもしれない、そう思った。若者の海に注ぐ視線が、そんなことを思わせたのかもしれない。黙って通り過ぎるのも躊躇われ、「さようなら」を言う代わりに、
 「海水浴? …… 釣り?」
 と尋ねると、
 「ただ泊まっただけです。僕たち、ツーリングの途中です」
 と、若者は、施設の横に止めてあるバイクに目をやった。
 その方向に視線を向けると、バイクが数台置いてあり、施設に張られた個人テントも数個あることに、改めて気づいた。遅れて起きだした若者は、まだ眠そうな様子だった。
 神奈川から来たと聞いて、若者とはいえ、旅の疲れは否めないだろうと思った。

 あれは、大学生だったかもしれない。
 どんな順路で、幾日かけての旅かは聞かなかったが、夏休みの後半を、仲間と旅に出て、日常の生活からは得られない、貴重な体験をしているに違いない……。
 だが、若いからできることだな、そんなことを思いながら海辺を後にした。

 坂道にかかる手前で、この日もまた猫に出会った。
 前日出会った、あの涎掛けをかけた老猫と同じ三毛猫である。ただ年だけは若いらしい。私が近づいても全く平気で、コンクリートの上で幾度も身体を回転させ、背や腹を地面にこすりつけ、挙句には悠然と横たわった。(写真 2日)
 が、またすぐ起き上がった。傍の垣根のあたりに何か獲物でも見つけたのか、ものを狙う時の猫の姿勢になった。目だけで、チラと私の方も伺いながら。

 猫のことはすぐ忘れ、私は坂道を上りながら、ツーリングの若者に会ったことが契機となって、自分の過去を思い出していた。
 若いときにしかできない何かを、私もしてきたのだろうか、と。 
 これといった特別なことは思い浮かばなかったが、人生をふり返り、幾つかの岐路において、そのつど選択した道に、悔いはなかった。
 他人には、目標が低いと笑われるかもしれないが、わが人生に悔いなし、といった思いがよぎった。
 問題は、これからの余生である。ただ日々息災であれかし、そんなことを思いながら、上ってきた坂道の後方をふり向いてみた。
 そこにはもう、若者たちの姿も、猫の影も、見えなかった。 

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渋い花 (吾亦紅)

2007-09-03 | 散歩道
 Tさん宅へ、酔芙蓉を見に行った朝、庭に咲いていた「ワレモコウ(吾亦紅)」。(写真 9月1日)
 私は、この目立たない秋の植物が好きである。またその名も。
 名前の由来はいろいろあるらしいが、私は、<吾も亦(また)紅(あか)し>から来ているという説が気に入っている。<私だって紅い花よ、見落さないで!>と、控え目に自己主張しているのがいい。
 「吾亦紅」のように、自若の姿勢で、しかも自分を失わない生き方が好きなのである。
 実際には、花自体は、何の意思も持たずに咲いているだけなのだが……。

 「吾亦紅」には、「吾木香」や「我毛香」の漢字も当てられるようだ。

   吾も亦(また)紅(くれない)なりとついと出て  高浜虚子

 (追記 漢文の時間に、「又」との対比において、「亦」は「~もまた」の意味だと習ったことを、ふと思い出した。)
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フウセンカズラの花

2007-09-03 | 散歩道
 フウセンカズラ(風船葛)は、紙風船のように膨らんだ実をつけるのに、その花のなんと小さく可愛いこと! 実も涼やかだが、白い花にも涼味あり。(写真 9月1日)
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フウセンカズラ (風船葛)

2007-09-03 | 散歩道
 優しい葉をつけた蔓に、淡緑色の風船状の実が、幾つもぶら下がっていた。じつに涼やかで、涼感を誘う眺めであった。
 その植物は、Tさん宅の庭にあった。
 一度、実の姿を見た者には、とても記憶しやすい名前の「フウセンカズラ(風船葛)」。(写真 9月1日)
 北米南部の栽培植物で、ムクロジ科とか。
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