そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

自治体コモンの関与と新自由主義からの脱却

2023-10-05 | 新自由主義
東京移り、肩書を東京大学准教授、経済思想家と肩書を変えた、超ベストセラーとなった『「人新世の資本論」』の著者、斎藤幸平氏が新たな活動の場を持ち展開し始めている。上図『コモンの「自治」論』:集英社:1,700円+税、本書の出版はその一つでもある。オビに集英社シリーズ・コモン 創刊!とある。
コモンCommon とは、①共通の、共同の、②一般の、公共の、③普通の、平凡な、などという意味を辞書は解説する。
齊藤氏を含めて、同世代の気鋭6名の方が書かれている。中でも現在杉並区区長の、岸本聡子氏の、『<コモン>と<ケア>のミュニシパリズムへ』は秀逸である。「国家という権力は資本に近づいていく。・・国家の奉仕対象は、大企業や富裕層だけに傾いていき、99%の私たちは排除される」ようになり、コモンが国家と癒着した「儲け」の対象になってゆく。というのである。水道や郵便や石油など民営化する、新自由主義を強く否定する。
スペインやイタリアなどの実例を挙げ、地方自治体が地域と連携するなどし、グローバル資本のコモンへの参入を拒んでいます。このボトムアップ方式が、ミュニシパリズム(自治体主義、地域主権主義)と呼ばれるものである。
ミュニシパリズムは極右はもちろん、トップダウンの社会主義からも一世を画し、グローバル主義や競争の称賛とも与しないとしています。
「ここからなら変えられるかも」、という小さな自身の積み重ねがミュニシパリズムであるという。
社会学者の木村あや氏の「武器としての市民科学を」訴える。上からな科学称される専門家の基準や判断は、「無知」な市民に権威を持って説明されるが、我々は東電福島原発の事故で、科学者の虚言をまざまざと見せつけられた。
市民が自ら観察し、自らの手で可能な検査をすることで、科学を身近に置くことも出来るようになると、木村氏は説く。
藤原辰史氏の『食と農から始まる「自治」』は、戦前からの日本の産業、社会を論じた人物の自治論である。氏は後藤成卿の農本主義は大いに共感する。自然界の営みを重視したうえに、コモンとする食を中心とした社会の形成にあった。富の集中を非難する一方で、清貧主義ともとらえかねない部分もり、社会とのつながりを欠く面もあったとのことである。
斎藤幸平の著書が若い世代に驚異的に売れているのは、若者たちの近い未来への不安によるものと思われる。競争への不安、温暖化や自然破壊への不安、そして富の急速な偏在などである。加計学園など政権の不正行為に異議を持たない、政権に反発しないことで生き延びようとする若者たちの存在は、その一つの回答である。
基本であってもコモンを共有することで、新自由主義の波から救うことが出来るのではないかと、斎藤幸平は思想家の殻を破って、同世代の共感を受け活動を広げようとしているのである。本書のシリーズ化はその一つともいえる。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 辺野古基地建設と大阪・関西... | トップ | 札幌市が冬季五輪の誘致を実... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
陰湿な暴力を認知できぬ者は (ジジ)
2023-10-07 07:57:23
陰湿な暴力を認知できぬ者が、いくら理屈を述べても無駄である。認知できない暴力によってねじ曲げられても対処できない。何故、この国のエリートが尽くおかしくなっていったか?
最初は朝日新聞襲撃事件みたいな形で、まともに犯罪者側を取り締まらない形で言論が弾圧されていった。マスコミが〜とか言ってる馬鹿が居るが連中とっくにやられて骨抜きになっただけ。その後国会議員が殺されても鉄砲玉が逮捕されて、ちゃんちゃん。
大蔵省のおかしな形の解体。謀略だらけでも提供された腐った結論に導かれて、ちゃんちゃん。そんな国民だからエリート潰された時点で社会に対して盲目であり、誘導された通りに動く。ましてや末端の屑である私のような者にまで襲撃が来るまでやられている。
(例えばキャンプ場で100m以上離れた駐車場からの車のドアを閉める音と共に、こっちに置いた2mm厚の鉛が同時に騒音を立てるなど。同時に頭に異様な刺激あり。)
理屈の前に暴力を抑える前にそれを認知することさえ出来ない奴の理論など上滑りする。そこまで理解出来る人間が、今のこの国に、どれ程残っているやら。統治問題と当然暴力や謀略が山ほどある。だからこそ私は大嫌いなのですがエリートが既にやられてしまった国ですからね。そこから認識して立て直せない人は、無駄な努力ではないですか。あなたたちより遥かに優秀なエリートたちが次々やられたのだから、それを踏まえてない時点で…。
返信する
誤字訂正 (ジジ)
2023-10-07 08:24:34

>統治問題と当然暴力や謀略が山ほどある。

訂正
統治問題には当然暴力や謀略が山ほどある。

投稿にあたって、3つくらい投稿前に直しましたがまだ残ってました。不思議なくらい誤字が生じている。
頭をやられるとそそっかしくなる(拙速になる)ということもあり、一層付け込まれやすくなるので、緩い人は注意された方がいいかと思います。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

新自由主義」カテゴリの最新記事