

後先を見ないトランプが高関税をかけようとしている中国からの輸入品の規模は、600億ドル(約6・3兆円)で全体の1割になる。中国が同規模の報復を加えれば、中国側の統計で見ると、米国からの輸入品の約4割が対象になる。トランプが言う通りの規模になれば米中貿易戦争は激化し、中国だけでなく米国にも大きな打撃がでる。自国の打撃は全くない計算のトランプに二の矢はない。
トランプは更に1000億ドルの輸入製品を対象にすると述べ、今日中国の報道官はアメリカの一国主義を非難し、同額の品目を対象に高関税をかけると発言している。報復合戦は留まるところがない。
米国のナバロ通商製造業政策局長は報復について、「中国側はどう反応するか慎重に考えるべきだ。米国人はそうした反応を甘受しないからだ」と脅しをかけている。この発言はある意味的を得ている。アメリカ人に比べて、中国人など東洋人は耐えることに慣れているし、強いからである。
何より中国は習近平の独裁体制が強化されたばかりである。公的な私有財産は存在しない国家が、体制として動き出せばこれにかなうものがない。習体制は人権や私有財産などには無関心である。何よりも、ユーラシア大陸に厳然と存在し、地続きの中央アジア諸国に食指を伸ばし、経済協力体制を取り付けている。さらに、歴史的にピュア―な関係のアフリカに浸透している。
国内に反対者がいない習近平の中国は、こうした戦いに強い。
トランプには柔軟な政策が見当たらない。気に食わない政府の高官を一年で40人もの首切りをやっている。この米中貿易戦争は中国が勝利することになる。補完関係にある世界第1位と2位の大国の貿易戦争は目的を達成することがない。それで世界の貿易がどのようになるかは誰にもわからない。トランプがどこで身を引くかが焦点になる。