そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

不幸な家畜たちが世界を破滅へと導く

2015-04-25 | アニマルウエルフェアー
ファーマゲドン」フィリップ・リンベリー、イザベル・オークショット著野中香方子訳:日経BP社刊、2160円という本を読んだ。
表題の「ファーマゲドン」はファーム+アルマゲドンを合わせた造語である。農業がもたらす世界の破滅を意味したものである。
本ブログを私が立ち上げた最大の理由が、人と競合する穀物を大量に家畜に与えて、肉や卵や牛乳を商品化するシステムが、近代化と称して進行していることを、都会の消費者の方々に知っていただきたかったからである。畜産の本質は、人が食べることができないものや、廃棄されたものなどを家畜に与えて、人が消化できる食料を生産することである。しかし、現代の畜産は人と競合する穀物を大量に与えて公立を求め、家畜に苦痛を与え生産しているのである。まさに本書はその現実を世界にルポし報告している。
密閉された畜舎で、家畜は大頭数閉じ込められ、生産を強制されて卵を産み太って肉を作り、牛乳を生産する。家畜は苦痛の中で生涯を追える。安価になった畜産物が消費者に提供されることを、政治を握った市場経済は歓迎する。
しかし、人は肥満になり、栄養化の偏った肉はがんや心臓病などの代謝病の原因になる。大量の穀物投与は、畜舎周辺の環境を極めて悪くする。土壌や河川、そして地下水に海洋、空気さえも汚染する。
家畜たちに与えられる穀物は遠方から運ばれる。糞尿を還元する農地など周辺にないのである。
工業式農場が生産した肉に含まれる、不飽和脂肪酸はが極端に少ない。太陽のもとで自由に牧草を食べる牛、幸せな牛が生産する牛は3倍も多く栄養価も高いのである。このことは、卵にも牛乳にも同じことが言える。工業式農場は、大量の抗生物質や成長に関わるホルモンも与えられる。
驚いたのか、魚の養殖である。生殖能力のない3倍体の個体にして、成長期を過ぎても大きくなるようにしているのである。
魚の養殖で深刻な環境問題は、給与される餌の残滓によるものばかりではない。網を破って逃げた個体による、生態系の破壊が深刻なのである。稚魚や餌を食べる、季節に無関係に繁殖するなど、深刻な問題が起きている。

訳者のことがを紹介する。バタリーケイジ、クレート、ソウ・スト^ルである。バタリーケージは、僅かA4サイズの空間に飼われる採卵鶏は羽根も延ばすことなく生涯を終える。クレートとソウ・ストールは牛と豚を動けない、鉄の格子に閉じ込め肥育させる施設である。動けないため軟らかい肉が取れるというのである。
工業式農場の本質は、経済効率である。新自由主義が世界を席巻し、国家を動かしている。TPPに参入したり、アベノミクスなどと言うバカげた経済政策は、環境も食料も家畜のことも、消費者の健康のことも考えない目先の効率だけを考えた政策である。大きくすればいい、大量に生産すればいい、資本を掛ければいいという、人々や家畜の幸せなど微塵も考えないのである。
世界の農地の30%が家畜のために用いられ、その70%が先進国が消費している。工業式農場は、見せかけの経済学ではなく、自然の摂理で判断すれば極めて効率が悪い。原発同様に、環境への十分な配慮や評価を加えたり、次世代の負担を計算すれば、ハンバーガー一個は1万円するのである

こうした不幸な家畜が生産する畜産物を、安いという理由だけで購入し続ける消費者は、この実態を知らなければならない。不幸な家畜たちをなくすために、私たちは”家畜福祉”という考え方で、飼養基準を評価しランクを設けて少しでも幸せな家畜が増える運動を模索している。
コメント (1)
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