先月立ち上げた「北海道・農業と動物福祉の研究会」主催による、家畜福祉の実践農家ということで、旭川郊外のわずか4頭搾乳の酪農家の見学会に参加した。
農場名は「クリーマリー農夢」で、ホームページ で、自己紹介や販売品の案内をやっている。牧場主の佐竹さんが、僅か4頭の搾乳牛で営農できているのだろうか。彼は搾った牛乳の全量を、自家施設で加工販売を行っている。主に飲用乳が主体で、大都会旭川を抱えていることが大きい。飲用乳の顧客は、120戸ほどで農場が配達している。ホクレンには出荷していない。
低温殺菌の牛乳を戴いたが、癖がなく甘みが残る感じであった。佐竹さんの最大の営農理由は、牛が好きであることだそうである。
そのため牛にはそれぞれ名前を付けてあり、牛たちも自分の名前を知っていて反応する。牛を拘束するようなことは一切やっていない。牛舎の出入りも、牧草地に行くのも自由である。
牧草地は極めて貧相な草地である。佐竹さんは入植20年ほどである
が、一切農薬も化学肥料も使っていないし、前の人も農薬は使っていなかった。
雨水などでたまった池があるが、牛は水道水より好んで飲む。異物が少ないのではないかとのことである。購入飼料は思ったより多く、配合飼料に国産の小麦にビートパルプなどを与えている。購入する乾草はとても良質のものとは思えない。固く結実をしている。それでも牛は、牛舎にいる間は休まず、採食していいる。
4頭搾乳は、顧客に牛乳を配達するための必要量と、面倒見れる最大頭数ということである。
何よりも牛たちが健康そうで、毛つやも良く温和で常に反芻していた。草の量が多いのと、何のストレスもないのが解る。
国は攻める農業の号令の元、農業の巨大化を推進する。大規模化された農家の実態は何度もこのブログで書いているが、農家にも、牛たちにも、農地にも、環境にも負荷が大きくかかり、未来に大きな負の遺産を残すことになる。農家には何のメリットもない。
私の町は、日本最大の酪農の町である。平均飼養頭数は130頭である。クリーマリーの30倍である。農家は負債の返却に追われ、農作業に時間がとられ、家族との自由な時間もとれず、牛の個性など顧みることもない。
大型農家の牛たちは、大量の穀物を投与させられ、牛舎に閉じ込められて、とても健康とは思えない牛群である。国は農業の巨大化ばかりを推進して、消費者にこうした牛乳の提供を強制するのである。
健康で幸せそうな牛たちから搾られた牛乳こそ、本当の健康食ではないか。消費者はどちらの牛乳を望むのだろうか?
とても考えさせられる見学会であった。
左に<クリーマリーの乳牛たち>アップしました。