安倍晋三は幸運の持ち主である。戦後日本の政治史を見ていると、政治的混乱があると必ず自民党が勢力を回復する。多少の逆風があった時でも、治まれば必ず自民党が大きくなっている。
現安倍政権はその典型的な構造の中にある。野党がことごとく、混乱しまとまりがつかない状況になっている。
野党第一党の民主党は政権離脱後、烏合の政党の本質を露わにする。護憲にもなれない、かといって改憲派も説得できない。集団的自衛権すら反対できない。消費税に至っては、野田がアベノミクスに私が道を付けたと自慢する始末である。海江田は急速に支持者を左右から失っている。
維新の会は、取り込んだ立ち枯れ爺さんたちを追い出す羽目になった。分党という形の分裂である。橋下と石原の毒気が混ざり合うことがなかった。
みんなの党は分裂後、金銭感覚のないお坊ちゃん党首のお陰で存在感すら失っている。消滅する日も近いだろう。
出て行った結の党は、橋下と民主党の一部を取り込みたいであろうが、民主党がどれほど割れるかである。これらの政党は、結局は安倍政権の補完政党になり、公明党の座を狙うことになる。
公明党は政権内に居残る論理を模索している。平和が党是のはずである。既に政党として意味がなくなっている。
社民党は党首交代しても、前党首が目立ち党勢の拡大どころではない。共産党は地道な地域活動などで、党勢を拡大してはいるものの、小選挙区の壁はいかにも大きい。両党とも経済最優先の社会に合って存在感を高めてもらいたいところであるが、結局は経済に押される結果の国民感覚を越えられない。
つまり、安倍政権はアベノミクスなる幻影経済成長政策を傍らにして、野党が何もできないかあるいは協力者となって、当分は続くことになるだろう。
安倍政権を支えるもう一つが、朝鮮半島情勢と中国である。嫌韓・反中を大衆誌などが煽り、危機感を作り出すことで、軍事力の増強や集団的自衛権の容認などの背景を作り出していることである。
この政権の真の目的は、日本を軍事国家にすることである。その支持を得るために、彼らはやりたくもない経済政策をやっている。
その結果として、軍事力は継続的に拡大することになり、格差は広がり、国家財政は破たんの道を歩み、地方は疲弊し、環境は悪化し、食糧自給は困難になるのである。
そうした社会に至る入り口に、今我々は立っているのである。
羅臼港
春誓い羅臼港