日本と北朝鮮との最大の懸案事項は、いわずとも拉致問題であることに変わりはない。北朝鮮が、日本を抱き込めばアメリカとの対話の窓口になるかと、小泉に色気を見せた。
北朝鮮政府自体が、拉致問題の全容を把握していない。重要問題と捉えていなかった。数人返すと、日本は溜飲を下げると思ったに違いない。ところが、拉致被害者家族は、拉致事実の解明と全員の救出を求めた。当然のことである。
膠着した日朝関係に、拉致被害者家族は、北朝鮮への経済制裁を求めた。自民党政府は次第にそのボルテージを上げ、最高レベルの現在に至っている。
本ブログで何度も述べているように、最大の北朝鮮問題は北の人たちの食糧問題、人道問題である。食糧援助しても、支配層が潤うばかりである。制裁をしても、一般国民が飢餓に陥るだけである。支配層にとって 何の効果もない。
北朝鮮自身が修復能力を喪失している。独裁政権、権力の世襲と弾圧と貧困。どれをとっても、非人道的体制である。太陽と風ではないが、経済制裁だけでは、国家間の不信がつのるばかりで、話し合いの糸口も見えてこない。唯一の糸口である6者協議から日本を外すことすら、北朝鮮は提案している。
そうした中、ロシアがわずかに接する国境を抜けて、露朝鉄道を開通させた。建設費用の250億円は、全額ロシアが負担した。ロシアの望みは、天然ガスの供給である。露朝鉄道は、韓国まで延ばし、釜山(プサン)港まで行く計画である。鉄道に沿って、天然ガスを送る算段である。
ロシアは、成長の止まったヨーロッパより、経済成長著しい東南アジアや日本に天然ガスを売りつけたいのである。
南北朝鮮は、パイプラインの使用料として、毎年1億ドル金が落ちる。もちろん鉄道の経済的効果も、相当高いもの望める。
ロシアは、北朝鮮カードを独り占めする中国に対しても、敵対するアメリカに対しても、北朝鮮の抱きこみは政治的効果が高いと読んだのである。
北朝鮮を経済制裁し続けると、日本が孤立するだけである。硬直化した日本の外交は、そこまで読みとることすらできない。