リビアのカダフィが、国際法に反する形で殺害された。新生リビアがここから始まるわけではない。カダフィが、欧米の予測に反して思ったより善戦し たことに注目したい。
反カダフィ勢力は、カダフィを倒すだけの力がなかった。NATOが空爆で支援するようになって、ようやく攻勢に転じたのである。カダフィは独裁者ではあったが、40年間居座った最高権力者の地位は、それなりに支持を受けていた時代はあったのである。
欧米の民主主義と資本主義に、国家として立ち向かった時期があった。財政的には豊富な石油による資金を背景に、医療と教育は無料であった。
独裁政権は、浄化能力がないのが最大の特徴である。カダフィも例外ではなく、周辺を近親者で固めた。私服を肥やし続けた。北朝鮮の政権もそうであるが、自浄能力のなくなった独裁者のすることは似通ってくる。
カダフィの亡き後に訪れるのは混乱である。カダフィはあらゆる政治団体を認めなかった。結局拠ってくるところは、イスラム主義となる。しかもこれは乱立が予測される。当分は武力を伴った混乱が続くであろう。
さらには、石油利権を巡ってEU諸国やアメリカが、カダフィ打倒への論功行賞を競い合うことになる。結局は、カダフィが政権をとった時期に戻ることになりはしないか。
民主化とは、アメリカ化になることとアメリカは思っているが、親アメリカ政権は生まれないだろう。エジプトの民主化を支持しては見たものの、反イスラエル・反アメリカ政権が生まれようとしている。アメリカの思惑の傀儡政権は、イラクでもアフガニスタンでも起きなかった。
中東の民主化運動は、スーダンとシリアが残っている。それにドバイとサウジの親アメリカの王政の今後もある。
中東は新たな社会体制を作り上げなければ、新たな混乱の中に入ってゆくことになりかねない。