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『蛍火の杜へ』

2005年06月23日 | 読書日記ー漫画
緑川ゆき (花とゆめCOMICS 白泉社)


《収録作品》

花唄流るる/蛍火の杜へ/くるくる落ち葉/ひび、深く


《この一文》

”彼にはじめて出逢ったのは
 私が六つの時でした

 あつい夏の日
 妖怪達の住むといわれる
 山神の森で

 私は迷子になったのです

 出口を求めて走りまわり
 疲れて動けなくなって

 寂しさと恐ろしさから
 とうとう泣き出してしまった私の前に

 彼は姿を現したのでした   ーー「蛍火の杜へ」より”



表題の「蛍火の杜へ」は、短篇漫画の最高傑作ではないかと、個人的には思っています。いまのところこれを超える短篇作品には出会えません(比較できるほどあまり漫画を読んでいないのですが;)。少し線が細いような絵が苦手という人も多いらしいのですが、私としてはこの人の作風にぴったりしていて違和感は感じません。淡々として美しい語りがまた素敵です。はまる人ははまるのではないでしょうか。読んだことがある人にあったことがないので、分からないですけれど。
「蛍火の杜へ」のあらすじは、こんな感じです。
山神の森へ迷いこんだ少女、蛍は、そこでギンという青年と出会います。妖怪達とともに森に住む彼は人間に触れられると消滅してしまうというはかない存在なのでした。そんな二人は夏がくる度に森で会ううちに、互いに惹かれ合っていくのですがーー。
滂沱です。はじめて読んだ時は、それはもう大変でした。間違っても外では読めません。それから数年経った現在、ようやく涙が流れないくらいには耐えられるようになりましたが、いつ読んでも胸が詰まるのでした。本当はもっと別のところを引用したい気もしましたが、また泣きそうになるので今回は冒頭の一文を取りました。私はこの出だしも結構好きなんですねー。最初から最後まで、とっても良く出来ている、静かな夏のお話です。
ちなみに他の収録作品は、春の話と秋の話と冬の話になっていて、一年を通して楽しめる季節感あふれる1冊であるかと思います。個人的には、あとは秋の「くるくる落ち葉」が楽しいです。