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なんとない読書リスト

2012年05月30日 | 読書ー雑記






ときどき『幻想文学1500ブックガイド』を開いては、これは読みたい! と思う作品を書き出したりしています。しかし、実際に読むところまで辿り着けることは少ない。。。徒歩1分のところに市立図書館があったころは、随分と捗ったものですがね; 自分で調達しなくてはならないとなるとなかなか見つからない希少なものが多いので、一向に進まないのでした。

でもまあ、とりあえず、面白そうな小説が今回もいくつか見つかったのでリストを作っておきましょう。


*『闇の聖母』フリッツ・ライバー(ハヤカワ文庫)
  C・A・スミスの日記に導かれ、狂気の書『メガポリソマンシー』の謎を求めて、霧のサンフランシスコを彷徨する怪奇作家フランツ。ジャック・ロンドン、ビアス、スターリングらの運命を狂わせた暗黒のカルトと闇の聖母とは何か? 米国都市幻想譚の白眉。

おお、面白そう! 狂気の書『メガポリソマンシー』とかゾクゾクしますね。フリッツ・ライバーはいくつかの短篇を読んだ限りでは、ものすごく私好みの作家です。


*『クトゥルーの呼び声』H・P・ラヴクラフト(青心社)
 死せるクトゥルー甦るとき世界は狂気の巷と化す……超古代の暗黒神の復活(未遂)とカルト教団の狂奔を描き、空前絶後の架空神話大系の開幕を告げた屈指の名作。海上に浮遊するクトゥルー神殿の悪魔的描写はただごとではない。作者一党の神話創造への執念は、神話もたぬ国の民ゆえか?

アニメ『這いよれ!ニャル子さん』によってクトゥルーブームが再燃しているらしいので、私もできれば乗っかりたい。


*『ドリアン・グレイの肖像』オスカー・ワイルド(新潮文庫)
 美青年ドリアンは快楽主義者ヘンリー卿の影響を受け、頽廃的な生活を送るようになる。年月を経ても彼は若々しいままだったが、彼の肖像画は日に日に老い、悪事を重ねるたびに醜くなっていく……。ホモセクシュアルと世紀末的頽廃のムードを漂わせながら、徹頭徹尾モラリスティックな怪奇小説。

前から読みたいと思っているのですが、そろそろ本当に読みたい。


*『ヴァテック』ウィリアム・ベックフォード(国書刊行会)
 アラビアのカリフであるヴァテックは酒色と知への飽くなき欲望に憑かれ、悪魔に魂を売り渡す。地獄への道をまっしぐらに降っていくヴァテックとその母親の魔女カラチスの放恣と悪行がすさまじい中編。また、すべてが巨大で、眼路の届く限り円柱の列や拱廊の連なりが立ち並び、人々がひたすら黙ってそぞろ歩く、という地獄の表現が、ピラネージの牢獄をイメージさせるものとして有名である。

ほほう。初めて聞く作家と作品ですが、なんだか面白そうですね。


*『オーレリア』ジェラール・ド・ネルヴァル(思潮社)
 〈夢はもうひとつの生である〉というあまりにも有名な一文から始まる、夢と白昼夢、幻覚とに支配された作品。私はオーレリアに報われぬ恋心を抱いているが、彼女は死んでしまう。惑乱する私に夢の啓示が与えられる……。象徴としての夢、何事かを告げる神秘的な夢が、作者にとっては真実なのだ。オーレリアが〈変貌を遂げ、光り輝く〉さまを夢に見て、試練が終わり、許しが得られたことを知った私が、夢の神秘の探求に夜の生を捧げ、現実では病者として過ごしていることを静かに語るさまは、一種異様な感動を読者に与えるだろう。

えっ、『オーレリア』って、こんなお話だったのか。これは読みたいな。夢の物語だなんて、ものすごく面白そう。




あれも読みたい、これも読みたいと言うのはいいのですが、今も脇に集英社版『ラテンアメリカの文学(全18巻)』を山積みにしたままでいる私は、まずはこれから読まないとならないでしょう。これを制覇することが今年の課題です。その合間に、上のどれかひとつでも読めるといいんだけどなあ…!(^o^;)





プレゼント

2012年05月29日 | 自作まんが





贈り物をするのは難しい。私は友人たちから素敵な贈り物をされることには慣れているものの、逆に何か素敵な物を友人に贈りたいと思っても、なかなか成功しない。それには贈り主のセンスだけでなく、日頃からどれだけ相手のことを観察しその人が喜びそうなことに注意しているかが問われるのだ。私にその性質が欠けていることは、今のところどうにも否定のしようがない。



そんなわけで、先日K氏の誕生日に贈り物をしようと考えたのですが、なかなかの大騒動でした。

そもそも私は「折り畳み傘」をプレゼントしようと以前から考えていたのですが、K氏はその前に自分で折り畳み傘を買ってしまっていたのですよ。急遽別案をひねり出す必要に迫られた私は、あれこれと悩みました。

結局たいして良い考えが浮かばなかった私は、前から一度作ってみたかった「チョコレートスフレ」に挑戦することに(←これが間違いの第一歩。自分の欲しい物ばかり考えてちゃいけませんよね; でもK氏もチョコ好きだしいいかな、って……)。
ともあれ、それはチョコレートと卵だけを使ったサッパリ軽い味わいのチョコスフレでして、レシピを見ながらどうにかこうにか完成しました。


ふう、コレ。


割れました!!!

焼き立てはとても柔らかく、綺麗にお皿に移し替えることができませんでしたの!

と言い訳してみるものの、さすがにこのままではあまりに哀れなので、なんとか誤摩化すことに。

そこで、【フォルマ帝塚山】のチーズケーキ(私の誕生日の時にもらった美味しいケーキ)が入っていた木の容器を取ってあったので、それに移し替えてみました。そして冷蔵庫で半日ほど冷やした後、K氏に贈ってみます。



N:「ハイ、どうぞ☆ 誕生日おめ、おめ!」



K:(どっかで見たようなケース……)
  「ありがとう」

パカっ(蓋をあける)。

K:「…なにこの、名状しがたいケーキのような何かは?」


あまりに陰惨な図なので(移送中にスフレはさらに崩れた)自重。


N:「チョコスフレだよ…一度作ってみたかったんだ☆(ゝω・)vキャピ」

K:「…君は試作品を人に贈るのか!? しかも崩れてるじゃねーか!」

N:「大丈夫。食えばどのみちバラバラになるから…」

K「贈る方が言うんじゃねー!」( ・`ω・)⊂彡☆))Д´) パーン「ギャー!!」


そんな悲惨なやりとりがありましたが、チョコスフレは見た目こそアレでも味はふんわり軽やかで美味しゅうございましたヨ☆ そのうちまた挑戦してみようっと♪♪



しかし、もちろん流石の私もこんなプレゼントでは申し訳ないと感じるくらいの感性は持ち合わせているつもりなので、チョコスフレ以外にももうひとつ贈り物を用意しました。

「誕生日プレゼント」ということをアレコレ考えているうちに生まれた手描きの漫画(制作所要時間およそ20分。下描き状態)です。(さらに加速する「誰得感」……)

「ほらよ!」と、これもK氏に贈ってみました。K氏は私が漫画を描くことを喜ぶはずなので、これにも喜んでくれるはず…


 *「プレゼント」



まさに「誰得」!!!

って感じですが、一応読んではくれました。

K:「なにこれ? まさかこれもプレゼント(のつもり)?」
  「あー、でも、コマ割りは上達したよね。前に比べて工夫が見られるようになったよ(以下寸評がつづく)」

N:(これは喜んでくれているのだろうか? ていうか、これってプレゼントとして成立するのかな?(批評されてるし)…そもそもプレゼントって何でしたっけ???…とか思いつつ)「そうかね。まあ、君も健康無事に誕生日を迎えられたことに感謝することだな!」

K「何で上から目線!?ざけんな!」( ・`ω・)⊂彡☆))Д´) パーン「ギャー!!」




贈り物をするって本当に難しいですね、というお話でした(^o^;)
哀れ、K氏。また来年に期待してくれ!





『アズールとアスマール』

2012年05月28日 | 映像(アニメーション)

原作・脚本・台詞・デザイン・監督:ミッシェル・オスロ
日本語版監修・翻訳・演出:高畑勲


《あらすじ》
幼い頃、アラビア人の乳母から聞いた子守歌を頼りに、ジンの妖精を探すため、遠く海を渡ったアズール。しかし、やっとたどりついた憧れの地は、“青い瞳は呪われている”とされる国だった! 文化も人種も異なるその異国で、盲人のふりをして旅を続けるアズール。やがて、大好きな乳母ジェナヌと、兄弟のように育った乳母の子アスマールに再会。今や裕福な生活を送るアスマールと“呪われた青い瞳”を持つアズールは、対立し合いながら、それぞれジンの妖精を探しに旅立つ―。






はあああああああああああ…!
なんという美しさだろう!


というわけで、ミシェル・オスロ監督の『アズールとアスマール』を観てみました。オスロ監督と言えば『キリクと魔女』『プリンス&プリンセス』ですよね。私はどちらも大変に好きなのですが、この『アズールとアスマール』も同じくらい好きになりました。うわあああああ! 隅から隅まで美しいよう!

ミシェル・オスロ作品の魅力と言えば、何と言ってもまず画面の美しさがあるでしょう。私の大好きな『プリンス&プリンセス』は影絵のアニメーションでしたが、それはそれは美しい作品でした。物語のロマンチックさとあいまって、のたうちまわるくらいに好きです。

しかしこの『アズールとアスマール』では影絵ではなく、緻密でカラフルな2Dの背景に、3Dの人物を組み合わせてありました。冒頭の、アズールとアスマールが乳母から言葉と物語を教わる場面では、私は正直に告白すると、「これはちょっと…どうなるのかな?」と心配になりました。3Dモデルの人物が浮いてしまうのではないかと思ったのです。
けれどもそれは要らない心配でした。物語が進むにつれて、登場人物たちの造型は、美しい背景の中に美しく溶け込んで、良い意味で浮き上がって見えたのです。まあ、とにかく、気が遠くなるほどに美しい。ため息が止まりません。

たとえば、こんな場面。

アズールとアスマールが花盛りの草むらの中、荷車の下で雨宿りしながら口論をしている。すると雨が上がり、二人は外へ飛び出す。空に虹がかかる。

うぐっ!! 背景に描き込まれた花々のひとつひとつを見るだけでも、本当に痺れるように美しいのです。アズールの青い瞳が見開かれるところ、アスマールの宝石のような黒い瞳、椰子の林、姫の宮殿の内部などなど、ひとつひとつの場面はそれぞれに吸い込まれそうな美しさを放っていました。


 白と黒だけの画面ですら、これほどの美しさ。



さらに美しいのは、画面だけではなくて物語も同様です。

兄弟のように育った金髪で青い瞳に白い肌のアズールと、乳母の息子で黒い髪で黒い瞳に黒い肌のアスマールは、不幸な別れ方をしたまま青年になる。成長したアズールはかつて乳母から聞かされたジンの妖精を探すため海を渡るが、遭難し、見知らぬ土地に流れ着く。言葉も通じない土地で迫害を受けるアズールだったが、幸運にも乳母と再会する。しかしアスマールとは対立してしまい……というお話。

二つの人種と文化、言葉、宗教の間にあって、アズールたちが互いに理解し合い融和してゆくさまが描かれています。本編はフランス語とアラビア語の二つの言語で成り立っており、私は日本語字幕で観ましたが、字幕がついているのはフランス語部分だけとなっていました。異国の地に立ったアズールと同じようにアラビア語部分は分からない。これは面白い演出ですね。

登場人物もみなとても魅力的です。特に「シャムスサバ姫」にはノックダウンされましたよ。閉ざされた宮殿から一歩も外に出ることのない、国の未来そのものであるお姫さま。しかしその意外なお姿と、好奇心旺盛ですばしこく、お茶目でお転婆な性格には強烈な魅力が備わっていますね。このキャラクター設定には、どことなく『プリンス&プリンセス』に登場したお姫さまを思い出して、やっぱり同じ人が作ったのだなーという気がしました。図書館で得た知識で全ての町並みを把握しているシャムスサバ姫は、しかし実物の「土」を見たことがなくて、散策の折におそるおそる「土」に触れてみる。なんてロマンチックな描写でしょう! あー、これはたまらない。もうだめ!



『キリクと魔女』、『プリンス&プリンセス』そして『アズールとアスマール』。ミシェル・オスロ監督の作品には共通するテーマがあるようです。それは、先入観を取り払い自由な心で物事を見つめること、その美しさを見出すこと、知り合うこと、認め合うこと。美しい画面と物語、魅力的な登場人物、いずれも私を感激させますが、より心を打たれるのはいつもこのテーマによってです。美しい映像と物語そして音楽のすべてにこの監督の優しい心が映し出されているようで、私はいつも胸がいっぱいに満たされるのでした。



そんなオスロ監督の次回作は『夜のとばりの物語』。2012年6月公開とのこと。イヤッホ~~! もうすぐじゃないか!! うれしい! なんかもうチラシ見ただけで既にクラクラするほど痺れてます。美しくて。

 『プリンス&プリンセス』に似てる?
 これは楽しみです!










スナップエンドウ

2012年05月27日 | もやもや日記





実家からスナップエンドウが送られてきました。これがウマい。

私はもともとこのスナップエンドウが好きなのですが、大量に送られてきたのでどんどん茹でて食べてます。シャクシャクして美味しいですよね。毎日山盛りで食べることができたらなあ。近所にスナップエンドウを育てているおうちがあるのですが、その前を通るたびに羨ましく思います。でも、ベランダでも育つのかな? そう言えば、うちの管理事務所で「ゴーヤの苗を配布中」という張り紙がしてあったわ。あれも一度挑戦してみたい。今年も関西の夏は暑くなりそうだしなあ。


画像の白いボウルは、今年の【山崎春のパン祭り】でもらった白いお皿シリーズのものです。サラダやスープのためにはちょうどよい大きさです。期間中はどうにかがんばって2枚もらいました! やったぜ!

はあ…。
しかし野菜や果物はおいしいのですが、どういうわけかここ数日は胃が荒れているのか、コーヒーがまったく飲めません。日に4杯が標準、多い時には5、6杯は飲む私としては、絶不調であります。
……アニメ観るのに徹夜したのがよくなかったな……(ヽ´ω`)ウグッ



それにしても、もうすぐ5月も終わりですね。
『モーレツ宇宙海賊』があと1カ月で終わるのかと思うと、つらすぎる!!



今ちょうど第21話を観終えたところですが、ここ数回の一連の「ネビュラ杯」のお話はアニメオリジナル回だったそう。とても面白かったです。リン部長の中1時代が可愛すぎた(=´v`=)そして無邪気に邪悪すぎた♪
オリジナルでこれだけ面白いなら、原作の分が足りなくなっても大丈夫そうということだろうし、やっぱりあと1年くらいは放送してほしいわ…。中2病アニメが氾濫する昨今(私はそういうのも好きだけどさ…)、こういう冒険心をくすぐられるものは貴重ですよね。まあ、とりあえず、来週も楽しみ!




『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』

2012年05月25日 | 映像(アニメーション)

 2011年 全11話

原作:超平和バスターズ
監督:長井龍雪
制作:「あの花」製作委員会(アニプレックス、フジテレビジョン、電通)



《この一言》
“あの季節に咲いた花は
 何て名前だったんだろう? ”





変わらないままで、進むことは可能なのだろうか。



最初から悲しい話になるだろうとは分かっていましたから、私は泣きませんでした。泣きませんでした。そんなには。それよりもただ胸がキリキリと痛むようです。あの時にも、あの時にも、またあの時にも置き去りにしたままの悔いを、過ちを、罪悪感を、詫びる言葉もすべもないとしたら、どうしたってそれ以上進むことなんてできるはずがないではないですか。すべてが過ぎ去ってしまったのに。

でも、もしもチャンスを得られたら?


登場する5人の少年少女たちは、高校生になった今も、過去のある時点に縛られたまま。それはかつて「超平和バスターズ」が6人だった時、めんまという女の子が死んでしまったあの日。残された5人はそれぞれの思いを抱えながらも成長し、それぞれの問題を持て余しながら、今では皆がバラバラに過ごしている。そんな高校1年生の夏、「超平和バスターズ」のリーダー格で今は不登校中の仁太(じんたん)のところに、死んだはずの芽衣子(めんま)が自分と同じように成長した姿で現われて「願いを叶えてほしい」と言うのだが……というお話。

めんまの願いは何なのかを探る仁太を中心に、離れていた「超平和バスターズ」の面々も次第にまた集まるようになります。そうして全員で、めんまの願いを叶えてやろうとするのですが、めんまの姿は、どうしてか仁太にしか見えない。どうしてだろう。どうしてだったんだろうな。仁太だけでなく、ほかの誰もが皆めんまのことが好きだったし、めんまに対して言いたいことがあったというのに。どうして。

どうしていずれは別れるのを知りながら出会わなければならないのか。どうして分かり合えないままで別れなければならないのか。どうしてせめて思いだけでも伝えたいと願うのか。そしてそれが叶わないのか。それなのにどうしてそんなことをしなければならないのか。どうして、なんのために、我々は出会い、そしていつか決定的に別れたあとにまだ取り残されて、そのまま生きなければならないのか。どうして、どうやって。すべてが過ぎ去ってもここに取り残されようと選択しているというのに、どうして時は、その思いごと押し流そうとするのだろう。そして押し流されるまま少しずつ忘れてしまうのは、どうして。


だめだな。『あの花』はきっと美しい物語だったと思うけれど、悲しすぎる。どうしたらいいか分からない。ただ、「めんまが見えない」「めんまを見ることはできないけれど」というところから、何か掴めそうな気はする。…と思ったけど、やっぱだめだな。

ああ、でも、もしもこんなチャンスが与えられたらなあ。どのみち別れなければならないとしても、こんなふうに別れることができたらなあ。そしたら、すべてが過ぎ去っていくここで、でも押し流されたりせずに、変わらないままで進むことができるのかもしれない。思いと願いの全部と、ここにあったかもしれないものがないという空白を見つめたままで、進むことができるのかもしれない。どうかな。でもそう思いたい。


『あの花の名前を僕達はまだ知らない。』。この長いタイトルがいいですね。

「まだ知らない」

私には、どうして、どうして、とそればかり浮かんでしまいはしましたが、それでもやっぱりこのタイトルの通り、希望を感じさせる物語でありました。

僕達はまだ知らない。でも、いつかは。いつかはそれを知ることができるのかもしれないでしょう?


ああ、夜が明けそうだ(現在午前4時半)。1年越しで『あの花』をようやく観て、あーでもないこーでもないと唸っていたら、夜が明けそうです。時が流れている。明け方の空を見るたびにそれを感じます。ずいぶんと押し流されてしまってもう何が何やら分からないのだけれど、それでもこうして時が流れて、私もその「いつか」に近づいているんだったらいい。







『樫の葉が落ちるまで』

2012年05月23日 | 映像(アニメーション)

 1991年 カラー 28分
 ヴラスタ・ポスピーシロヴァー監督
(『チェコアニメ傑作選II』)


《あらすじ》
酒飲みの男が悪魔と契約を交わすが、契約の代償が自分の子供だと知り、男はある決意をする。




たまにはこういうアニメーションも観たい。

というわけで、『チェコアニメ傑作選II』のDVDから、トルンカ作品のアニメーターだったというポスピーシロヴァー監督の『樫の葉が落ちるまで』を観てみました。

DVDのパッケージの裏書きを眺めていたら、発作的にこの『樫の葉が~』を観たくてたまらなくなり観てみると、実に素晴しい作品でした。30分弱という短い作品ですが、そうと思われないほどの完成度の高さ。なるほどこれは傑作です。


物語は、ある酒飲みの男が酒を飲み過ぎるあまり、財産のほとんどすべてを失ってしまう。村の人々の畑には作物が実っているのに、男の畑には枯れ草ばかり…。するとそこへ旋風にのった悪魔がやってきて、男と契約を交わす。契約の中身は、「畑を豊作にするかわりに、男の家の中にあって男がその存在をしらないものを代償にいただく」というもの。酒飲みの男は、「自分が知らぬものなど家の中にはひとつもない」と思い契約書にサインするのだったが、家路についた男は、妻が男児を産んだことを知り……というお話。

いかにして酒飲みが悪魔を出し抜くかというところが面白い筋書となっていますが、それ以上に面白いのが、悪魔の描かれ方でした。私はこういう悪魔がとても好きなのであります。

まず、男の願いを聞きつけて登場する悪魔ですが、上の画像からも分かるように、サラリーマン風のスマートな風貌をしていて、悪魔の台詞からは、実際に会社勤めをしているらしいことがうかがえます。きっちりとしたスーツ姿、脇に抱えた書類鞄、黒い帽子には二つの角がついているというあたりが、強烈にイカしてますね。動作もテキパキとしていて、かつエレガント、デキル男(悪魔)といった感じです。

さらに酒飲み男が2度目の契約時に連れて行かれる「地獄」の描写がまた素晴しいのです。奇妙に近代化されていて、オフィスあり医療室あり、オシャレなバーもあったり、また地獄らしく灼熱地獄な釜や寒冷地獄を連想させる冷凍庫があったりもします。エレベータもあるよ!

この地獄の場面だけでも私は飯が三杯食えそうです。面白いよー! ここは素晴しい地獄です!! テリー・ギリアムの『バロン』で出て来た地獄にも通ずるものがあるように感じますね。20世紀ともなれば、地獄だって近代化するに決まってますよね。うーん、面白い!


男が酒を飲むごとに飼っている牛の体がパッパッと半分ずつ消失してゆく(飲み代として)場面や、男の胃の中でカエルがあっぷあっぷしている場面など、さりげないところにユーモアが詰まった楽しい作品でした。オチのつけ方も最高でしたが、これは何か原作というか、民話などが元になっていたりするんでしょうかね? 調べようかとも思いましたが、またいずれ…

それにしても、チェコアニメってやっぱり面白いなあ!
DVDの残りの作品についても、早いところ観てしまいたいと思います(とか言ってすでに5年くらい温存中……)。






金環日食!

2012年05月21日 | もやもや日記




さて、国内で広範囲に渡って観測できるのは932年ぶりのことだという今回の【金環日食】ですが、私も観測してみました!

観測に使用したのは、K氏が買っておいてくれた上の遮光眼鏡です。事前に、安全確認のために室内の蛍光灯を点けて眺めたりしたのですが、その時には暗すぎて何も見えない。蛍光灯の形がハッキリと見えなければ大丈夫ということだったけれど、なんて言うか、何も見えない。黒い。黒いです。

「…これ、ただの黒い板だったら、どうする?」

などと心配していたわけですが、本番の今日、どうにか早起きできたのでK氏とともに部屋を飛び出して屋外で太陽を見上げてみましたよ。

ところが、本日の大阪市内はあいにくの曇り空で、ごく短い【金環日食】タイムには、ちょうどこんな具合でした。


 7時25分の大阪の空。
 く、雲がっ…!
 おい~~、頼むよ! 900年ぶりなんだよっ!

と嘆いてみるものの、無情にも太陽は雲の向こう。瞬間的に晴れ間が見えたりしましたが、なかなかよく見ることができません。

おまけに、懸念していた通り、眼鏡は遮光力が強すぎて雲に遮られた状態では

「太陽の形はほとんど何も見えないっ!(´;ω;`)」

「黒い! 黒い板だよ…これはっっ!!(´;ω;`)」

「あっ、でも今、一瞬だけチラッと見えた!」

「おお、ほんとだ、ちょっとだけ見えるかも…!」

と、K氏と二人でわあわあ言ってるそばを、ゴミ捨てに通りかかったおじさんが「おっ、ちょっと見せて!」と観測隊に加わりましたが、我々が「これ、黒すぎて見えませんけど…」と差し出した眼鏡をさっと目に当てて見上げるも、やはり見えなかったようでうなだれて向こうへ行ってしまいました…ごめんよ、おじさん。。。しかし横目で後を追いかけていたら、そのおじさんは、我々から少し離れたところで観測していた別のおじさんとおばさんのところで日食を見られたようでしたね。おじさんとおばさんの眼鏡はちょうどいい遮光具合だったんだろうなあ。羨ましいなあ。私も混ざれば良かったかも。

結局私とK氏は綺麗な輪っか状の日食を見られずに終わりましたが、輪の上半分は見ることができたので、私としては満足です。天気はギリギリでしたよね。当初はもっと曇っているだろうという予報だったから、これでも十分ラッキーだったのかと思います。



 ついでに木漏れ日の様子も観測。
 影の形が三日月状になっていることを確認しました。
 しかし私にはどうしてもこの理屈が分からないのであった…


というわけで、朝から頑張りましたが、そこそこの満足感とひしひしとした疲労感を得られましたかね。ぼんやりしながら朝食をとっていると、8時を過ぎたころにパッと晴れてきて、ベランダにも日光が差し込んできます。

「お…おい、いまごろ遅い……ッ!!!」

と言いつつ、まだ部分日食が継続中だったので、我々は今度はベランダに飛び出して観測再開。

肝腎の【金環】の時には撮り損ねましたが、今度は太陽をカメラで撮影してみましたよ。

ほら、撮れた。欠けてる、欠けてる。



って、これではよく見えないですよね。
拡大、拡大。

時間をおいて何枚か撮影したので、次第に食の部分が小さくなっていくところが観察できました。












【金環日食】中は、曇りがちということもありましたが、それだけではないような一種独特の「薄明るさ」があったように感じられて愉快でした。

宇宙を感じられるイベントって楽しいですね(^_^)









珊瑚色のエイ

2012年05月20日 | 夢の記録





今朝の夢。『デュラララ!』と『つり球』がミックスされたような内容でした。たぶん青春もの。登場人物は少年と、その友達と、女の子。いずれも高校生らしい。


*****************


僕と友達は港にいた。夜だった。空も海も黒々として、一面に無数の小さな星が白く光っていた。

僕は彼にホラ貝の置物を贈る。それは、貝の真ん中がくりぬかれていて、そこにロウソクを立てられるというものだった。しかもホラ貝らしく吹いて鳴らすこともできた。

彼はとても気のいい奴なので、受けとったホラ貝に喜び、薄紫色のつるつるした先端に口をつけて勢いよく吹き鳴らした。空に響く音に添うように、僕は海に飛び込んだ。

夜の暗い海のなかはとても深く静かで、波の抵抗を受けることもなくスイスイと泳いで行くことができる。向こうからエイの群れがやってくる。それは珊瑚のように赤い色をしたエイで、頭部やヒレのところにはひらひらとした羽飾りのような房がついていた。たくさんの珊瑚色のエイが僕のそばを通り過ぎて行くのだが、エイたちは皆、低い声で歌を歌っているのだった。友達の鳴らしたホラ貝に合わせて歌っているのかもしれない。

エイの歌をしばらく聞いた後、僕は海からあがる。すると友達はいなくなっていて、同じ場所に女の子が座っていた。彼女もまた僕らの大事な友人だった。僕の体から水がぽたぽたと滴り落ちるのと一緒に、眼鏡の片方のレンズが外れる(僕は眼鏡をかけている)。すると彼女が「眼鏡のレンズって、意外とすぐに外れちゃうよね」と笑って、彼女もまた眼鏡をかけているのでそのレンズをひとつパキっと外して、僕に寄越した。僕と彼女は互いに片方のレンズを交換して、自分の眼鏡に付け直した。度が合わないのにも構わず。

こうして僕は彼女の片目を手に入れ、彼女は僕の片目を手に入れたつもりになった。前よりもより分かり合えるようになった気がした。しかし、そのとき僕と彼女が分かりたかったのは、実のところ、ホラ貝を持ったままいなくなってしまった彼のこと、彼が何を考えているのかを知りたかったのであった。

「君は何を考えているの?」
「どうして僕らには、それが分からないんだろう?」

彼がそこにいたらいい一人分の空間をあけて、彼がいないことを思いながら僕と彼女はただ黙って座り、黒々とした空と海を眺めた。



*********************


もっと長くて小説みたいだったのですが、印象的だったのはこういう場面でした。夢を見ている間にあっと思ったのは、「眼鏡の片方のレンズを誰かと交換する」というところ。私は以前にもこれと同じ状況を夢に見ていることに気がつきました。登場人物は違っていたと思いますが、「あっ、これは前にも見たぞ!」と思って目が覚めそうになりました。何か意味を感じられそうな気がしています。

これは新たな「続きの夢」かもしれません。大きな珊瑚色のエイというのも、かつて何度も夢に現われた「大きな長い羽根をもつ鳥」の変形のように感じますしね。







『蜘蛛女のキス』

2012年05月19日 | 読書日記ーラテンアメリカ

マヌエル・プイグ 野坂文昭訳
(集英社版ラテンアメリカの文学16)




《内容》
おまえは蜘蛛女、男を糸で絡め取る。特命を持ったホモセクシアルの男は、テロリストの青年に近づいていった……。プイグが描く異端の愛。
少年時代から映画に夢中だったプイグは、22歳でイタリアへ留学。映画の勉強を始めた。しかし映画製作の権威主義に絶望。シナリオを書き始める。映画、フォトコミック、推理小説などの大衆文化的なメディアのパロディ形式の小説はいずれも好評である。


《この一文》
“「幸せを味わってるときが素晴しいのはねえ、バレンティン……それがいつまでも続きそうな気がすることなの、惨めな気持になんて二度とならないみたいな」”





初めてプイグを読みました。有名な『蜘蛛女のキス』です。プイグはアルゼンチンの作家であり、ラテンアメリカ文学に興味のある私としてはいつかは読もうと思っていましたが、とうとう読みました。
『蜘蛛女のキス』については、有名作ということもあっていくらかの予備知識というか、イメージがありました。それで、これはきっと悲しい結末になるのだろうと予想して読んでみたら、やっぱり悲しい結末でしたね。でも、悲しいというだけではなかった。悲しいというだけではなくて、何か胸がざわざわとする。このざわつきは何だろうかとしばらく考えてみましたが辿り着けなかった。

しかし、訳者によるあとがきを読んでいると、このようなことが書かれてあります。

 つまり、二人は〈搾取的性愛〉を乗り越えることが
 できなかったがゆえにこの物語は、メロドラマであ
 ると同時に悲劇なのである。

なるほどなあ。分かったような、分からないような。しかしこれは大きなヒントになりそうですね。


さて、『蜘蛛女のキス』の主人公は二人。二人とも同じ監房に収容された受刑者であり、ひとりは同性愛者のモリーナ。もうひとりは革命運動家のバレンティン。

モリーナはバレンティンに様々な映画の筋を話して聞かせるのですが、そこがとても面白い。小説の中でさらにいくつかの映画が物語られるのです。モリーナの語る映画の内容は、非常に視覚的で美しく詳細に描写されていて、実際に映画を観ているような気持ちにさせられます。私は『甦るゾンビー女』の話が好きでしたかね。ここで語られる映画のいくつかは現実に存在する映画を元にしているそうで、『黒豹女(Cat People)』は私も昔観たことがあるような。

物語の大部分は、閉ざされた監房で過ごすモリーナとバレンティンの会話によって成り立っています。モリーナとバレンティンの動作についても、すべて会話から推察されるようになっています。誰々が~~した、という説明書きはありません。
また、途中にはモリーナと刑務所長とのやり取りがシナリオ形式で、モリーナの行動を監視する内容が記録形式で、さらに第1部と第2部の終わりに長大な注釈(読むべき注釈として)が付いているという、ちょっと特徴的な構成になっています。モリーナが映画の内容を語るその作品自体も映画のように見えてくるのが面白いですね。全体的に非常に視覚的であり、会話に終始するためかとても直接的な感触のある作品だったかと思います。


とにかく、とても読みやすく、あとに奇妙な余韻を残す物語でありました。愛。抑圧からの解放。ほんとうに自由に、幸福になるためには、私たちはどんなふうであったらいいのだろう。男性性、女性性、内と外、これは私たちをはめこんでいる枠だろうか。私たちの行動を左右し決定するのはその枠組みだろうか、私たちの心を動かす事柄もその枠組みがなければ違ったふうにあらわれるようになるのだろうか。誰からも奪わず、奪われず、そんな人間関係を構築することは可能だろうか。そしてまた枠組みと役割とをどう区別したらいいのだろう。

一気に読んでしまえばよかったのに、細切れに少しずつ読み進めてしまったことが悔やまれます。モリーナとバレンティンの、映画以外のことで交わされるわずかな言葉の中には、とても印象的なものがいくつかあったので、ひとまずはそれを挙げておくことにしましょう。考えるのは、またいつか。


“希望を失うことほど恐ろしいことはない、ところがおれはそうなってしまった……自分の裡にある拷問器が、もうすべては終ったとおれに言うんだ、このあがきはこの世で経験する最後のことだと……おれはキリスト教徒みたいだ、あの世があるようなことを言ってる、実際にはありもしないのに、そうだろう?……”

“ああ、ずっと考えてたんだ、そのことをね。あんたがおれに対して寛大なのが……気に障ったとすれば、……それは、おれもあんたに対して同じ態度を取らされるのがいやだったからなんだ ”

幸せを味わってるときが素晴しいのはねえ、バレンティン……それがいつまでも続きそうな気がすることなの、惨めな気持になんて二度とならないみたいな ”






卵巣摘出手術の記録(最終回)

2012年05月17日 | 卵巣摘出手術の記録


(前回までの記事)
 *111222生還シマシタ!
 *術後3カ月検診
 *手術 その前と後

 *術前検査まとめ(前編)
 *術前検査まとめ(中編)
 *術前検査まとめ(後編)



おそろしく間が空いてしまいましたが、去年の暮れに受けた卵巣摘出手術のまとめも今回でようやく最終回です。
いよいよ本題の「摘出手術」の詳細をまとめてみようと思います。


手術の前日に、あらかじめ担当の先生から手術内容についての詳しい説明をしてもらうことになっています。その際には、このような書類も用意されていました。



「手術説明書(腹腔鏡下手術)」という全4枚の資料です。図解付きで内容が分かりやすく説明されてあります。これに加えて、「麻酔を受けられる方へ」という手術時の全身麻酔に関する説明も別途、麻酔医の先生から受けました。


さて、「手術説明書(腹腔鏡下手術)」ですが、私の場合はこんな風にまとめられています。

 1.病名 : 卵巣嚢腫

 2.病状 : 腰痛
(他にも「月経困難症」「過多月経」「下腹痛」などのチェック項目がありましたが、私の場合は「その他」で「腰痛」…)

 3.手術名 : 腹腔鏡補助下卵巣腫瘍摘出術


そして、腹腔鏡下手術についての概要。以下、その写し。

 4.腹腔鏡下手術概要

(1)腹腔鏡手術とは
 腹腔鏡とは、腹腔内を観察するための内視鏡のことです。腹腔内を炭酸ガスで膨らませた後、臍付近に5~10mm前後の切開を加えて、お腹に入れた筒(トロカール)を通して、腹腔鏡(CCDカメラをつけます)でお腹の中を観察します。また、下腹部の別の位置から入れた 1~3本の筒の中に、鉗子などを挿入してお腹の中を調べたり手術をしたりします。

【図解添付。やや生々しいのでご注意ください】


臍の上に1cm、臍の下に(私の場合は対象が大きいので)4cmの切開。
上の切込みからカメラを、下の切込みから鉗子を入れます。
そこから、中身の溶液を吸い出した後の卵巣を引き出します(左図)。
お腹はガスで膨らみ、尿道にはチューブを通します。
その他の臓器は、脇へ寄せておきます(右図)。



(2)この手術の適応となる産婦人科疾患とは

 不妊症/子宮内膜症/卵管癒着/良性卵巣嚢腫(私はこれ)
 子宮外妊娠/子宮筋腫/その他(悪性を疑う場合は現在適用外)


(3)この手術が適用とならない場合とは

 全身麻酔が不可能な方/著しい肥満の方/頻回の開腹手術既往の方
 その他医師が適切でないと判断した場合 など


(4)手術に必要な検査

 普通の開腹術と同じ検査(血液検査、心電図検査、胸部X-Pなど)


(5)腹腔鏡下手術の長所と短所

 *長所      /   *短所

 手術創が小さい / 全身麻酔が必要

 術後疼痛が少ない/ 腹腔鏡下手術特有の合併症

 入院期間が短い / 手術時間が開腹手術より長い

 術後の癒着が少ない対象臓器を蝕知しながら手術できない

 視野が拡大されて見え、繊細な手術が可能二次元画像下の手術のため距離感がつかみにくい。手術操作(止血や縫合)が困難

 骨盤深部など開腹手術では視野が得られない場所も良く見えるTVモニター画像外での偶発症(腸管損傷や血管損傷など)が起こる可能性


 6.疾患別手術方法(卵巣嚢腫の場合)

 嚢腫の大きさや性状により、処置方法や切開創の大きさや数が異なります。
 (1)体外法:卵巣嚢腫内溶液を吸引などにより縮小させた後、下腹部正中約2-3cmの切開創から嚢腫を体外に誘導し、嚢腫部分のみを摘出後、正常卵巣部分を形成して体内に還納します。

 ※私の場合はこの(1)を選択。上の図解にもあるように、卵巣を一度外へ引張り出して切除となりました。また、「正常部分」が残っていなかったため左の卵巣は全摘出しました。

 (2)体内法:腹腔内で嚢腫部分を摘除し、腹腔内で正常卵巣部分を形成します。

 (3)嚢腫壁焼灼:強度の癒着等で嚢腫部分の摘除が不可能な場合、嚢腫壁焼灼を行ないます。

 (4)付属器(卵巣・卵管)摘除:正常卵巣部分を残せない場合や年齢的に残す必要のない場合、また出血のコントロールが困難な場合など状況により付属器摘除を行ないます。


 7.手術の合併症

 腹腔鏡操作による合併症は、トロカール挿入による偶発生(腹壁血管損傷、創部血腫、後腹膜血管損傷、腹腔内臓器損傷)や炭酸ガス注入による合併症(皮下気腫、ガス栓塞、呼吸器合併症、循環器合併症)、術中操作による偶発症(腸管損傷、尿管損傷、膀胱損傷)、また器械の不具合による偶発症などがあり、非常に稀なものから1%前後の頻度で発生するものもあります。
 また、開腹手術同様、重篤で致命的な合併症に、深部静脈血栓症などによる肺塞栓症が0.01~0.04%の頻度で報告されています(弾性ストッキングまたは抗凝固剤にて予防)。
 開腹術に比べ頻度は低いですが、術後の合併症として卵管・卵巣の(再)癒着や卵管(再)閉塞やそれらによる不妊、稀ですが腸管癒着によるイレウス等が発生することがあります。

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以上が、大体のまとめです。翌日が手術でしたが、全てここで説明された通りに行なわれ、私は何も問題なく退院することができました。ありがたや、ありがたや!

しかし、もしも途中で何らかの問題が発生した場合のために、次のような説明もされてあります。

 10.その他

 腹腔鏡は、あくまでも手術のアプローチの手段のひとつです。もしも、腹腔鏡による手術が無理であると判断された場合や、腹腔鏡操作等による合併症が生じ腹腔鏡下での修復が困難な場合などには、開腹術に変更となることがあります。また腹腔内の状況により、予定術式が変更となることもあります。

 卵巣嚢腫や子宮筋腫・腺筋症手術の場合、術前検査・術中所見にて良性と判断された場合でも、術後の病理組織検査で悪性組織が認められる場合があります。このような場合、追加療法(再手術や抗癌剤治療)の必要な場合があります。


とのこと。幸い、私のケースでは術後の病理組織検査でも問題が見当たらなかったので、手術から1週間の入院、その後の定期検診(全2回)で全ての行程が終了し、無事完治となりました。


ちなみに、手術については何もかも担当の先生がうまくやってくださいました。私はひたすら寝ていただけで拍子抜けするほど簡単に治ったので、あまり病気をしたという気がしないほどです。しかし、さすがに手術直後には、体力の衰えが激しく、術後2日目から立って歩くように指導されるのですが、それもままならず。フラフラよろめいて看護士さんを心配させてしまいました。日頃の体力作りが大事ですね!

それから、手術当日には母が付き添ってくれましたが、終了後、先生から摘出した患部を見せられたらしく、「鳥の皮みたいだった!」と言っていました。へ、へえ~……

あ、もうひとつ。私の病状は「卵巣嚢腫」でしたが、しばらくして様子を見に来てくれた先生(開口一番「大きかったで~!」と満足げ)によると、お腹を開けて嚢腫を取り出してみたら、「「子宮筋腫」も見つかったからついでに取ったったよ~!」とのことでした。やだ、ラッキー☆……?

「子宮筋腫」については、大きさは1mm程度の小さなものだったそうです。私は退院前に、手術時のカメラ画像を鮮明なカラー写真で見させられたので、子宮筋腫の様子も確認してきました。ポツっと白い点状のものなんですね。その他の私の内臓および腹腔内は綺麗なものでした。鶏の臓物にそっくりでしたよ。やっぱり私も一個の生物に過ぎないんだなあ。と、あれから精肉売り場へ行くたびに、しみじみします。


術後は麻酔から覚めやらず朦朧としながら母と会話をしましたが、私の母もまた以前「卵巣摘出」したそうで、その時は術後の疼痛に悩まされたそうです。また、その数年後に「子宮筋腫で子宮を全摘」したときは、痛くなかったそうです。

…えっ…!!??
ちょ、それ、先に聞いておきたかったわ…!!(特に「子宮筋腫」の方)
遺伝は関係ないとは思うものの、これだけ一致するとやや不安。
(´;ω;`)次も子宮筋腫、クルコレ?


というわけで、身近なところにも経験者はいるかもしれないので、病気が分かったら周囲の人にあれこれ聞いてみるのも良いかもしれません。
私は病気が判明してから入院と手術が決まるまでは、一切誰にも報告しなかったのですが、いよいよ手術日が決まり病状もほぼ確定したところで実家に連絡したら、さぞかし心配させるだろうと懸念していた母から

「あ、お母さんも卵巣が片方ないヨ☆(ゝω・)v だいぶ前だけど、どっちか取っちゃった(右か左かすら忘れ…)」

みたいに言われました…orz このことで、何となく無駄に心配してしまっていたなと、私は病気や手術に対する不安や抵抗感がすっかり解消しましたね。清々しい諦観とでも言いましょうか。いずれにせよ、気持ちが落ち着きました。


さて、長くなりましたが、これから手術におもむくという方々のお役に立てますように。また、ご無事と早い快復をお祈りします。
これらはとてもありふれた病気ですし、うまくいけば治りも早い病気です。
ともかく定期的な検診を心掛けましょうね!!