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もやもや日記

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『波が風を消す』

2005年06月04日 | 読書日記ーストルガツキイ
A&B・ストルガツキー 深見 弾訳(早川書房)



《あらすじ》

閑静なリゾート地に見るもおぞましい疑似生物が出現し、住民をパニックに陥れた。ほぼ時を同じくして、惑星サラクシの超能力者シャーマンが地球から帰還後消息を絶ったという報告が入る。かれははるばる地球の超能力研究所を訪問しながら、わずか一時間ほどで逃げるように立ち去っていた。コムコンー2〈異常事件〉部の伝説の男マクシム・カンメラーの指令を受け、調査員トイヴォ・グルーモフは次々とわき起こる不可解な事件の捜査を開始した・・・。ソビエトSFの雄が『蟻塚の中のかぶと虫』に続き壮大なイマジネーションを展開する傑作長篇!




読み終えるまでに3週間もかかった理由を考えなければなりません。どういう訳か、全く集中できなくて、これを読んでいる途中に別の小説を3冊(バルガス=リョサ『世界終末戦争』、ストルガツキー『神様はつらい』、安部公房『箱男』)を読み終えることになりました。そうやって間を置いたせいで、ますます話が分からなくなり、もうこれは永遠に読み終えることができないのではないかという不安に駆られましたが、ようやく今日、最後まで到達できました。いやはや良く出来たお話です。本当にどうしてこんなに難儀したのでしょう。やっぱり面白かったというのに。
理由その1、この作品がマクシム・シリーズの最終巻であること。私は続き物は好きですが、それを読み切ってしまうのに耐えられません。ドラマの最終回なんかもダメです。立ち直れません。おかげでスタートレックDS9の最後の方はいまだに見ることができないでいるくらいです。(録画して保存はしてあるんですが) 今回はマクシムとちょっと長くつきあい過ぎたんですねー。若僧だったのが、すっかり「伝説の男」になっちゃってるし・・・。
理由その2、この作品は難しい! 今さらですが、ちょこちょこ間隔をあけて読んで理解できるような単純なつくりではありませんでした。最後まで読んでから、最初に戻って読み直すと、びっくりするくらいよく出来ていました。そういうことだったのかー。
そんな訳で、3週間かかってようやく読み終えてみた感想は、ーー暗くて難しい。というところでしょうか。『蟻塚』に引き続き、謎が解かれていくのはいいのですが、全然それだけで終わりません。結局分からないところだらけです。いつものように一文を引用しようと思いましたが、何故かどうしても出来ませんでした。どの言葉も結末との結びつきがあまりに強いようで、ネタばれになりそうなのです。と言って、私はそれらの文章を読んでいながら、最後まで全く予測がつかなかったのですが。結果は分かっていたけど、その過程は予想を裏切るものでした。そのへんがまさにストルガツキイらしい展開というか私の想像力の程度が知れるというか。やられました。
さて、全く参考にもならないような感想でしたが、ともかくお話としてとても面白いのは事実です。珍しくすごくSFっぽくて、ミステリーでもあり、そしてやっぱりストルガツキイ的なのです。シリーズ3冊を読んでしまって少し落ち込みましたが、考えてみると、まだまだ分からなかったところが沢山あるので、多分また何度も読み返すことになるでしょう。そう思うとだいぶ回復してきました。ストルガツキイ効果。偉大だ。