半透明記録

もやもや日記

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『文豪ミステリ傑作選 芥川龍之介集』

2005年06月11日 | 読書日記ー日本
(河出書房)


《収録作品》

「開化の殺人」
「奉教人の死」
「開化の良人」
「疑惑」
「魔術」
「未定稿」
「黒衣聖母」
「影」
「妙な話」
「アグニの神」
「奇妙な再会」
「薮の中」
「報恩記」



《この一文》

”「ただ、欲のある人間には使えません。ハッサン・カンの魔術を習おうと思ったら、まず欲を捨てることです。あなたにはそれができますか。」
「できるつもりです。」
 私はこう答えましたが、何となく不安な気もしたので、すぐにまた後から言葉を添えました。
「魔術さえ教えていただければ。」 ーーーー「魔術」より ”



海外文学一辺倒だった私もこの頃になってようやく日本文学の面白さが分かってきたような気がします。何と言っても素晴らしい日本語を堪能できるところが良いです。
芥川龍之介や宮沢賢治などなど、40年足らずの生涯で、どうしてこれほどの作品を生み出すことが出来たのか、不思議で仕方ありません。注ぎ込むエネルギーが途轍も無かったのでしょうか。読む度に、彼らが生きた時間は、私が生きている時間とは全く違っているのではないかという気になります。いやまあ時代が違うのは明らかなのですが、一瞬の密度が違うと言うか何と言うか。ともかく圧倒されるのです。
「奉教人の死」や「薮の中」など有名な物語が面白かったのは言うまでもありませんが、初めて読んだその他のものも大変に面白かったです。芥川龍之介という人の文章はこんなにも多面的であったとは知りませんでした。引用した「魔術」という話は、何となくエリアーデ『ホーニヒベルガー博士の秘密』(福武文庫)に併録されていた「セランポーレの夜」を思い出しました。「魔術」のオチは途中で予想がつきましたが、妙に気に入った話の一つです。
やっぱり文豪と呼ばれる人は、そう呼ばれる根拠があったのだな、と今更ながら確認できました。