ハインリヒ・フォン・クライスト 種村季弘訳(河出文庫)
《あらすじ》
古典主義とドイツ・ロマン派の
はざまで三十四年の壮絶な生涯
を終えた孤高の詩人=劇作家ク
ライスト・・。カタクリスム(天
変地異)やカタストロフ(ペスト、
火災、植民地暴動)を背景とし
た人間たちの悲劇的な物語を、
完璧な文体と完璧な短篇技法で
叙事詩にまで高めた、待望の集
成。
《この一文》
”----あなたさまの四人のご子息さまがたは、一瞬にぶい鐘の音に耳を澄ましてからやおら一斉に席を立ち、そんな奇妙にもいぶかしい始まりだけにこれから何事が起こるのだろうと私どもがテーブル・ナプキンを下におき不安な期待にみちて見上げるうちに、思わずこちらが愕然とするようなものすごい声で栄光の賛歌を斉唱しはじめるではございませんか。
「聖ツェツィーリエあるいは音楽の魔力」より ”
とにかく迫力があります。
そして恐ろしくなるような悲劇ばかりです。
激流のような展開のはやさに、息苦しさを感じながらも最後まで読み通してしまうような、とてつもなく勢いのある文章です。
全体的に暗い雰囲気なので、あまり読み返したくないのですが、たまに気になってついまた読んでしまう、そんな1冊です。