ロバート・シャパード/ジェームズ・トーマス編 柴田元幸訳(文春文庫)
《内容》
まさに<世界文学全集超小型お買
い得版>。とびきりのショートショ
ート・アンソロジーの世界篇は
20世紀世界文学のビッグ・ネーム
から意外な掘り出し物までずらり60。
ボルヘス、ガルシア=マルケス、コ
レット、カルヴィーノ、それに川
端康成。超豪華メンバーがそれぞ
れほんの数ページで小説の醍醐味
をたっぷりと味わわせてくれる。
《この一文》
” オリオンの死体のかたわらに横たわったアルテミスは、たった一つの行為によって、自分の過去までが変わってしまったことを悟る。未来はまだ手付かずのまま、いまだ救われぬままだ。だが過去はもはや救えない。自分はいままで思っていたような存在ではない。あらゆる行為、あらゆる決断が、こうしてこの場に彼女を導くに至った。階段の一番上の段が夢遊病者を待ち受けるように、この瞬間も、ずっと前から彼女を待っていたのだ。
「オリオン」ジャネット・ウィンターソン(イングランド)より ”
”----彼女の瞼は光をぼんやり通すブラインドだった。
瞼を開けると、病院の一室の艶やかな壁が見えた。彼女の手を誰かの手が握っていた。
彼の手が。
「末期症状」ナディーン・ゴーディマー(南アフリカ)より ”
「SUDDEN FICTION 超短編小説70」に続く第二段です。
世界各国の小説が読めます。
これでしか読めないかも、というような品揃えです。
私は短篇をとても好むのですが、読んでもすぐさま忘れてしまうので、何度でも楽しめるのでした。
60の物語の中でも例外的に良く覚えていたのは「末期症状」というお話です。
約8ページの短い物語ですが、とても印象的なのです。
ナディーン・ゴーディマーという名前は読むまでは知らなかったのですが、結構有名なようです。
他にもその時は気が付かなかったけれど、あとになってから、「この人この本にも載ってたのか!」と気が付く作家も沢山いました。
バリ-・ユアグローとか。
リチャード・ブローティガンとか。
フリオ・コルタサルとか。
私が成長するごとに、また面白くなるという貴重な一冊なのでした。