E.T.A.ホフマン作 池内紀編訳(岩波文庫)
《あらすじ》
平穏な日常の秩序をふみはずして、我知らず
夢想の世界へふみこんでゆく主人公たち。幻
想作家ホフマン(1776-1822)は、現実と非現
実をめまぐるしく交錯させながら、人間精神
の暗部を映しだす不気味な鏡を読者につきつ
ける。名篇「砂男」はじめ六篇を収録。
《この一文》
” みると足元に二つの目玉が血まみれになってころがっており、じっとナタナエルをみつめている。スパランツァーニ教授は傷ついていない方の手でそいつをつかみ、はっしとばかりにナタナエルに投げつけると、目玉はみごと彼の胸に命中した--この一瞬、狂気が炎のように燃えたってナタナエルの一切を焼きつくした。
「ヒェー! 火の環だ、火の環がまわる--まわれ、まわれ、どんどんまわれ! --人形もまわれ、すてきな美人の人形もまわれ」
---「砂男」より ”
「砂男」は恐ろしくて夜眠れなくなりました。
暗いところで一人で読むのは良くないでしょう。
「クレスペル顧問官」はちょっと感動的なお話です。
全体的に物悲しい話が多いような気がします。
それが魅力でしょうか。
怖くてもつい一生懸命読んでしまうのでした。