今週の法話

法華宗北海寺住職-二王院観成による仏教用語と法話集です。毎週水曜日に更新いたします。

将来の寺院経営と少子化

2014-04-22 14:13:06 | 宗教

 これまでお寺は檀家と信徒に頼ってきた。日本ばかりでなく、

世界中の宗教の寺院経営の実態である。それはともかくとして

日本を中心として将来の寺院経営がどうなるのか考えてみよう。

これまでの寺院経営は檀家と信徒の喜捨と寄付やお布施など

によって保たれてきた。たとえば本堂などの建て替え(改築)な

どの場合、全面的に檀・信徒の寄付によってなされてきたので

ある。しかし、今や結婚しない独身者の増加、少子化、核家族

化、などによって寺院経営は、これまでのように簡単ではなく

なりつつある。まず、現状分析からしてみよう。

 

①    結婚しない独身者の増加

男女の結婚率が低下しているということは、将来家を継ぐ後

継者がいなくなることを意味している。寺側から見れば、檀

・信徒が減少することを意味している。櫛の歯が欠けていく

ようなものである。それだけでも将来の寺院経営は大変な事

態となるだろう。

②    少子化

出生率が低下する少子化が止まらない。家によっては、一人

っ子とか、2人しか子供のいない家庭がほとんどだといって

も過言でない現状である。一番深刻なのは、一人っ子と一人

っ子が結婚する場合、どちらの家を継ぐのか大問題となって

いる。これも寺院経営の深刻な問題に関連する。

③核家族化

 親、子、孫という3世代が一軒の家で住んでいる家庭は少な

い。ほとんど親子が別居生活である。これも深刻な問題とな

っている。一部の人々とはいえ、最近問題視されている認知

症の老人の引き取り手が現れない、という深刻な社会現象に

なっている。同居していれば、これらの老人を捨てるという

問題は発生しないはずである。近所の人々の目があるからで

ある。孤独死の問題も同根といえよう。

ブッダの教えから見れば、やがて自分も捨てられるように

なるかも知れない、という因果の法則を知らない人々だと云

わざるを得ない。そのことを子が見ているからである。子は

親のすることを見て真似をするからである。因果応報という

言葉をもっと知ってほしい。自分が子供から成人にいたるま

で親の愛を満身で受けてきたことを無視するバチ当たりなこ

とである。それは人間ではなく獣の世界である。

一方、寺院経営の面から見れば、昔はほとんど3世代家庭だ

ったのでお寺に対する寄付なども一家をあげて何とかできたの

である。しかし、今や核家族化のため、いちいち親は子供に相

談しなければ寄付もできないという家庭が増えているのが実情

となっている。いずれにしても、少子化という社会現象によっ

て、寺院経営にも深刻な影響を与えている。

④自然災害費増大の影響

 環境悪化、温暖化などによる自然災害は巨大化するのは間違い

のないことである。したがって、各家庭の建造物、鉄筋のマンショ

ンであっても窓が大きければガラスなどが部屋の中を襲うだろう。

檀・信徒の家の災害復旧費は家計を圧迫することになる。一方、寺

院建築物はほとんど木造や鉄骨造りである。巨大な台風や竜巻が強

大化すればお寺の建物は一たまりもないだろう。すなわち、お寺も

檀・信徒の家なども同時に被害を蒙ることになる。そうすれば、お

寺の修繕や改築よりも、自分の住まいを優先せざるを得ない。した

がってこれまでのように檀・信徒を当てにできなくなってしまうよ

うになるだろう。

 

以上の理由などにより、将来の寺院経営は真っ暗闇と云わざるを得

ない。それでは寺側としてどうすれば良いのだろうか。結論は、今か

 ら寺として自助努力で生き延びることを検討しなければならない、と

いうことである。それは決して檀・信徒を無視すべきだと云っている

のではない。寺は自助努力し、なおかつ檀・信徒と共に維持しなけれ

ば生き残れない、と云っているのである。その具体的な方法は独自で

考えなければならない。各寺はそれぞれ条件が違うからである。無為

無策の寺から滅亡していくことになるだろう。世界中の宗教も同じこ

とである。