これまでお寺は檀家と信徒に頼ってきた。日本ばかりでなく、
世界中の宗教の寺院経営の実態である。それはともかくとして
日本を中心として将来の寺院経営がどうなるのか考えてみよう。
これまでの寺院経営は檀家と信徒の喜捨と寄付やお布施など
によって保たれてきた。たとえば本堂などの建て替え(改築)な
どの場合、全面的に檀・信徒の寄付によってなされてきたので
ある。しかし、今や結婚しない独身者の増加、少子化、核家族
化、などによって寺院経営は、これまでのように簡単ではなく
なりつつある。まず、現状分析からしてみよう。
① 結婚しない独身者の増加
男女の結婚率が低下しているということは、将来家を継ぐ後
継者がいなくなることを意味している。寺側から見れば、檀
・信徒が減少することを意味している。櫛の歯が欠けていく
ようなものである。それだけでも将来の寺院経営は大変な事
態となるだろう。
② 少子化
出生率が低下する少子化が止まらない。家によっては、一人
っ子とか、2人しか子供のいない家庭がほとんどだといって
も過言でない現状である。一番深刻なのは、一人っ子と一人
っ子が結婚する場合、どちらの家を継ぐのか大問題となって
いる。これも寺院経営の深刻な問題に関連する。
③核家族化
親、子、孫という3世代が一軒の家で住んでいる家庭は少な
い。ほとんど親子が別居生活である。これも深刻な問題とな
っている。一部の人々とはいえ、最近問題視されている認知
症の老人の引き取り手が現れない、という深刻な社会現象に
なっている。同居していれば、これらの老人を捨てるという
問題は発生しないはずである。近所の人々の目があるからで
ある。孤独死の問題も同根といえよう。
ブッダの教えから見れば、やがて自分も捨てられるように
なるかも知れない、という因果の法則を知らない人々だと云
わざるを得ない。そのことを子が見ているからである。子は
親のすることを見て真似をするからである。因果応報という
言葉をもっと知ってほしい。自分が子供から成人にいたるま
で親の愛を満身で受けてきたことを無視するバチ当たりなこ
とである。それは人間ではなく獣の世界である。
一方、寺院経営の面から見れば、昔はほとんど3世代家庭だ
ったのでお寺に対する寄付なども一家をあげて何とかできたの
である。しかし、今や核家族化のため、いちいち親は子供に相
談しなければ寄付もできないという家庭が増えているのが実情
となっている。いずれにしても、少子化という社会現象によっ
て、寺院経営にも深刻な影響を与えている。
④自然災害費増大の影響
環境悪化、温暖化などによる自然災害は巨大化するのは間違い
のないことである。したがって、各家庭の建造物、鉄筋のマンショ
ンであっても窓が大きければガラスなどが部屋の中を襲うだろう。
檀・信徒の家の災害復旧費は家計を圧迫することになる。一方、寺
院建築物はほとんど木造や鉄骨造りである。巨大な台風や竜巻が強
大化すればお寺の建物は一たまりもないだろう。すなわち、お寺も
檀・信徒の家なども同時に被害を蒙ることになる。そうすれば、お
寺の修繕や改築よりも、自分の住まいを優先せざるを得ない。した
がってこれまでのように檀・信徒を当てにできなくなってしまうよ
うになるだろう。
以上の理由などにより、将来の寺院経営は真っ暗闇と云わざるを得
ない。それでは寺側としてどうすれば良いのだろうか。結論は、今か
ら寺として自助努力で生き延びることを検討しなければならない、と
いうことである。それは決して檀・信徒を無視すべきだと云っている
のではない。寺は自助努力し、なおかつ檀・信徒と共に維持しなけれ
ば生き残れない、と云っているのである。その具体的な方法は独自で
考えなければならない。各寺はそれぞれ条件が違うからである。無為
無策の寺から滅亡していくことになるだろう。世界中の宗教も同じこ
とである。
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