『太郎が恋をする頃までには…』(幻冬舎)の著者の栗原美和子さん(フジテレビプロデューサー)の講演があると聞き、「倉敷市ふれあい人権フェスティバル」の様子も味わいに出かけました。栗原さんは、『ピュア』『ドク』『東京湾景』etcを手がけ、『東京湾景』では脚本も書かれたとのこと。でも、私はどのドラマも見たことはありません。友だちが、『ピュア』がよかったので、和久井映見の髪型にしたと言っていたことを覚えています。
『太郎が恋をする頃までには…』はフィクションですが、栗原さんが夫で猿まわし師の村崎太郎さんと結婚(2007年)し、そこで起きた差別の現実、そして二人の有り様、想いを赤裸々につづる私小説的な本です。厳しい現実を前に、お二人が揺れる様も伝わってきます。この小説によって、村崎太郎さんはご自身が被差別出身であることをカミングアウトします。芸能文化人でカミングアウトしている人はほとんどおられません。マスコミとくにテレビ業界では問題は最大のタブーであり、今回の出版でそのことを再認識し、大きなショックを受けたとのことです。それでも、歩みは少しずつ前に進んでいると。
本や講演内容のなかで、幾つかお尋ねしてみたいことはありました。でも、差別の現実そして自らを見つめ、語り、そのことをベースに解決していきたいとする姿勢・想いには共感します。
昨年度、岡山市が行った意識調査においても、被差別出身の人との結婚については厳しい結果が出ています。結婚差別は結婚という事象のみで存在するものではなく、暮らし総体が問われるものですが、この部分に眼を塞いで、人権尊重のまち作りはできません。倉敷市は、そんな想いでこの講演会を企画されたのではないかなと。
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さて、村崎太郎さんは17歳のとき、父親から「の伝統芸能を有名にして、が誇るスターになれ」と言われ、戦争で途絶えていた猿回し師の道を歩み始めたそうです。栗原さんの講演のなかで知りましたが、彼はこの春に、『ボロを着た王子様』(ポプラ社)という自叙伝を出されているとのこと。さっそく買って読んでみたいと思います。
私は彼とまったくの同い年です。の歩み・歴史、そこで生きてきた人々の想いを正しく知ることは、未来へのエネルギーをいただき、差別解消にとって大切なことだと実感しています。