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福島の甲状腺がん多発と被曝との関係を認めないのは

2016-03-12 21:04:32 | 社会・経済
5年目の3月11日、皆さんは何を想い、何を考えたでしょうか。

自分は都内でもろにあの揺れを体験しましたし、車で帰るのに難儀しましたし、
車中ではラジオで地震や津波の被害の様子を聞いてるだけで打ちのめされるほど驚愕し、
そして家に着いてからテレビで映像を見た衝撃といったら!
まあ、それは多くの人と同様かと思いますが。


そして5年が経ったワケですが。
なんと言いますか、自分的にとっさに思い浮かぶ印象としては、、

震災直後は地震や津波の被害、福島第一原発事故のショックもありましたし、
物資的に、何より電力の供給を心配しなければいけない状態で、
それらを我慢して受け入れる生活を強いられていたワケですが、
別に多少物不足でも何とかなるし、節電節電で街灯が今までより暗くてもいいじゃないか、
やっていけるじゃないか、そう思った人も多かったでしょう。

それまでが、現代の人々はあまりに物資的豊かさに依存し過ぎ、
身の丈以上の生活を望んでいたのではないかと思い知り、この震災をきっかけにして
日本人のそうした価値観も社会も変わっていくのではないかと予感したものです。

そして今、いや別にたいして変わらなかったと気づかされ、少々残念な心境です。
いや大いに残念と言いましょうか。


あんだけ節電を強いられていたのに、今や町も商業施設も照明を遠慮してるような様子は見られず、
都会じゃ確実に震災の記憶、物資不足・電力不足などの記憶は薄れてしまいました。

政府は円安株高のための金融政策といい加減なオリンピックに躍起です。

そして何より原発です。

あれだけの事故を起こしてその原因も未だ明らかでない、
地元を追われて帰れずにいる住民が多数いて、放射能に汚染された土地の回復の見通しは立たない。

この事故をきっかけに原発だって事故を起こすということが当たり前にはっきりし、
核のゴミの捨てようがないなどの問題も明らかになった。

でも新規制基準なんてまやかしを作ってまた原発を稼働させている。

自分にはどうしてもその意義も正当性も見いだすことができません。
意義があるとすれば電力会社はじめ原発ムラへの利益供与くらいなんですど、ま、それでも十分なのでしょうが。


で、再稼働を始めた福井県にある関西電力・高浜原発ですが、
このたび大津地裁から稼働中の原発に対しては初めての稼働差し止め命令が出ましたね。

世界で最も厳しい基準とか言っても、設計から津波対策から避難対策から脆弱で、
安全性の確保なんかされてねえんじゃね?ってことで、まぁ真っ当な判断なのではないでしょうか。

関西電力としては不服を申し立てて、また再稼働にこぎつけられるかもしれませんけどね。


そしてこの運転差し止めの事態となったことで、下記の記事があるのですが。


 原発推進、揺らぐ信頼=野党は争点化目指す-安倍政権

 原発の再稼働や海外輸出を進める安倍政権。2011年3月の東京電力福島第1原発事故を踏まえ
 「安全最優先」を強調するが、トラブルや運転差し止めの司法判断に直面し、信頼性に揺らぎが生じている。
 (以下略)


うーん、間違い。

信頼が揺らいだのではありません。
信頼などもともとなかったのです。

信頼性があるかのようなフリをしていただけです。
電力会社も政治家も役人も、大マスコミも。


アベちゃんは新規制基準を通った原発のみ稼働させると言うのですが、
どうせ審査なんてゆるゆるで、申請すりゃ通る程度の代物なんでしょう。
新規制基準なんてのはカモフラージュで審査なんてセレモニーにすぎないのです。

だいたい新規制基準といったって、免震重要棟もない避難計画もないで通ってしまう基準ってのが
ホントに世界最高レベルに厳しいのかどうかワケ分かりません。

そんな理屈で通そうとしている原発ムラも傲慢ですが、
結果的にそれを容認してしまっている国民・社会も怠慢です。


仮に新規制基準が世界最高に厳しいレベルだとしても、
この地震の多い日本という土地、その条件に照らし合わせたときに、
規制基準が果たして最高レベルで安全を保てるかどうかは極めて疑わしいのではないでしょうか。

日本列島という立地条件に対しては、現在の世界最高レベルをはるかに超えるものでないと、
バランス的には安全とは言えないのではないですかね。


ところで、福島県では若い世代の甲状腺がんが多発していると言われます。
発生確率でいうと通常の数十倍とも言われるようです。

それだけの多発が事実とすると、原発事故で放出された放射能の影響が疑われるところですが、
専門家の間などでも見解は分かれるとのことです。

放射能との因果関係は見られないとする側は、普通なら診療さえしない患者を診療することで、
程度の軽い症状も結果的に多数見つかることによる過剰診療によってそう見えるとしています。


さあ、どうですかね。

チェルノブイリ事故の場合には事故当時に子供だった人たちの甲状腺がんについては、
事故のせい、放射能のせいとの見解を取るくせに、福島の事故ではそうではないというのは。

それについての若干の根拠らしいことを並べ立ててはいますが、
説得力はあまり感じませんよねえ。


特に県や国側は被曝との関係はないとの立場を取ってますね。

いやね、確かに直接の関係があるかの特定はできないでしょう。
でも、少なくとも、関連はあるかもしれない、との可能性を残したり、
想像力を働かせることくらいはできるだろうし、すべきだと思うのですが、
なぜ、そういう態度さえ取れないのでしょう。

そりゃ、そうした被害への責任を負いたくないからでしょうし、
東電などの賠償負担を増やしたくないからなのでしょう。


そして自分が妄想するに、もう一つ大きな理由があるのではないかと。

それは、差別に直結するからですね。
福島の街頭地域が、巨大な被差別地域になりかねないからです。

だから認めない。
少しでも被曝と甲状腺がんとの関連を言及してしまうと、
福島が人の健康を害する土地であると公に認めることになってしまうのです。

そうしたら?
福島は大丈夫だ、安全だと後ろだててくれる権威・根拠がなくなってしまうのです。
福島の人も土地を棄てなければいけなくなるかもしれません。

もはや風評被害とも言えなくなり、福島の農水産物や観光を消費することはできなくなり、
福島の人々でさえも他所から避けられる対象になってしまうかもしれません。
将来的に就職や結婚に影響が出る恐れだってあるかもしれません。

それを恐れている。
被曝の影響に関する見解一つでその状況に歯止めをかけておけるならら、そうするのでしょう。

だから、国も県も、放射能と健康被害の関連を認めることは今後もないでしょう。
本当はあるとわかっていても。


我々はそうした事情を察した態度を取らなければならないのでしょうかねえ。
福島の人を考えると気の毒ですが、原発ムラがまた甘ったれるみたいで気にくわないのですがね。
 

(追記)

福島の子どもに甲状腺がんが多発していることについて尋ねられた厚生相の塩崎センセーが、

 「福島県における放射線による健康被害・健康影響の問題については、
 環境省の所管でございますので厚労省としてコメントする立場にはない」

と、こう答えたのですね。

なんだよ、問題を他の省庁にたらい回しで責任回避かよ!?
と一瞬思いましたが、おや?

福島の子どもの甲状腺がん多発は放射線の問題、なんですね?
そう言ってますね? 少なくとも厚労省の見解はそうなんですってよ。

環境省は環境省でこの問題をまた厚労省に押し戻そうとしたりでたらい回しが続き、
有耶無耶にされてしまいそうな気がしますが。

でも厚労省が福島の子どもに甲状腺がん多発は放射線の影響であると明言したワケですから。
この事実に福島の自治体、医療関係者、住民、そして東電はどうしますかねえ?