旅路(ON A JOURNEY)

風に吹かれて此処彼処。
好奇心の赴く儘、
気の向く儘。
男はやとよ、
何処へ行く。

「世界の名著」

2007年08月06日 18時45分52秒 | Weblog
ブックオフで中央公論「世界の名著」続編15冊のうちの14冊が一冊105円でバラ売りされていた。慌てて買い物籠に積み上げてからレジに向かい、急いで代金を支払った。続編に先立って発刊された65巻は既に揃っている。

余りにあっけない続編の出現に気が動転したらしい。支払った後になって今日はバスで出勤していることに気がついた。湿度が高い猛暑の中を、この荷物を携えてバスセンターまで歩くのはかなりきつい。14冊を店に預けてマイカーで出直すことにした。結局、買った本は店に預けることになってしまった。

昨日の午後、松山市で古本屋を営む古い知り合いと久しぶりに会った。古本の世界にも市場原理が働き始めているという。わたしが興味を抱いている思想、哲学、宗教、歴史関係の書物は市場では全く人気がないらしい。読み手が少ないので、市場原理に従って値は下がるばかりである。

知人は、20年ほど前に岩波書店から発行された野田正彰の中古本がアカデミイで300円で売られているのが当然であるかのような顔をして買い求めた。定価は2800円である。著者と文通しているのだそうだ。知人は同業の古本屋の店主を相手に、ほかに野田の在庫がないかどうかたずねていた。ちなみに知人の店の売れ筋は漫画にエロ本である現実を大いにぼやいていた。

それにしても「世界の名著」が一冊105円とは情けない。100円ショップの商品並みとは恐れ入る。30年前でも新本一冊の定価は1500円を越えた。学生時代には神田の古本屋街でバイト代を握り締めて買うかどうかを散々迷ったあの頃が思い出されて仕方がない。時は流れたのだ。

安いから古本なのだと言われたら悲しい。この種類の本に興味を示さない市場(市民)は不甲斐ないと思う。彼らの勝手とはいえ、根拠が薄弱であるとはいえ、つい古典離れが進むこの国の行方を憂慮してしまう。14冊で〆て1470円の「世界の名著」の続編の山を眺めながらしばし考えた。

最近では出版社といえども、全集ものを出版する際には紀田順一郎など読書にうるさい作家、評論家にどの程度の部数を出版すればよいか、あらかじめ打診することもあるのだそうだ。特に専門書などの場合、出版社だけの判断で出版に走ると売れ行きを見誤ることが多いらしい。専門家に一種の市場調査を委ねるのである。

予想以上に活字離れが進んでいる。30年来、古本屋を営む知人の述懐である。ところが、中村元の全集などはさほど価格がさがらない。品薄なのだ。マニアックな読者に稀少な全集。散々躊躇したが「王陽明全集」の代金を思い切って決済した。わたしもマニアックな読書人のひとりなのであろう。知人は「相も変わらず難しい本を読むなあ。」と呆れ顔である。

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