「ツァラトストラはこう言った」岩波文庫ワイド版から。
『新しい価値を獲得するための権利を獲得すること、これは辛抱強い、畏敬を旨とする精神にとっては、思いもよらぬ恐ろしい行為である。まことに、それはかれには強奪にもひとしく、それならば強奪を常とする猛獣のすることだ。
精神はかっては「汝なすべし」を自分のもっとも神聖なものとして愛した。いま精神はこのもっとも神聖なものも、妄想と恣意の産物にすぎぬと見ざるをえない。こうしてかれはその愛していたものからの自由を奪取するにいたる。この奪取のために獅子が必要なのである。』