昭和ひとケタ樺太生まれ

70代の「じゃこしか(麝香鹿)爺さん」が日々の雑感や思い出話をマイペースで綴ります。

風呂敷包み

2006-02-16 18:50:11 | 日々の雑記
 先日税務署へ行った時のこと、全く思いがけない物を目にした。それは初老の婦人が手にしていた風呂敷包みである。

 初めは確定申告に来た人には見えなかったのだが、申告手続きの部屋に入って来たのだから、私たち同様の目的で来たのは間違いようである。ただこの中に居る人たちの持ち物と云いば、資料などの書類を入れる紙袋乃至はバックが殆どである。中には洒落たアタッシュケースを提げている老人も居たが、私は現役時代に使っていた薄手の黒の書類カバンだった。

 そんな中での風呂敷包みはとにかく目を惹いた。以前なら決して物珍しい物でなくて、何処の家でも在るような茄子紺の風呂敷で、その包みを手で支え持った姿が、如何にもその婦人には似合い様になっていた。
やがて風呂敷を開いて、様々な資料と思われる書類と布製のペンケース、それに電卓などを出し始めた。

 今でこそ殆ど見掛けなくなった風呂敷だが、以前は何処の家でも一般的に広く用いられていた。包む物の形に左右されることなく、殆どたいていの物に合わせて包む事が出来て、持ち運びに重宝されていたものだった。
 例えばスイカや酒類の一升瓶場合などの持ち運びには、安全で恰好の日用品であった。まだスイカ専用のナイロン紐の網袋が出回り、酒瓶なども紙パックが開発され、その上紙袋や布袋が出回るようになって次第に忘れられていった。
本来ならば和服の付き物として親しまれて来た物だが、茶道や茶道の特に成人式の場合でも、殆どが着物姿なのに手に提げているのはバッグである。
 この頃では殆ど見掛けなくなったのを、今日偶々見掛けた風呂敷に堪らないほどの愛着を覚え、あらためて懐かしく思うと共に、今では全然姿を見せないことに、何かしら言い知れぬ寂しさを感じていた。

 年寄り感傷と言われれば、それまでの事ですが・・・。