裏日記「B面」

工房しはんが日々、ふと感じたり、しみじみとふけったり、ぴんとひらめいたり、つくづくと考えたりしてること。

サザやんのこと・6

2012年08月02日 09時13分44秒 | サイエンス・ガクジュツ的な
げげっ、一週間ごしにサザやんと向き合ってるわけか。
ゆうべ、また水槽酒場にいってきたよ。


こんな具合に、サザやん姉妹は水槽内を這いまわってるよ。
左から、やんちゃに動きまわる長女、眠そうに起き出してきた次女、そしていちばん右が、閉じこもりがちな三女、ね。
酒場の大将によると、サザやんは二つに分かれた吸盤の部分を交互に動かして、歩みを進めるように這ってくらしいよ。
そしてその奥に隠れたおチョボ口でコケなんかをもぐもぐするんだと。
料理人は、生物をまな板の上でいじくり倒すうちに、科学者の観察眼を獲得するわけだ。
さらにサザやんを観察すると、おチョボ口のサイドには、カタツムリみたいな触覚があるんだ。
サザやんとカタツムリ、この容貌の似たふたりは、異母きょうだいだったんだねえ。
一方は大海原へと冒険の旅に出、もう一方はあじさいの葉の上に活躍の場所を見出したわけだね。
ひとそれぞれだなあ。
だけどその風体を比べれば、海路を選んだサザやんがどれだけ苦労してきたか、一目瞭然だ。
トゲトゲのいかつさは、多くの敵に遭遇し、切った張ったをくり返した証。
敵の攻撃に対してなんらの策も打てない彼女の、「あたいに近づくとケガするわよ」というせめてもの虚勢といえる。
実質、なんの役にも立ってなそうなその容姿は、しかしむしろ彼女の美意識の「表現」として昇華してるんだった。
とんがりながら、ツンツンしながら、しかし彼女は実は、静かに、穏やかに、海底で閉じこもって、芸術表現だけに集中してつつましく過ごしたいんじゃないかな。
いじらしいとは思わんかね?
・・・そんな彼女の想いを汲み取ることなく、酒場の大将は水槽の中に手を伸ばす。
「ツボ焼き」の注文が入ったのだ。
ひとりのサザやんが選ばれ、仲間たちとのサヨナラの時間を与えられることもなく、水面に引き出される。
悪夢のような災厄なのだった、彼女らにとって、人間の存在とは。

おしまい

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園
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