おしまい・エントロピーの最小・最大値って
小さな小さな時空間に、完全に均等な配置にセットされた素粒子たち。
封を切りたてで数字順にきれいに積み上がったトランプが、エッヂをきりりとそろえ、ゲームのスタートを待ってる状態だ。
これを、エントロピーの最小値、と表現する。
ビッグバンによって、このカードは広い宇宙空間に散り散りに配られ、ランダムに展開し、局所的に集まり、固まり、シャッフルされ、また散らかり・・・をくり返し、エントロピーの値を増大させていく。
つまり、配置と集団の構造を複雑化させていく。
素粒子は確率の存在で、ある瞬間に再び「カード順が正確に並び」「エッヂがぴたりとそろう」瞬間が訪れる可能性もなくはないが、10の97乗個が偶然に宇宙開闢の瞬間に戻るのは、52枚のトランプがそろうのとは訳が違う。
エントロピーは増大をつづけ、宇宙は冷えつづける。
熱とはすなわち素粒子の振動であるので、ビッグバン時の高熱の広域への放散は、素粒子の振動が弱まっていく(伸長になる)ことを意味する。
宇宙は、素粒子が震えることをやめる絶対0度(摂氏-273・・・度)へと一直線に向かう。※1
宇宙全体、つまり一切の素粒子が凍りつくこの状態を、エントロピーの最大値、と表現する。
混沌が極まると、その先に待ち受けるのは皮肉なことに、完全な平衡状態だ。
極限まで複雑化した素粒子の配置は、文字通りに「波のない」フラットな光景を呈する。
どこにも突出した部分のない、そして動きもない、無の世界だ。
宇宙の最後の姿は、広い広い時空間に散らかった素粒子たちの永遠の沈黙、なんだった。
おしまい
※1 もちろんこれは、素粒子が震えることをやめると絶対0度になるという意味の言い換えだ。
東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園