裏日記「B面」

工房しはんが日々、ふと感じたり、しみじみとふけったり、ぴんとひらめいたり、つくづくと考えたりしてること。

世界のつくり/意識編・18

2024年05月29日 09時00分19秒 | 世界のつくり

18・生殖、って

他者から別系統由来の遺伝子を取り込んで、自分のゲノムに組み入れる。
そうして、次世代の形質を一足飛びに変異させる。
こんなことができるようになるなんて、便利な世の中になったもんだ。
もう形質のブラッシュアップを、塩基配列のコピーミスばかりに頼る必要はない。
なんたってこの方法なら、他者が苦労して築き上げてくれた有用な能力をまるっともらい受けることができるんだから。
まてよ、この方法もまた偶発的だけど、いっそ取り込みをアルゴリズムに組み込んでしまえば、さらに効率よく変異を進めることができるぞ。
自分と相手のゲノム2パッケージ分を掛け合わせた上、お互いのいい特徴を選別して次世代に残せば、生存の淘汰戦で有利な立場を得られることは疑いがない。
・・・と、この部分もまたゲノムに起きた自然選択のたまものなんだけど、とにかく、DNAのシャッフルがはじまったんだった。
思えば、彼の個体に搭載されたパーソナルなゲノム(彼に行動を命ずる司令書)もまた、種全体を統括するゼネラルな存在によって、未来の大きな指針を命じられてるのかもしれない。
種全体が交わって一方向への収斂を目指すなんて、なかなか壮大な実験ではないか。
彼の形質は、彼ひとりの努力※1によって相当な進化をとげ、今や目に(われわれ人類の)見えるまでの大きさにまで育ち、うごめき、刺激を感じて反応するまでに精緻化してきた。
だけどそれは、種全体が枝分かれして進化した、たったひとつの枝葉の末端だ。
種は、ひとつの目的に、すなわち「生存」という究極の目標の達成に向け、機能を果てしなくひろげ、細分化させていく。
そうして形質を全方向に変異させていった結果、生態系は収拾がつかないまでに散らかった。
そこで彼は、ひたすらコピーをつくって自分を分散させることにこだわるのをやめ、周囲と合体してひとつになりながら、種全体の機能をまとめはじめた。
この作業がやがて、オスとメスの愛の行為、すなわち生殖へとつながっていく。

つづく

※1 彼の変異は、淘汰圧にさらされて自然選択が働いた結果であり、ここまで生き残ったこと自体がその変異が有効だったという逆創出プロセスだ。偶然のみに頼る彼は、もちろん努力などしない。

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園

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